トピック

Blenderでミニチュア作品を作って10日で操作を覚えよう!PCに必要なスペックは?

ノートPC2種類とデスクトップPCで使い勝手を検証してみた!

 皆さん、こんにちは。M designです。私は「ミニチュア作りで楽しくはじめる 10日でBlender 4入門」および「10日でBlender練習帳 あかりの灯るお部屋」の著者として、多くの方々にBlenderの魅力を伝えてきました。

Blenderではこんなシーンをカンタンに作れる。「10日でBlender 4入門」では、そのテクニックを紹介中。
小物も多いが、意外なほど簡単

 今回は、様々なPCを発売しているPCメーカー、マウスコンピューターさんにご協力いただき、「Blenderを始めるのに、どんなパソコンを選べばいいの?」というテーマでお話ししたいと思います。

Blenderを使うには、どんなPCを選べばいいだろうか?今回は、マウスコンピューターの多数のPCの中から、「ちょっといいノートPC」「高性能なノートPC」「ちょっといいデスクトップPC」の3つを例に検討してみた

 Blenderで使うPCについては、読者の方からも「スペックがよく分からない」という声を多くいただいていますし、X(旧Twitter)でもよく見かける疑問のひとつです。

 Blenderのいいところは、 そこまでハイスペックなPCがなくても始められる こと。しかし、スペックを少し上げるだけで、静止画や動画のレンダリング時間が短縮されるので、レンダリング手法によっては高い精度のシミュレーションにチャレンジでき、画像のクオリティが格段に上がります。

 そこで今回は、異なるスペックのPCで同じBlenderファイルを動かしてみて、どれだけ性能差が出るのかを検証してみました。

3つのPCでBlenderの使い勝手を検証

 検証するのは、マウスコンピューターの多数のラインナップから選んだ3つの製品。

 13万円前後から購入できる、ちょっといいノートPC「mouse B4」、16万円前後から購入できる高性能なノートPC「mouse K5」、20万円前後から購入できるデスクトップPC「mouse MH-I5G5A」です。

 マウスコンピューターは、非常に高性能なクリエイター向けのPC「DAIV」や、ゲーミングPC「G TUNE」などもラインナップしていますが、今回は「普通のPC」の範囲内で検証しています。

 手頃な価格帯でどこまでできるのか、高価格帯モデルにチャレンジするとどんな良いことがあるのか、一緒に確認していきましょう!

【検証したPCと結果の概要】
ちょっといいPCの代表として選んだ「mouse B4」。結論を先に書いてしまうと、思っていた以上にしっかり使えた印象。初心者の方が学習や趣味で始めるには、まったく心配いらないと思われる。
単体GPUを搭載した高性能なノートPC「mouse K5」。強力なCPUやGPUを搭載しており、mouse B4よりもスムーズで高速。プロと同じようなスピード感で制作したい方には心強い存在。
単体GPUを搭載したデスクトップPCの「mouse MH-I5G5A」。mouse K5同様の良好な利用感覚で、性能の差がそのまま“創作体験のスムーズさ”に表れてくる


こんなモデルが簡単に作れる!デフォルメされたスタイルで基礎を

 さて、まずは『10日でBlender 4入門』と『10日でBlender練習帳 あかりの灯るお部屋』で、みなさんと一緒に作ってきたモデルをご紹介します。「こんな簡単に、こんなモデルが作れる」というところを見ていただければと思います。

 これらの本では、毎日ひとつずつ部屋のアイテムを作りながら、10日間かけて少しずつ形を積み上げていきます。そして最終日には、それらを組み合わせて、ひとつの完成された「部屋」として仕上げていきます。

 このプロセスは、 Blenderでの基本操作やモデリングの流れを繰り返し体験しながら、自然とスキルを身につける ことを目的としています。「作って終わり」ではなく、「手を動かす中で、気づけばできるようになっている」…そんな体験を目指しています。

ミニチュア作りで楽しくはじめる 10日でBlender 4入門」。かわいいキャラクターモデルを簡単な操作で制作する方法を紹介している人気書籍だ。
今年3月に発売された続編「10日でBlender練習帳 あかりの灯るお部屋」。

