特別企画

無償化された「OneNote 2013」を試す

「OneNote」の基本から有償版との違いまで徹底解説

「OneNote 2013」

 先月17日に突如アナウンスされたデジタルノートアプリ「OneNote 2013」無償化のニュースは、これまで有償(11,340円、税込み)で提供されていたソフトが無償で利用できるということで大きな反響を呼んだ。

 しかし、“そもそも「OneNote」とはなにか”“「Evernote」との違いはなにか”といった疑問や、“無償版があるのなら有償版はまったく不要になるのではないか”といった誤解も少なからず見受けられた。

 そこで本稿では、「OneNote」のごく基本的な使い方や概念、他のアプリとの連携の方法、インストールの際の注意、有償版と無償版の違いなどを改めて紹介したい。

デジタルノートアプリ「OneNote」とは?

ルーズリーフのバインダーを模した“ノートブック”“セクション”“ページ”の3構成になっている

 「OneNote」が初めてリリースされたのは、今をさかのぼること11年前の2003年。講義のノートをとる大学生向けの製品として誕生したという。そのせいもあってか、「OneNote」のユーザーインターフェイスやデータの構造は、大学生がよく使うルーズリーフのバインダーによく似ている。

 「OneNote」のデータファイルは、“ノートブック”と呼ばれる。“ノートブック”は複数作成し、用途別に使い分けることが可能だ。

 この“ノートブック”には、バインダーにルーズリーフを挟んでいく要領で、複数の“ページ”を追加することができる。“ページ”はフリーカーソルになっており、紙のルーズリーフと同じく、どこに何を書き込むのも自由。この“紙のような使い勝手”を実現しているのが、「Evernote」などの競合アプリと異なる点だ。マーカーで印をつけたり、表(テーブル)を挿入したり、チェックボックスを追加することもできる。

さまざまな書式が指定可能

 “ページ”が実物のルーズリーフと大きく違う点は、“広さが(ほぼ)無限にある”ことだろう。端がないので、図を描いているうちにページをはみ出してしまったとか、表を書いていたら次のページへ跨いでしまったとか、1ページに収まるように書こうとして字がだんだん小さくなってしまったなどといったことは、「OneNote」の“ページ”では起こりえない。メモを取るうちに、初めに書いた場所が気に入らなくなれば、ドラッグで自由に移動させて、自分好みのレイアウトにすることもできる。キレイにノートをとるのが好きな人にとっては、とてもうれしい機能だろう。

 また、テキストや手書きの図以外のデータを“書き込める”のも、紙のノートにはできないことだ。録音した音声や録画した動画を“ページ”に埋め込んだり、“ページ”へ「Microsoft Office」文書を添付できるのは、デジタルノートアプリならではと言えるだろう(ただし、無償版には機能制限(後述)があるので注意)。

“ページ”には親子関係をもたせることも可能

 もうひとつ、デジタルノートでしかできないのが“検索”だ。メモした膨大な資料も、あとで見つけられなければ意味はない。また、並び替えやグループ分けといった“整理”が容易なのも、デジタルならではの利点。「OneNote」には“ノートブック”と“ページ”のほかに“セクション”という概念がある。バインダーで言えばカラーインデックス(仕切り)のようなもので、“ページ”を分類しておくために利用できる。さらに、“ページ”には親子関係をもたせることが可能。“ページ”の関連性が一目で把握できる。

 個人的にお勧めしたいのは、とりあえずなんでも“クイック ノート”へメモしておいて、あとで整理や清書をしながらアイデアをまとめていくといった使い方だ。“クイック ノート”とは既定の“ノートブック”に設けられた少し特殊な“セクション”で、ほかのツールからデータをインポートする際の既定の保存先となる。

さまざまなサービスと連携してデータをクリッピング

 「OneNote」は単にメモ帳として使ってもよいが、さまざまなデジタルコンテンツを取り込んでスクラップブックとして利用しても便利だ。あとから手書きでメモを足したり、自分なりに整理してまとめることができる。

 データを「OneNote」へ取り込むには、以下のようなさまざまな方法が利用できる。状況に応じて適切なものを選びたい。

ブックマークレット

Webページ全体のスクリーンショットを簡単に「OneNote」へ送ることができる“OneNote Clipper”

 たとえばWebページをスクラップしたいならば、“OneNote Clipper”が便利だ。これはブックマークレットになっており、Webページ全体のスクリーンショットを簡単に「OneNote」へ送ることができる。

メール

“me@onenote.com”へメールして内容を「OneNote」へ取り込む

 また、“me@onenote.com”へメールするだけで、内容を「OneNote」へ取り込むことができる。送られてきたメールを忘れないようにメモしておくのに便利。

 アプリケーションがメール機能をサポートしているならば、それと連携させることも可能。たとえばアプリケーションが出力する日次レポートを“me@onenote.com”へ送信するようにしておけば、自動的に「OneNote」へ追加される。

チャーム(Windows 8)

Windows ストアアプリ版「OneNote」をインストールして、[共有]チャームでデータを送る

 Windows 8以降ならば、Windows ストアアプリ版「OneNote」をインストールして、[共有]チャームでデータを保存してもよいだろう。クリップボードへコピーして「OneNote」を起動し、貼り付けるといった一連の手間が省ける。

