#モリトーク

第72話

電源プランと擬似ターボ

 先週の第71話、CPUをフルパワーで動作させるツール「Full Throttle Override」が、電源プランの特性を知ることで、節電にも貢献することを解説した。今回も引き続き、電源プランと「Full Throttle Override」のネタを取り上げたい。

CPUの動作周波数を強制的に上限値へ引き上げる「Full Throttle Override」の機能

 「Full Throttle Override」には、手動または自動で電源プランを“高パフォーマンス”へ切り替る機能のほかに、CPUの動作周波数を強制的に上限値へ引き上げる機能も搭載されている。今回注目したい後者の機能は、なにやら特殊なことをしているように思えるが、決してそういうわけではなく、実はWindowsの電源プランを一時的に書き換えているだけだ。

 各電源プランの詳細設定を表示し、[プロセッサの電源管理]という項目を展開すると、CPUの最大動作周波数を制限する項目[最大のプロセッサの状態]、CPUの最小動作周波数を引き上げる項目[最小のプロセッサの状態]が現れる。簡単に言えば、[最大のプロセッサの状態]がリミッター、[最小のプロセッサの状態]がブースターであると考えればよいだろう。ちなみに、“バランス”での標準値は[最大のプロセッサの状態]が“100%”、[最小のプロセッサの状態]が“5%”となっている。

 「Full Throttle Override」が一時的に書き換えている項目は[最小のプロセッサの状態]であり、その数値を“100%”にすることで、CPUの最小動作周波数が上限値まで引き上げられる。つまり、CPUがフルパワーで動作し続けることになるため、即応性が最大化する仕組みだ。

[最大のプロセッサの状態]を“99%”に制限し、「Full Throttle Override」でそれを開放

 これらの仕組みを理解した上で、電源プランの詳細設定を事前にカスタマイズしておけば、「Full Throttle Override」の用途がさらに広がる。たとえば、[最大のプロセッサの状態]を“99%”、[最小のプロセッサの状態]をそれ以下に設定すると、CPUの動作周波数が上限値に達しなくなり、それは節電につながる。

 この状態で「Full Throttle Override」を利用すると、“100%”へと書き換えられた[最小のプロセッサの状態]が優先され、99%の出力で制限されていたCPUの動作周波数が100%の出力へ上昇する。その様は、CPUへの負担がない『擬似ターボ』とでも言えるだろうか。

 電源プランの“省電力”を選択している場合、もともとCPUの動作周波数が上限値に達しにくいので、この『擬似ターボ』は“バランス”との組み合わせで試すとよいだろう。その場合は、“バランス”を複製する形で新規の電源プランを作成したほうがより安全だ。

 なお、筆者および編集部が確認したところ、Windows 8環境では[プロセッサの電源管理]を表示できない場合があるようだ。そのほかの環境でも、ハードウェアの構成やメーカーのカスタマイズによって、上述したことが当てはまらないこともあるはずなので、あくまで『可能な場合は』という前提で試していただきたい。

(中井 浩晶)