 この本で作るモデルは、キャラクターや家具、小物に至るまで、 シンプルでデフォルメされたスタイル で仕上げています。

 映画のCGで見るようなリアルな質感や複雑な形とは違い、 親しみやすく、形の基本がしっかり伝わるスタイル を大切にしています。立体感やシルエットをしっかりと捉えることに重点を置いているので、初心者の方でも取り組みやすく、楽しくモデリングの感覚を身につけられるはずです。

 こうしたアプローチは、 リアルさを追求する前に、まず形の仕組みを理解することが大切 だという考えに基づいています。基本をしっかり押さえることで、のちのステップアップにもつながっていきます。

皆さんの作品が続々と

 私はいつも、みなさんのXでの投稿をとても楽しみに見ています。

 「今日はここまで作れたよ!」という完成画像と一緒に、「このパートが楽しかった」「こんな工夫をしてみた」という声を添えてくれるのが本当にうれしくて。

 中には、キャラクターを自分の“推し”に変えたり、色をアレンジしたり、パーツを追加してオリジナル要素を加えたりと、自由な発想で楽しんでくださっている方もたくさんいます。

 さらに、Amazonのレビューにわざわざ完成画像を載せてくださる方もいて…!

 そういった投稿や感想が、毎日の楽しみであり、モチベーションのひとつになっています。

単純な形の組み合わせでここまでできる!

 完成形を見ると「難しそう…」と思うかもしれません。でも安心してください。実はこのマグカップやドーナツも、すべて 立方体や球といったシンプルな形 からできています。

 Blenderでは、基本の形(立方体・球・円柱など)を少しずつ 引き伸ばしたり、削ったり、組み合わせたり することで、驚くほど多彩なモノが作れるのが3Dモデリングの面白さです。つまり、 最初の一歩はとっても簡単です! まるで積み木を組み立てるような感覚で、誰でも無理なく始められます。

 よく見ると、身の回りのものも意外とシンプルな形の組み合わせでできているんです。たとえば、マグカップは「円柱に穴が空いた形+持ち手のパーツ」、お皿は「薄い円盤」、ドーナツは「輪っか」――全部基本形のアレンジで作れます。

こんな図形をアレンジしていくと……
こんなシーンが作れる

カタチのしくみを知ると、世界がちょっと面白くなる

 私はこれまで、自動車デザイナーとして立体のデザインに取り組んできました。自動車のボディラインやディテールには高い表現力が求められますが、その土台にあるのは、形や空間に対する深い理解です。

 この本では、 自動車デザインの現場で培ってきた経験と視点 を活かして、3Dの世界を やさしく・楽しく・ステップアップできるかたち でお届けしています。

 Blenderの操作を覚えることはもちろん、「立体ってどうできているの?」という視点を身につけることも大きなテーマです。最初は立方体や球といったシンプルな形から始まりますが、それを少しずつ変形させたり組み合わせたりすることで、どんどん身近なモノの形が作れるようになっていきます。

 こうして立体を扱う感覚に慣れてくると、「あ、あの家具も円柱と箱の組み合わせかも」なんて、 普段の世界の見え方まで変わってくる んです。

 難しそうに見える3Dモデリングも、最初の一歩さえ踏み出せば意外とシンプルです。 これからモデリングを始める方が楽しく学べて、自然と基礎力がつくように 工夫しています。形づくりから質感、光の設定まで、3D制作の流れをひと通り体験できる内容になっているので、将来もっと本格的な作品づくりに挑戦したいときにもきっと役立ちます。

Blenderは無限の可能性を持つ

Blenderで作ったシーンの例 (Blender公式サイトより)

 シンプルなモデルで基本的な操作に慣れてきたら、Blenderで広がるクリエイティブの世界は一気に深まっていきます。

 まず注目したいのが、 高いレンダリング性能と柔軟なシーン構成の自由さ 。思い描いた世界を、そのまま画面上に描き出すことができるのは、Blenderの大きな魅力のひとつです。

 さらに、 布のひらめきや液体の流れ、物が壊れる瞬間 など、自然な動きをリアルに再現できる物理シミュレーション機能も充実しています。こうした機能を使えば、よりダイナミックで臨場感のある作品をつくることができます。

スカルプト機能の利用例 (Blender公式サイトより)

 また、 スカルプト機能 を使えば、まるで粘土をこねるように直感的に形を整えていくことができ、細かな表情や質感まで丁寧に作り込めます。

 そしてもうひとつユニークなのが、 グリースペンシル というツール。これを使えば3D空間に手描きで絵を描くような感覚で、2Dアニメーションと3D表現を組み合わせることができます。

【グリースペンシルを触ってみよう、ムービーをつくろう】
Blenderが持つ多彩な機能の例(Blender公式サイトより)

 さらにBlenderは、 フルアニメーションの制作 や、映画でもよく使われる VFX(視覚効果) の演出にも対応しています。

 こうした機能を活かせば、初心者からプロフェッショナルまで、 誰でも自分だけの世界をかたちにすることができます 。シンプルな始まりからでも、表現の幅はどこまでも広がっていきます。


「必要になるもの」は?

