#モリトーク

第38話

10億ダウンロードという偉業

 システムクリーナー「CCleaner」の累計ダウンロード数が先週、初公開から8年の年月で10億回を突破した。窓の杜では“ダイジェストニュース”での報道になったため、このニュースに気付かなかった人も多いかもしれないが、10億ダウンロードを達成するオンラインソフトはそうそうなく、間違いなく偉業と言えるはずだ。10億という数字だけではわかりにくいので、ほかのオンラインソフトと比較してみよう。

 たとえば「Firefox」は、初公開から5年弱の期間で10億ダウンロードを達成している。Webブラウザーといえば、世界でもっともユーザー数が多いジャンルのオンラインソフトであり、そのダウンロード数もオンラインソフトのなかで最多だと思われる。それを考えると、「CCleaner」の人気がいかに高いのか、おおよそ実感できるだろう。また、「Firefox」用アドオンの総ダウンロード数が今年7月に30億回を突破しており、数十億のダウンロード数とはそういった規模の数字となる。

「CCleaner」

 窓の杜が初めて「CCleaner」を紹介したのは2006年7月のことで、その時点ですでにそれなりの知名度があった。その後も窓の杜では「CCleaner」のバージョンアップを頻繁に取り上げ、それらの記事は年を追うごとに注目度が上がり、“記事アクセスランキング”ではいつも上位にランクインしている。その一方で、意外な事実もある。

 前回本コラムの第37話で、“窓の杜大賞”のノミネート選考基準について説明したことを思い出してほしい。まだ読んでいない人は目を通していただきたい。2011年までの“窓の杜大賞”では、いずれのソフトもノミネートおよび受賞のチャンスが基本的に一度しかなく、定番とされるソフトであっても、一度タイミングを逃したら無冠のままになっていた。実は、「CCleaner」がその最たる例なのだ。

 「CCleaner」が“窓の杜大賞”にノミネートされるとすれば、選考基準上、初紹介時の2006年しかないが、その初紹介時の記事は2006年8月の“月間記事アクセスランキング”でギリギリの10位にランクインした程度の注目度だった。また、「CCleaner」は2006年以前から存在していたため、2006年を象徴するソフトとは言えずノミネートを逃している。

 海外製ソフトである「CCleaner」が日本でも本格的に定番の地位を確立したのは、2010年ごろ、もしくはそれより少し前だと考えられる。「CCleaner」のメジャーバージョンアップを報じた2010年10月の記事が、その年の“年間記事アクセスランキング”で17位にランクインするほど注目を集めている。仮定の話になるが、もしこのときに“2012年 窓の杜大賞”の選考基準を適用していれば、「CCleaner」にもノミネートのチャンスが再び巡ってきたかもしれない。

 近年、Googleなどの企業が開発したソフトに注目が集まりがちで、『必須ではないけど、あると便利』といったような、昔ながらのオンラインソフトは目立たなくなっている。「CCleaner」はシステム系のソフトということもあり、その内容が地味で、爆発的にヒットするような“華”もない。しかしその分だけ、最新OSへの対応が早いなど、「CCleaner」はとにかく仕事が速く着実だ。地味だけど長く愛される、そんな「CCleaner」は、まさにオンラインソフトらしいオンラインソフトであると言えるだろう。

(中井 浩晶)