#モリトーク

第135話

Windows 8/10がUSBメモリを破壊する噂

 Windows 10への“無償”アップグレードが終了するまで残り約1カ月。その手順はもちろん、自動アップデートを防止する方法、Windows 7への復元方法など、窓の杜の記事でも注目度が急上昇している。

 そんな中、“Windows 10”“高速スタートアップ”“NTFS”をキーワードに、『外付けHDDやUSBメモリのデータが消える』といった情報がTwitter上などで散見される。Windows 8登場後にも同様のトラブルが各所で報告されていた。マイクロソフト社の技術者向けサイトにて、その発生条件や注意点が公開されているので確認しておきたい。

“高速スタートアップ”機能の仕組み(マイクロソフト社のブログから引用)

 結論としては、Windows 10を含むWindows 8以降のPCから取り外した外付けHDDやUSBメモリを他のWindowsマシンで共用すると、データを失う可能性がゼロではない。この問題は、新仕様のNTFSフォーマットと“高速スタートアップ”機能に起因する。

 Windows 8以降ではNTFSの仕様が強化され、Windows 7以前でのそれとは互換性がなくなっている。その結果、新仕様のNTFSでフォーマットされたドライブはそのままだとWindows 7上で認識することができず、データを消失したかのように見えてしまう。もちろん、Windows 8/8.1/10にはNTFSの互換性を保つための仕組みが用意され、ほとんどの場合はそれを意識しなくてもよい。

 たとえば、外付けHDDやUSBメモリではデバイスのプロパティで“取り外しポリシー”を規定の“クイック削除”から“高パフォーマンス”へと変更しない限り、NTFSは基本的に旧仕様のまま。仮に外付けHDDの“取り外しポリシー”を変更して新NTFSへ切り替えても、タスクトレイアイコンなどからハードウェアの“安全な取り外し”を選択すれば、アンマウント時にNTFSの情報が旧仕様へと自動で書き換えられる。

 つまり、“取り外しポリシー”を意図的に変更した上で、USBプラグをいきなり抜き取るという、限定された条件で非互換性のトラブルが発生する。そもそも、“高パフォーマンス”設定では“安全な取り外し”が必須とされているので、面倒でも忘れないように心がけたい。

 次に“高速スタートアップ”の注意点。同機能が有効な状態でWindows 8/8.1/10マシンをシャットダウンさせると、USB機器の接続を維持した特殊な休止状態に移行する。この状態で外付けHDDやUSBメモリを抜き取り、他のパソコンで使用して戻すことはWindows 7以前の休止と同様に非推奨。データが正常に反映されない危険性もあるため、Windowsを起動した状態での“安全な取り外し”が最善だ。NTFSフォーマットに起因する非互換性の問題よりも身近な症例として覚えておこう。

「Windows10レスキューキット」(電机本舗のWebサイトから引用)

 なお、これらの情報はWindows 8を基にしており、Windows 10では状況が異なるかもしれない。また、USBメモリのフォーマットにはFAT32やexFATを選択しておけば、少なくともNTFS起因のトラブルは避けられる。そのほか、“高速スタートアップ”が有効でもシャットダウン時に指定ドライブを自動かつ安全に取り外す有料ソフト「Windows10レスキューキット」を利用するのもひとつの手だ。