 Blenderを快適に使用するためには、適切なツールが不可欠です。ここでは、私のセットアップについて詳しく解説します。

1.PC

 私はこの記事で後ほど詳しく説明するデスクトップPC(mouse MH-I5G5A)相当の高性能モデルを使用しています。

 このレベルのスペックでは、Blenderにおけるレンダリング時間の短縮だけでなく、複数の重いソフトウェアを同時に扱う際も快適に作業ができます。パソコンを選ぶ際は、使用するソフトウェア全体を考慮に入れ、将来的なニーズにも対応できるスペックを選ぶことが大切です。

まず必要になるのがPC。廉価なモデルでもBlenderを動かすことはできるが、快適に動かすには適切なスペックを持った製品が必要になる

2.ディスプレイ

 Blenderのユーザーインターフェースには多くのメニューとツールが画面の上下左右に配置されており、これらが占めるスペースによって実際に作業できるエリアが小さくなってしまうため、ノートパソコン内蔵ディスプレイでは画面が狭く感じることがあります。そのため、24インチ以上の外付けディスプレイを使用することをお勧めします。これにより、より広い画面で細かいディテールを見やすくし、効率的に作業を進めることができます。

Blenderでは「画面の大きさ」も重要。ノートPCを使う場合でも、できれば外付けディスプレイを用意したい。

3.マウスとペンタブレット

今回利用した「mouse MH-I5G5A」には、ワイヤレスマウスが付属している

 Blenderを操作する際は、左クリック、右クリックに加えて、画面操作をするために「中クリック」を頻繁に使用するため、3ボタンマウスが必要です。多くのマウスでは中央のボタンがスクロールホイールとして機能していますが、モデルによっては押しにくいことがあります。そのため、家電量販店などで実際に触れて使用感を確認し、購入することをお勧めします。また、中ボタンの操作が特に快適な3D CAD設計者向けのマウスもあり、私はこちらを愛用しています。

 私が最も頻繁に使用しているのは、長時間作業しても手に負担が少なく、自動車デザイナー時代から絵を描く際に使っていたWacomのペンタブレットです。

 最近のお気に入りは、新しく発売されたIntuos Proです。まず、とにかく軽くて薄いので、外に持ち出して作業するのにもぴったり。カフェや移動先でも気軽に使えます。

 前のモデルよりもBluetoothの反応が良くなっていて、ワイヤレスでも快適に操作できるのが嬉しいポイントです。さらに、ペン内部でおもりの調整ができるので、自分の手に合ったバランスにカスタマイズできるのも気に入っている理由のひとつです。描き心地も安定していて、長時間の作業でも疲れにくくなりました。


 以上のツールが整っていれば、Blenderでの3Dモデリングやレンダリングなど、一貫して高いパフォーマンスで作業を進めることができます。


Blenderを使うなら、「GPU」「CPU」「メモリ」が重要

 Blenderで快適に作業するために、パソコン選びで重要となるのはCPU、GPU、メモリの3つの要素で、自分に合ったスペックを見極めることです。

GPU は「高速描画エンジン」

 GPU(グラフィックス描画チップ)は、主に2つの大きな役割を担います。

(1)作業中の描画: 作業スペース(3Dビューポートと呼びます)で作業中のオブジェクトやテクスチャをリアルタイム表示する際の、表示速度を向上させます。

(2)最終的な画像・動画の書き出し(レンダリング): BlenderではEeveeとCyclesという2つの書き出し方式があり、GPUはこれらの処理を高速化します。

CPU は「脳みそ」

 CPUは、Blenderでのモデリング、データ処理、複雑な物理シミュレーション(物理計算やパーティクルシステムなど)に使われます。これらの処理には多くの計算が必要で、脳みそのスペック(CPUのコア数やスレッド数)が多いほど、複雑なシーンや高密度なメッシュの作業をスムーズに行うことができます。

