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GoogleがAndroidの開発者支援策などを発表 ~“Google Play Console”一新、「Kotlin」コードは20%削減

無料のプログラミング学習コンテンツを日本語で提供。Android版「Clubhouse」にも言及

GoogleのGoogle Playパートナーシップバイスプレジデントのパニマ・コチカー(Purnima Kochikar)氏

 Googleは9日、「Google Play」における開発者支援や、セキュリティ強化などの取り組みについて説明した。GoogleのGoogle Playパートナーシップバイスプレジデントのパニマ・コチカー(Purnima Kochikar)氏は、『「Google Play」は、利用者の信頼性と安全性、開発者の成功を第一に考えている。アプリをダウンロードしている利用者には、安全で、楽しい体験ができる場を提供し、アプリを開発している開発者には、役立つ、開かれたプラットフォームを提供することに力を注いでいる。開発者は、「Google Play」にとって大切なパートナーであり、簡単にビジネスを構築できるように支援をしている。こうした利用者と開発者のすべてを尊重し、保護することが、Googleの責任だと考えている』と、同社の基本姿勢を示した。

 同社によると、現在、全世界で25億台以上のAndroidデバイスが使用されており、「Google Play」の月間アクティブユーザーは20億人以上に達しているという。また、2020年2月までに、「Google Play」上で開発者が得た収益は、中国を除く全世界で800億ドル以上に達している。

「Google Play」の月間アクティブユーザーは20億人以上
「Google Play」上で開発者が得た収益は全世界で800億ドル以上

 『新型コロナウイルスの影響で、生活の仕方や仕事の仕方、人との交わり方が変化するなかで、Androidのゲームやアプリはさらに重要性を増している。人がやりたいと思うことをバーチャル空間でやりたいというニーズが高まっており、ビデオコンファレンスやメッセージングなど、人に会うためのツールや機能が開発された。店舗で商品を購入できないため、eコマースアプリも増加し、子供のための教育アプリの増加も見られた。そして、年齢、性別、国を問わずに、ゲームのニーズが増えている。遠隔医療が立ち上がり、10年かかると思われていたものが1年で立ち上がった。多くのアプリが作られ、その普及までの時間が短くなっている。「Google Play」は、新たなアプリの普及に貢献できたと考えている』などとした。

「Google Play」のサービス手数料15%引き下げへ

 開発者向けでは、まず、3月に発表した新たな施策について説明した。

 2021年7月1日から、「Google Play」で、デジタルグッズやサービスを販売するすべての開発者に対して、15%のサービス手数料引き下げを実施。『世界中の開発者が、「Google Play」上で、イノベーティブで、成長するビジネスを作りあげてもらうための施策になる』と位置づけた。

15%のサービス手数料引き下げを実施

日本でインディゲームコンテスト“Indie Games Festival”を近夏開催

 また、インディゲームの開発者を支援するためのインディゲームコンテスト“Indie Games Festival”を開催。『過去3年間、日本や韓国、米国、欧州を対象に開催し、そこで新たなアイデアが発表されている。今年夏には、日本でも4回目のコンテストを開催する』とした。正式な日程は今後発表するという。

 “Indie Games Festival”は、年1回開催されているもので、外部審査員とGoogleによって選ばれたトップ20の開発者に対して様々な支援を実施。具体的には、Androidや「Google Play」の最新情報に関するセミナーやワークショップへの招待、海外展開コンサルテーションや「Google Play」ストアでのプロモーション、ビジネスコンサルテーション、技術改善支援、パートナーからの事業支援などが行われる。

“Indie Games Festival”の概要

 『パートナーからの開発費の支援や、プレーヤーに届けるための支援なども用意している。こうした活動を通じて、日本のインディゲーム開発者が持つイノベーションと高いクリエイティビティを、世界中のAndroidユーザーに届けたい』(「Google Play」の五十嵐郁氏)としている。

 今年のIndie Games Festivalは、完全オンラインで開催するほか、新たに学生部門賞を新設することも発表した。

「Indie Games Festival」

 『これまでのコンテストでは、学生からの応募が多く、クオリティが高いという印象がある。そこで、より多くの学生を支援するために、新たな賞を設けた。学生の作品を支援し、将来、素晴らしいクリエイターが育つことを応援し、製作する楽しさを経験してもらいたい』としている。

 また、Googleでは、“Start on Android”というプログラムを用意するなど、Android向けアプリの開発を支援する体制を整えていることも紹介した。

“Google Play Console”をよりユーザーフレンドリーなものに一新

 さらに、2020年から開発者向け“Google Play Console”を一新したことにも触れた。

 パニマ・コチカー氏は、『コンソールを、よりユーザーフレンドリーなものに変え、アプリのリリースステータス、パフォーマンス、ポリシー変更などを整理して表示でき、使い勝手が高まっている。さらに、エンゲージメントおよびマネタイゼーションに関するメトリクスコンソールを強化し、28日間の継続ユーザーの状況、1日あたりのアクティブユーザー数(DAU)の増減率、アクティブユーザーの1日平均利用額(ARPDAU)の推移などを確認できるようになっている。これらの新たな指標を使うことで、自社アプリのトレンドと、競合会社との比較が行え、マーケティング投資の判断などにもつなげることができる』とした。

“Google Play Console”