 たとえば「ニュース」アプリで読んだ気になるニュースをスクラップしたり、「フード&レシピ」アプリでみつけたレシピを保存して、自分なりのアレンジを手書きでメモしたりといったことも簡単に行える。

「フード&レシピ」アプリでみつけたレシピを保存して、自分なりのアレンジを手書きでメモ

OneNote サービス API

“OneNote サービス API”

 もしあなたが開発者ならば注目してほしいのが、“OneNote サービス API”だ。これを利用すれば、「OneNote」と連携したアプリが開発できる。

 “GitHub”でサンプルコードも公開されているので、ぜひ目を通してみてほしい。

 そのほかにも、フィードリーダー“Feedly”から直接ページをクリッピングしたり、一部のドキュメントスキャナーからデータを取り込んだりすることもできる。

インストール時の注意点とトラブルシューティング

 さて、無償版の「OneNote 2013」をインストールするにあたって注意してほしいことを2点ほど挙げておきたい。

 まず1点目は、「OneNote」公式サイトの[無料ダウンロード]リンクから取得できる「OneNote 2013」は32bit版だということ。もしシステムに「Microsoft Office」ファミリーの製品が導入済みで、しかもそれが64bit版であった場合、32bit版「OneNote 2013」はインストールできない。

 その場合、64bit版の「OneNote 2013」をダウンロード・インストールすればよい。“その他のダウンロード オプション”というリンクをクリックすると、64bit版「OneNote 2013」のダウンロードリンクが現れる。

もしシステムに「Microsoft Office」ファミリーの製品が導入済みで、しかもそれが64bit版であった場合、32bit版「OneNote 2013」はインストールできない
“その他のダウンロード オプション”というリンクをクリックすれば、64bit版のダウンロードリンクが現れる

 2点目は、エラーが発生して「OneNote 2013」のインストールに失敗する場合があること。「Microsoft Office 2013」製品をアンインストールしても問題が解決しない場合は、システムから完全にアンインストールするための「Microsoft Fix it」ツールの利用を検討してほしい。

エラーが発生して「OneNote 2013」のインストールに失敗する場合がある
「Microsoft Fix it」ツールで「Microsoft Office 2013」を完全にアンインストールすることで解決できることがある

無償版の制限

無償版「OneNote」にはさまざまな機能制限がある

 最後に、無償版「OneNote」に課せられた機能制限について触れておく。無償版「OneNote」はけっして有償版「OneNote」を置き換えるものではなく、あくまでも機能限定版なので注意したい。

 まず、無償版「OneNote」は学校および個人での利用を対象に提供されており、商用では利用できない。商用で利用する場合は、業務利用が認められたエディション(「Microsoft Office Home and Business 2013」に付属の「OneNote」など)を購入する必要がある。

 さらに、“ノートブック”ファイルを保存できるのは“OneDrive”に限られる。これは無償版「OneNote」が実質的に“OneNote Online”のクライアントアプリと位置付けられていることを示している。マルチデバイスでの利用や共有の面でむしろ有利な場合が多いのであまり問題にならないと思われるが、クラウドストレージへの保存がためらわれる場合には注意したい。

 また、録音や録画が行えないほか、ノートにファイルを添付することができない。録音データを検索することもできない。録音・録画機能は議事録などを作成する際にはかなり便利なので、これは大きな機能制限と言えるだろう。なお、既存の録音付き・添付ファイル付きのページは問題なく開くことができる。

 そのほかにも、バージョン履歴機能が省略されていたり、“セクション”へパスワードをかけることができないといった制限がある。また、無償版「OneNote」では、「Outlook」や「Lync」との連携がサポートされない。これらの機能が必要なユーザーは、有償版「OneNote」の購入を検討してほしい。

まとめ

“OneDrive”を中心に、あらゆるプラットフォームとつながる「OneNote」

 「OneNote」は、もともとオフラインでの利用が想定されていた。共有フォルダを介した“ノートブック”の共同編集もサポートされているものの、「Evernote」などの後発サービスのようなクラウドサービスをベースとした使いやすいものでは決してない。しかし、この弱点は“OneDrive”との連携を前面に押し出すことで、もはや解消されたといってよいだろう。

 毎月の転送量に制限のある「Evernote」と異なり、「OneNote」には転送量に事実上制限がないのも魅力だ。無償版「OneNote」で扱えるデータの量は“OneDrive”の空き容量に依存するが、「OneNote」のデータだけで無償ストレージを使いきることは考えづらく、追加の料金を心配する必要はあまりない。

 さらに、今回無償化された「OneNote 2013」のほかにも、「OneNote」はWindows ストアアプリ版、Windows Phone版、Mac版、iPad版、iPhone版、Android版がラインナップされており、どれも今のところ無償で利用できる。ネイティブアプリが提供されていないプラットフォームでもWeb版“OneNote Online”が無償で利用できるのが心強い。

 “OneDrive”を中心に、あらゆるプラットフォームで無償利用できるデジタルノート「OneNote」。この春、生活が改まるのを機会に、一度試してみてはいかがだろうか。

(柳 英俊)