メモリは「作業台の大きさ」

 メモリは、いわば「作業台の大きさ」です。メモリ容量が大きい方が、大容量のモデルが扱えるので、大きい方がいいことは間違いありませんが、普通に使っている分には極端な大容量メモリまでは必要ないでしょう。


「ちょっといいノートPC」「高性能ノートPC」、「ちょっといいデスクトップPC」でBlenderをテスト

 検証に使ったのは、「これからBlenderを始めたい人」から「本格的な作品づくりを目指す人」まで、幅広く参考になるように選んだ3種類。

 マウスコンピューターは、プロクリエイター向けの「DAIV」やゲーミングPCの「G TUNE」もラインナップしていますが、今回は「一般向け」とされている「mouse」ブランドの中から選んでいます。

ちょっといいノートPC「mouse B4

mouse B4

 14型液晶を搭載、アルミニウム筐体を採用したスタイリッシュなモバイルノートPC。

 CPUはインテルの第13世代Coreシリーズで、GPUはインテル Iris Xeを搭載している。価格は13万円前後から。

 検証機のスペックはCPUがCore i5-1335U、メモリ16GB。SSD 500GB。標準仕様のSSD容量は256GBですが、注文時に仕様をカスタマイズできるBTOを利用してSSD容量を500GBに増量しています。

 詳しいスペックや、BTOできる範囲については「mouse B4」の製品情報ページに情報があります。

高性能なノートPC「mouse K5

mouse K5

 15.6型液晶を搭載し、高性能なCPUやGPUを搭載したノートPC。

 CPUはインテルの第12世代Coreシリーズで、GPUはNVIDIAのGeForce RTX 2050 Laptopを搭載している。価格は15万円前後から。

 検証機のスペックはCore i7-12700H、メモリ32GB、SSD 1TB。この製品も、注文時にメモリ容量やSSD容量を変更することができますが、今回は標準仕様のままテストしています。

 詳しいスペックや、BTOできる範囲については「mouse K5」の製品情報ページに情報があります。

ちょっといいデスクトップPC「mouse MH-I5G5A

 高い拡張性がポイントのデスクトップPC「mouse MH」シリーズで、最新のCore Ultraプロセッサー(シリーズ2)を搭載したモデル。

 ワイヤレスマウスとワイヤレスキーボードが付属しています。価格は18万5千円前後から。

 検証機のスペックはCPUがCore Ultra 5 プロセッサー 225、GPUがGeForce RTX 3050、メモリが64GB、SSDが500GB。標準仕様のメモリ容量は16GBですが、今回はBTOでメモリ容量を64GBに増量してテストしています。

 詳しいスペックや、BTOできる範囲については「mouse MH-I5G5A」の製品情報ページに情報があります。

24型ディスプレイ「ProLite XUB2493HS-B6

 また、今回使用したディスプレイは、iiyamaの24型モデル「ProLite XUB2493HS-B6」です。

 発色の美しさと、文字のくっきりとした視認性が特に印象的で、長時間の作業でも目が疲れにくく、非常に快適でした。操作時のストレスもまったく感じず、「作業に集中できる理想的な環境を作ってくれるディスプレイ」といった印象です。

高さや向きなどの調整も簡単にできます


ポイントは「レンダリング時間」「作業の快適さ」「クロスシミュレーション」

 今回は、以下の3つのポイントで、Blenderの使用感を定量・定性の両面で検証しました。

 なお、検証には全てBlender 4.4を使用しています。また、ノートPCはすべて電源アダプター接続、Windowsの電源設定は「パフォーマンス最適化」に調整済みです。

 ちなみに、検証中にmouse K5の電源が外れていたことでmouse B4と同じくらい遅くなるというハプニングも。ノートPC派の方は、電源接続と設定の最適化は超重要ポイントです!