プログラミング学習の機会を日本語で提供

 そのほか、開発者のための学習機会として、完全無料のセルフトレーニングコースの“Google Play Academy”を日本語でも提供していること、世界各地の「Google Play」エキスパートにより、日本やインドなどの各地でビジネスを展開する上でのベストプラクティスやアドバイスをセミナー形式で提供する“Go Globalセミナー”をオンラインで開催していることも示した。

「Google Play Academy」

「Kotlin」使用でコード行数の20%が削減できる結果に

 また、プログラミング言語の「Kotlin」については、5,000万ダウンロードの実績を持つ日本の「スマートニュース」の事例について説明。『2年前に、AndroidがKotlinファーストに移行するという動きを捉えて、「スマートニュース」は各種テストを独自に開始。コードレビューなどの検証時間を10%削減したほか、コード行数の20%削減を実現。サービスが成長してもコードをそのまま維持し、アイデアを効果的に反映できるため、開発メンバーのモチベーションの向上にもつながった』と述べた。

Go Global

日本発のサービス“Google Play Point”は世界21カ国で展開

 日本市場から始まった取り組みのひとつが、“Google Play Point”である。2018年に日本で始まったこの仕組みは、アプリの購入やアプリ内で課金をする人などにポイントを付与。貯めたポイントは、様々な特典と交換することができる。現在、世界21カ国で展開されており、日本では今年2月時点で1,000万人以上が参加しているという。

 『Google Play は、190カ国で展開しているため、ひとつの国のためだけに、新たな機能に大規模に投資して、開発するのは珍しい。だが、日本の要望にあわせて開発したのは、それだけGoogleが日本の市場を重視し、大きな投資をしたいと考えていることの証である』と述べた。

“Google Play Point”

 そのほか、同社では“How Google Play Works”と題したWebサイトを新たに用意。4月9日から“Google Playの仕組み”として日本語での提供を開始したことも発表した。

開かれたプラットフォーム
「How Google Play Works(Google Playの仕組み)」

セキュリティ強化やプライバシー保護について

 信頼性と安全性への取り組みとして、“Google Play Protect”と呼ばれる仕組みを用意。毎日1,000億件のアプリをスキャンしているほか、「Google Play」以外の提供元から、マルウェアがインストールされるのを防ぎ、それが2020年には19億件を超えているとのこと。また、最新の機械学習モデルによって、不適切や不正なコンテンツを含むアプリの99%を未然に特定し、非承認していることを説明。『“Google Play Protect”をリリースして以降、なりすましや不正行為、不適切なコンテンツやマルウェアなどを検知する機能が大幅に向上した。こうした強力なセキュリティを実現していながらも、ユーザーがセキュリティのために追加料金を支払うことがなく利用できる』とした。

“Google Play Protect”

 一方、プライバシーについては、『アップデートしたデベロッパーポリシーによって、SMSメッセージや連絡先リスト、デバイスの位置情報などの機微なデータを要求できるのは、アプリの主な用途として適切と判断される場合に限定されるようになった。そして、すべてのアプリは、このようなデータへのアクセス理由をユーザーへ適切に開示し、さらにGoogleの審査プロセスを通過する必要がある。また権限を使用する際には、それが妥当な要素であっても、事前にユーザーに確認する必要がある』とした。

プライバシー保護

 その上で、開発者に対しては、四半期に1回程度実施されるポリシー変更をメールで通知するとともに、それにあわせたアプリを変更するための期間として30日間を設定。大規模な更新が必要な場合には、もう少し長い期間を設定することもあるという。

 2019年からは、ポリシー変更を解説するために、開発者向けのオンラインビデオセミナーを用意しており、2020年からは日本語でも展開。質疑応答ができるようにしているという。

 『日本の開発者はGoogleのポリシースペシャリストに、直接日本語で質問ができる。これはすべての開発者に対して公開されているものである』と述べた。

 日本では、4月16日に開発者向けポリシーウェビナーを開催するという。

開発者向けポリシーウェビナー

Androidで「Clubhouse」が使える日も近い!日本からのイノベーションにも期待

 なお、サブスクリプションサービス“Google Play Pass”の日本における展開については、『現在は英語版だけだが、日本語版は必ず提供する』とし、『約900種類のゲームにアクセスでき、家族が安心して利用できるサービス。インディゲームも楽しめる』とした。

 また、iOSだけで提供されている音声SNS「Clubhouse」については、『創業者とも緊密に連携をとっており、今後、Androidで使えるようになるだろう』と述べた。

 一方、パニマ・コチカー氏は、『私が「Google Play」のチームに参加したときには、5人しかおらず、米国人以外はインドから参加していた私と、日本から参加していた吉嗣浩隆氏しかいなかった』と前置きし、『その際に、ユーザージャーニーやストーリーの作り方、キャラクターの設定など、日本の開発会社から多くのことを学んだ。それを全世界のあちこちで話をし、世界中のAndroidの開発者を刺激することになった』と振り返る。

パニマ・コチカー氏は日本市場の重要性を強調した

 そして、『「Google Play」にとって日本の市場が重要なのは、モバイルコンテンツ市場の規模が大きいだけでなく、様々なイノベーションが起きている点である。ゲームでは常に新たなコンテンツや機能が生まれ、世界中のユーザーを魅了している。アプリでも、メリカリのようにCtoCとペイメントを組み合わせて、ひとつのサービスのなかでユーザーが収益をあげ、消費をするといったことが行われている。「Google Play」は、日本のデベロッパーのイノベーションの力を信じている。さらに成功してもらいたいと考えている』などと述べた。