【第4話】
引き継がれる作者魂
(12/04/10)
Googleをはじめとする多くの企業が無料のソフトやWebサービスを展開するようになった昨今、個人の作者がWindows用のフリーソフト・シェアウェアを開発し続けることは、労力の面でもモチベーションの面でも難しくなりつつある。また個人作者の関心が、比較的容易に制作できるWebブラウザー用の拡張機能や、スマートフォンのアプリに移行している側面もあるだろう。
それでも、窓の杜が新しいソフトの公開や既存ソフトのバージョンアップを毎日紹介しているように、オンラインソフトの文化が消えることはなく、オンラインソフト界にとって歓迎すべきニュースも入ってきている。それは、開発が終了・停止したソフトの復活だ。ここ半年で取り上げたニュースだけでも、「FFFTP」「オンスクリーンボリュームビューア」「マウ筋」「xyzzy」「NanaTree」といった、5本の人気ソフトがカムバックしている。
これらのソフトに共通する点は、原作者がソースコードを公開しており、別の作者・有志によって開発が再開したことだ。そのなかでも「FFFTP」は、原作者である曽田純(Sota)氏が開発終了を宣言してから1カ月余りで有志が集まり、再開発がスタートしている。「FFFTP」のソースコードは、開発終了をきっかけに公開されたわけではなく、原作者が開発しているときからオープンソースのスタイルをとっていた。しかし、機能や使い勝手を大きく変更するような派生版は誕生することもなかったので、それだけ「FFFTP」の完成度は高く、また原作者が信頼・尊敬されていた証とも言えよう。
「オンスクリーンボリュームビューア」と「マウ筋」の後継ソフトである「オンスクリーンボリュームビューア Lite」と「マウ筋 Lite」は、同じ作者の手によって復活を遂げた。その最大の目的は両ソフトともに、Windows 7への対応である。「オンスクリーンボリュームビューア」は、コンポーネントの互換性がないなどの理由で、原作者がWindows 7への対応を断念していた。また「マウ筋」は、64bit版のWindows 7で動作しないという問題を抱えており、原作者が対応を試みたものの、解決には至らなかった。
「xyzzy」と「NanaTree」は、開発が引き継がれたばかりのソフトだ。「xyzzy」は6年ぶりのアップデートということで、驚かされた人も多いだろう。「NanaTree」は「NanaTerry」とソフト名を変えており、作者によると、同氏の娘さんがオリジナルの「NanaTree」を使い始めたことを機に、“2ちゃんねる”で要望を募った上で、再開発を始めたようだ。
オープンソースのソフトといえば、ユーザーの視点ではどうしても無料であることが先行し、それ以上のメリットを考えることはあまりないだろう。また開発者の視点でも、オープンソースのコンポーネントは活発に利用されているものの、ソフト丸ごとになると、派生版の開発といった実例はそこまで多くない。FacebookやTwitterなど、作者同士がインターネット上でコミュニケーションをとったり、仲間を募る手段も増えているので、オープンソースという資産を活かすような動きに今後も期待したい。