はんこレス実現への基礎知識

「紙」と「はんこ」が不要になるかも! “はんこレス”ってどういうこと?

はんこレスの概要と意義

 本連載では、3月3日に発売された“脱はんこ”を実現するためのノウハウが身に付く書籍『できるはんこレス入門 PDFと電子署名の基本が身に付く本』から、“脱はんこ”の実現に必要となる基礎的な知識が身に付くレッスンを抜粋してお届けします。書籍ではさらに具体的に主要な電子署名サービスの利用方法などを細かく解説しているので、ぜひご購入ください。

 これまで、契約や文書の回覧などに欠かせなかった「紙」と「はんこ」が不要になるかもしれません。「はんこレス」とはどういうことなのかを見てみましょう。

「はんこレス」による効率化

 契約や行政手続き、文書の確認、品物の受け取りなどで、今まで必要だった「紙」の文書と「はんこ」が不要になりつつあります。たとえば、宅配便をサイレンスで受け取れるようになったり、確定申告などの手続きをオンラインでしたりと、身の回りでも「はんこ」を使わずに済む機会が増えてきました。社会的情勢の変化によって、出社を控えるテレワークが普及したり、人と接触する機会が減ったりしたことがひとつのきっかけですが、今まで当たり前だと思われてきた業務の非効率さや手続きの複雑さを見直そうという動きが、「紙」や「はんこ」を使う機会が減ったことの本質です。

 「はんこ」の持ち歩きや管理といった物理的な制約をなくしたり、対面での応対や文書のやり取りといった場所に縛られる無駄を省いたり、何段階もの回覧や承認待ちによる時間の浪費をなくしたりするには、従来の「紙」や「はんこ」を使ったさまざまな処理を今一度、見直す必要があります。

【HINT!】社会的な広がりを見せる「はんこレス」

 「はんこレス」の動きは、政府や地方自治体でも積極的に進められています。2020年6月には内閣府、法務省、経済産業省が「契約書への押印は不要」とする見解を発表し、9月には行政改革担当大臣から全省庁に対して、行政手続きで印鑑を使わないよう、要請がありました。こうした動きを受け、地方自治体や民間企業でも、従来の「慣習」を捨て、効率的な社会を目指す動きが活発化しています。

電子的に「はんこ」を押せるようにしよう

 そもそも「はんこ」は何のために押すのでしょうか? 「はんこ」には、内容に同意するという意思表示と、本人であることの証明の2つの意味があります。逆に言えば、これらと同じ効果を持つ新たなしくみを用意すれば、必ずしも「はんこ」がなくてもかまわないことになります。

 この新たなしくみとして、最近、注目を集めているのがデジタルデータで作られた電子的な「はんこ」です。パソコンからの操作で、PDFなどの文書に簡単に押印することができ、従来のはんこと同じように書面に印影を表示したり、文書が有効であることを証明する証拠として、利用できます。

 デジタルデータなので、物理的な「はんこ」のように持ち歩く必要がなく、紙と違って、メールなどで短期間に回覧したり、保管もかさばることがなく、リモートで確認や同意の意志表示をすることもできます。ペーパーレスや「はんこ」レスの実現によって、旧来の業務の非効率さを改善し、スピーディな意志決定ができるようにしてみましょう。

【Point】「はんこレス」は目標ではなく手段

 「はんこレス」で大切なのは、「はんこ」を無くすことが最終的な目標ではなく、手段であることを意識することです。従来の「紙」や「はんこ」を使った手続きには、場所が制約されたり、時間がかかったりと、多くの無駄があります。こうした無駄を見直し、改善することが本書の最終的な目的です。社会的な注目が高まり、行政の対応も進み、そのためのツールも身近な存在になってきた今こそ、「ペーパーレス」や「はんこレス」による改革に挑戦してみましょう。