検証1:サンプル数による画質とレンダリング時間の違い

 静止画書き出し時のシミュレーション数の設定を変え、「10日でBlender練習帳」の表紙データと、検証用の専用シーンをレンダリング。画質ごとの時間の違いを比較。

検証2:作業の快適さ(ビューポートのノイズ解消スピード)

 レンダリングのプレビューモード・Cycles設定で、作業画面(3Dビューポート)上で、視点を回転させた直後に出るザラザラが、何秒で滑らかになるか? という“作業テンポに直結する体感”を検証。

検証3:クロス(布)シミュレーションの処理時間(CPU性能の違い)

 CPU性能の違いが、クロスや流体など物理シミュレーションの処理時間にどう影響するかを検証。


検証1:サンプル数による画質とレンダリング時間の違い

 まずは、Blenderで最も実感しやすい「 静止画レンダリングにかかる時間と仕上がりの差 」を、サンプル数64と1024でそれぞれ比較しました。

 Blenderには主に2つの描画方式(レンダリングエンジン)があり、 「Eevee」は速さ重視、「Cycles」はリアルさ重視 。今回はリアルな表現力を重視するため、すべて CyclesでのGPUレンダリング を行っています。

 比較に使ったのは以下の2シーンです。

「10日でBlender練習帳」の表紙データ(実用的な作品制作シーン)
ガラスと床(Causticsと負荷が高く性能差が出やすい機能を使用)

 Caustics(コースティクス)とは、 集まって生まれる模様やにじみ のこと。たとえば、ワイングラスの下にできる虹色の光や、水面からこぼれるキラキラした模様で、Blender3.2から搭載された機能です。この表現は Cyclesでも特に計算が重く、GPU性能の差が最も出やすい領域 です。

結果!レンダリング時間の比較

シーンmouse B4mouse K5デスクトップPC(mouse MH-I5G5A)
ガラスと床(サンプル数64)24秒13秒11秒
ガラスと床(サンプル数1024)4分6秒2分30秒2分9秒
表紙(サンプル数64)1分13秒44秒36秒
表紙(サンプル数1024)10分49秒6分53秒5分59秒

※出力解像度は、表紙が768×768px、ガラスと床が960×540pxです。

 結果、デスクトップPC(mouse MH-I5G5A)で処理にかかった時間は高性能ノートPC(mouse K5)の8割~9割、標準ノートPC(mouse B4)と比べるとほぼ半分です。別の言い方をすると、mouse MH-I5G5Aはmouse K5の1.1~1.2倍、mouse B4の2倍の性能が出ていると言えるでしょう。

なぜこれだけ差が出たのか?

 これは、mouse B4がCPU内蔵GPUを使用している、という点が大きいでしょう。

 mouse B4はGeForce RTXシリーズなどの専用GPUを搭載しておらず、CPUに内蔵されたGPU(iGPU)でレンダリングを行います。BlenderのCyclesでは、GPU性能がレンダリング速度を大きく左右するため、内蔵GPUのみでは処理速度が著しく劣ります。

 一方、専用GPUを搭載しているmouse K5と、mouse MH-I5G5Aを比べると、mouse MH-I5G5Aの方がやや高速で、その差は1.1~1.2倍程度。これは、mouse K5が搭載しているGPUがモバイル向けのGeForce RX 2050、mouse MH-I5G5Aが搭載しているGPUがデスクトップ向けのGeForce RTX 3050と異なるためで、その性能差を反映したものと言えそうです。

【補足:動画をレンダリングするとどうなるか?】

今回は静止画のみの比較ですが、動画は基本的に“静止画の積み重ね”でできています。

例えば、10秒のアニメーション=30fpsなら300枚の画像を連続で描くことになります。

つまり、静止画1枚にかかる時間が2倍になれば、動画全体のレンダリング時間も2倍になるということです。

今回の検証結果をもとに、動画レンダリングをした場合のイメージを考えてみました。

仮にmouse MH-I5G5Aで1時間かかる動画レンダリングの場合…

想定レンダリング時間のイメージ
mouse MH-I5G5A1時間(基準)
mouse K5約1.2時間(mouse MH-I5G5Aの1.2倍)
mouse B4約2時間(mouse MH-I5G5Aの3倍)

これはあくまで概算ですが、PCの性能差は動画制作の所要時間にそのまま跳ね返ってくると考えて良いでしょう。

特に4Kや長編アニメーションになると、mouse B4では1日がかりの作業がmouse MH-I5G5Aでは半日以下で終わるということも珍しくない、ということになりそうです。

【サンプル数って高いと本当に差が出るの?実際のレンダリング結果比較】

 レンダリング時間の差は、サンプル数64よりも1024が大きいとわかりましたが、そもそも「高いサンプル数だと本当に表現力に差が出るのか?」気になる方もいるでしょう。

 ここからは、サンプル数64と1024の「画質の違い」を、拡大画像を交えてじっくり見ていきます。

●全体で見てみると…なんとなく違う!

