【第14話】
脱Flashのタイミング
(12/06/26)
「Firefox」と「Adobe Flash Player」の相性問題が発生してから2週間以上が経っているが、いまだ完全解決の糸口が見つかっていない。「Adobe Flash Player」に追加された「Firefox」向けのセキュリティ機能“保護モード”が原因で、「Firefox」と「Adobe Flash Player」がクラッシュするほか、“YouTube”や“ニコニコ動画”などの動画を視聴できなかったり、ニコニコ動画で日本語のコメントを入力できないといった問題が発生した。
その後、「Adobe Flash Player」を旧バージョンへ戻す、「Google 日本語入力」を使わない、競合するプラグインやアドオンを無効化する、「Adobe Flash Player」の“保護モード”を無効化するなどの回避方法が、MozillaとAdobe社の両者から提示された。クラッシュ現象については、両ソフトの最新版が公開されることで解決したものの、それ以外の問題は未解決のままになっている。
これだけ長引けば、多くの「Firefox」ユーザーはうんざりしていることだろう。なかには別のWebブラウザーに乗り換えたという人もいるかもしれないが、ここはネガティブに捉えず、Flashの必要性を見直す絶好の機会だと考えてみてはどうだろうか。たとえばYouTubeの場合、Flashに頼らずHTML5の技術だけで、つまりWebブラウザーの描画エンジンだけで動画を視聴するためのオプションがすでに用意されている。そして、iPhoneやiPadからYouTubeやニコニコ動画へアクセスした場合は、自動的にFlashではなくHTML5の技術を利用する仕組みになっている。
HTML5の可能性は動画再生に留まらない。「Google Chrome」の“アプリ”機能はHTML5の技術を使い、Webアプリケーションなどのコンテンツをオフラインでも利用可能にするものだ。「Google Chrome」用のアプリにはゲームも多数公開されており、これまでFlashで制作されていたようなゲームがHTML5の技術で提供されている。「Firefox」も同様のアプリ機能に対応する予定であり、専用サイト“Mozilla Marketplace”をオープンし、同“Nightly版”で現在テスト中だ。
このようにFlashとHTML5の役割は重なる部分が多く、FlashからHTML5へ乗り換える土台もすでにおおよそ整っている。とくにスマートフォンなどのモバイル環境では“脱Flash”が進んでおり、Adobe社はモバイル向け「Adobe Flash Player」の開発を終了している。実は当事者であるAdobe社もHTML5を推しており、最新のFlash制作環境である「Adobe Flash Professional CS6」には、FlashコンテンツをHTML5で出力する機能が搭載されている。
もちろんFlashが完全消滅することは当面ないだろうが、デスクトップ環境でも“脱Flash依存”の時代がやってくるのは必然であり、あとはいつだれがそれを宣言するのか、タイミングだけの問題であろう。FlashからHTML5への移行はWebサイト単位で実施されることになるはずなので、多数のWebサービスを展開し、なおかつWebブラウザーとモバイルOSも開発するGoogle社が鍵に握っているように思われる。