ニュース

匿名性を重視したWebブラウザー「Tor Browser 9.5」 ~“.onion”への切り替えUIを追加

アドレスバーのセキュリティアイコンもアップデート

「Tor Browser」v9.5

 匿名性を重視したWebブラウザー「Tor Browser」の最新安定版v9.5が、6月1日に正式公開された。今回のアップデートではベースとなる「Firefox」が「Firefox ESR 68.9」へとアップデートされ、4件の脆弱性が解消された(深刻度の評価はすべて“High”)。加えて、“Onion services”(旧称:hidden services)に対する理解を助けるための機能がいくつか導入されている。

 「Tor Browser」は、接続経路を匿名化する「Tor」(The Onion Router)をあらかじめ組み込んだ「Firefox」ベースのWebブラウザー。いくつものサーバーを経由しながら、そのたびに暗号化を施すことで、第三者からの追跡や監視、検閲を受けることなく、プライベートにWebブラウジングを楽しむことができる。

接続経路を匿名化する「Tor」(The Onion Router)をあらかじめ組み込む

 また、“.onion”ドメインを持つWebサイトやサービス(Onion services)へアクセスできるのも「Tor Browser」の利点。“.onion”ドメインは一般的なドメインのようにICANNよって管理されておらず、普通のWebブラウザーではアクセスできない匿名性の高いドメインだ。いわゆる“ダークウェブ”で悪用されることもあるが、内部告発や匿名での情報提供を扱う場合にも重宝される。

 「Tor Browser 9.5」では、アクセスしたWebサイトが“Onion services”を提供している場合に、そちらへ切り替えるためのユーザーインターフェイスが追加された。Webサイトが“Onion-Location”という非標準ヘッダーで“.onion”のアドレスを知らせているならば、「Tor Browser」はアドレスバー右端に“.onion”アドレスが利用できることを示す紫色のラベルを表示する。このラベルをクリックすると、当該サイトへの接続を常に“Onion services”へ切り替えることが可能。

“Onion services”が利用できることを示すラベル

 また、“Onion services”への接続でエラーが発生した場合に、「Firefox」標準のエラー画面ではなく、専用のエラー画面が表示されるようになった。サービス、クライアント、ネットワークのどこに問題があるのか、どうすればエラーを解決できるのかがわかりやすくなっている。

専用のエラー画面

 そのほかにも、URLがランダムで生成されるため覚えにくいという“.onion”アドレスの弱点を補うため、“Freedom of the Press Foundation(FPF)”および“Electronic Frontier Foundation(EFF)”の「HTTPS Everywhere」と協力し、人間が覚えやすい“.onion”アドレスを提供する実験なども行われている。

 さらに、「Tor Browser 9.5」ではアドレスバーのセキュリティアイコンが変更されている。「Google Chrome」「Firefox」に合わせ、安全でないWebサイトにアクセスしている場合にのみ、注意アイコンが表示されるようになる。

アドレスバーのセキュリティアイコンが変更

 「Tor Browser」はWindows/Mac/Linuxに対応する寄付歓迎のフリーソフトで、現在“Tor Project”のWebサイトからダウンロード可能。すでに利用中の場合は、自動更新機能を利用してアップデートすることも可能だ。

ソフトウェア情報

「Tor Browser」Windows版
【著作権者】
Tor Project, Inc.
【対応OS】
Windows 7/8/10
【ソフト種別】
フリーソフト(寄付歓迎)
【バージョン】
9.5(20/06/01)