「10日でBlender練習帳」の表紙データ
サンプル数64
サンプル数1024
ガラスと床
サンプル数64
サンプル数1024

 なんとなく違う気はするけど...正直分からない、と思った方、安心してください!
 拡大して見ると、その差は歴然です。

●拡大してみると…違う!

デスクライトの金属(質感のリアルさ)
サンプル数64:黒いランプシェードに映り込んだハイライトの輪郭がにじみ、右側は特にぼやけて見える。金属の光沢感がやや弱く、質感が不安定。
サンプル数1024:同じハイライトでも、右端までくっきりと境界が見え、金属らしいツヤと深みがはっきり表現されている。滑らかなグラデーションも加わり、リアルな質感に仕上がっている
観葉植物の影(影の繊細さ)
サンプル数64:観葉植物の影がほとんど落ちていないように見え、壁面がややフラットで、ライティングの印象も単調であるため、「奥行き感」「空気感」があまり感じられない
サンプル数1024:葉の形に沿った柔らかく自然な影が、壁にしっかりと投影され、物体の存在感がはっきり分かるため、部屋の奥行きやライティングの臨場感が一気に増している
ガラスの屈折(中身のゆがみ)
サンプル数64:反射や屈折がやや曖昧で、右に比べると透明感に欠ける
サンプル数1024:ガラスの内部構造に沿った屈折表現、光の通り道や反射がよりクリアに見ることができる
Caustics(光の模様)
サンプル数64:Causticsの形がぼんやりしていて、光の広がり方も曖昧
サンプル数1024:光の集まる部分がくっきりと浮かび上がり、まるでレンズを通した本物の光のように、精密な模様や境界線が現れている

●なぜこの差が出るのか?

 影の表現には、「 光の屈折・拡散・遮蔽 」などの複雑な計算が必要です。

 サンプル数が少ないと、それらの計算がざっくりとしか行われず、本来あるべき影が「出ない」「ぶれてしまう」という現象が起きます。

 一方で、1024サンプルのように計算回数が多ければ、光が葉の隙間を通り、 葉の形通りに“ふわっと”影が落ちる という、自然で美しい表現が実現します。

●この違い、どう活かす?

・リアルなライティングを重視したいとき→ 高サンプル数を推奨
・動作確認や下絵用、学習用なら→ 64などの低サンプルでも十分


検証2:作業の快適さ(ビューポートのノイズ解消スピード)

 Blenderでは、レンダリングよりも日常的に何度も触れるのが「3Dビューポート」です。

 モデルを回したり、ライトを調整したり、マテリアルを確認したり――そのたびに出てくる ザラザラしたノイズ(プレビュー状態)

 このノイズがどれくらいの時間で「滑らかな表示」に変わるかは、作業テンポに直結します。

テスト方法

・Cyclesエンジン使用(GPU)、ビューポートのサンプル数は64

・3Dモデルをビューポートで回転 → 静止後、ノイズが消えるまでの所要時間を計測

実際に動かしてみた様子(3Dビューポートのスクリーンキャプチャ)

 Cyclesレンダー表示モードに切り替え、各PCで同じシーンを動かしてみました。画面上では、 最初ノイズが多く出ていても、時間が経つにつれて徐々にクリアになっていく のですが、この“ノイズが解けていく速さ”にPCごとの違いがハッキリと表れます。

 とくにmouse K5・mouse MH-I5G5Aでは、カメラを動かした直後でも数秒で画質が安定し、 リアルタイムでの微調整や構図確認が圧倒的にしやすい と感じました。一方でmouse B4も、動作自体は安定しており、多少時間はかかるものの、光や影の確認には支障がなく、 十分に使える 印象です。

【mouse B4】
【mouse K5】
【mouse MH-I5G5A】

なぜこの差が大事なの?

 レンダリングは1回の操作ですが、 ビューポートの確認作業は1日に何十回、何百回と繰り返します 。この違いは、最終的な 制作スピード・完成度・やる気の持続 にも大きく関わってきます。


検証3:クロス(布)シミュレーションの処理時間(CPU性能の違い)

 静止画やビューポートとは異なり、 クロス(布)などの物理シミュレーションはCPUで処理されます

 CyclesによるレンダリングではGPU性能が大きく効きますが、 シミュレーション処理はGPUが関与せず、CPU性能に依存します

 今回は、布がオブジェクトにかぶさるシンプルなクロスシミュレーション用のデータを作成し、その所要時間を比較しました。

結果!シミュレーション処理時間の比較(秒)

所要時間
mouse B4約26秒
mouse K5約18秒
mouse MH-I5G5A約18秒

実際に動かしてみた様子(3Dビューポートのスクリーンキャプチャ)

 各PCで同じクロスシミュレーションを再生し、 Blenderの3Dビューポート上での動き を画面キャプチャしました。シミュレーション中の滑らかさやカクつきの有無など、 操作中に感じる違い を視覚的に比較できます。

【mouse B4】
少しカクつきが出るのと、全体の動きがmouse K5、3に比べるとゆっくり。ただ、問題なくシミュレーションはできており、十分なレベル
【mouse K5】
mouse B4よりも明らかにスムーズで高速な再現が可能。処理の待ち時間が短く、何度もパラメータを調整しながら試したい人には安心の動作感です。
【mouse MH-I5G5A】
mouse B4よりも明らかにスムーズで高速。mouse K5とほぼ同じ動作感です。

なぜ差が出たのか?

 Blenderの物理シミュレーションは、CPUベースで処理されています。

mouse B4 は省電力動作向けのUシリーズCPU(Core i5-1335U)を搭載しており、マルチスレッド性能やクロック数が控えめ

mouse K5・mouse MH-I5G5A は、高性能なHシリーズやUltraクラスのCPUを搭載しており、計算処理能力が高く、複雑な物理演算でも ベイク処理 が短時間で完了

 冷却性能にも差があり、ノートPCでは発熱によって動作クロックが下がることもあるため、 クロスシミュレーションのように連続で負荷がかかる処理では特に差が出やすくなったと考えられます

なぜこの差が大事なの?

 Blenderでは、クロスやソフトボディなどの 物理演算を活用することで、より自然でリアルな動きや質感表現が可能 になります。とくにキャラクターの衣装や風になびく布など、 演出としての「動き」や「質感」にこだわりたい場面では必須 のプロセスです。

 この処理は主に CPUでの計算に依存するため、レンダリングとは別の性能指標 としてPCを選ぶ際の判断材料になります。さらに、 ベイク処理を繰り返す作業では処理速度が作業効率を大きく左右する ため、CPU性能が高いと「トライ&エラー」がしやすくなり、創作の自由度が広がります。


想像以上にしっかり使えた「mouse B4」「mouse K5」「mouse MH-I5G5A」なら“創作体験のスムーズさ”も

実売価格13万円前後からの「mouse B4」。初心者の方が学習や趣味で始めるには、まったく心配いらないレベル

 今回使った「mouse B4」は、いわゆる“ちょっといい普通のノートPC”というポジションですが、正直なところ、 「思っていた以上にしっかり使える」というのが率直な感想です。「これくらいのスペックでBlenderが動くのか」と不安に感じている声も耳にしますが、実際に使ってみると、Eeveeでのモデリングや簡単なアニメーション制作、Cyclesでの確認レンダリング程度なら、驚くほどストレスなくこなしてくれました。初心者の方が学習や趣味で始めるには、まったく心配いらないレベルだと感じました。

 一方、より本格的に取り組みたい方や、プロと同じようなスピード感で制作したい方には、「mouse K5」や「mouse MH-I5G5A」のような高性能モデルがやはり心強い存在です。Cyclesでのリアルタイムプレビューや高解像度レンダリング、大規模なシーン制作など、性能の差がそのまま“創作体験のスムーズさ”に表れてくるのは間違いなさそうです。

実売価格15万円前後からの「mouse K5」(左)と、同じく18万5千円前後からの「mouse MH-I5G5A」(右)。より本格的に取り組みたい方や、プロと同じようなスピード感で制作したい方に。性能の差がそのまま“創作体験のスムーズさ”に表れてくる

 皆さんのPC選びにこの情報が役立つことを願い、Blenderでの創作活動がより楽しく、充実したものになるように願っています!