#モリトーク

第86話

定番ソフトが定番である理由

 前回の第85話では、「Sleipnir」と「Opera」がメジャーバージョンアップによってリニューアルした理由を分析した。多機能性と使い勝手のよさを両立させることは非常に難しく、それはオンラインソフト作者にとって最大の課題と言えるかもしれない。「Pixia」の作者である丸岡勇夫氏のインタビュー記事には、そのヒントがたくさん詰まっている。

 『初めて使うソフトで余計な機能が多すぎると使いづらい』『バージョンアップのたびに機能は減っていくべきだ』『何年たっても「Pixia」を使っていた人が初めて使う人に使い方を教えられる』など、丸岡氏の発言はその設計思想が初心者に対してフレンドリーであることを示している。初心者でも扱えるオンラインソフトであれば、上級者がその使い方で戸惑うことはないはずだ。

「BunBackup」v4.0

 同様の設計思想をもつオンラインソフト・作者はほかにも存在するので、今回はそこに焦点を当ててみたい。それは、バックアップソフトの定番中の定番である「BunBackup」だ。「BunBackup」は今年5月、公開10周年を迎えたほか、同11月には6年ぶりのメジャーバージョンアップを果たした。その特長は、多機能でありながらもユーザーインターフェイスがシンプルであること。

 たとえば、条件を限定した上でファイルをコピーする一般的なバックアップ処理に加えて、世代管理型やミラーリング型のバックアップにも対応している。さらに、バックアップの自動化、キャッシュ作成によるバックアップ処理の高速化、ファイルの暗号化など、バックアップに必要とされる機能がほぼ網羅されている。

高度な機能をあえて封印する「BunBackup」

 ところが初回起動時の「BunBackup」では、売りであるはずの高度な機能がほとんど封印されているのだ。各種機能を管理するための設定画面が存在し、そこで有効化した機能のみがメニューに現れる仕組みになっている。つまり、各種機能がプラグインのように実装されているため、それを必要としないユーザーは、よりシンプルなユーザーインターフェイスで「BunBackup」を利用することができる。

 その一方で、すべての機能を有効化すれば、上級者でも使いきれないほど機能が充実したバックアップソフトへと変貌する。初心者にやさしく、上級者の要望にも応える「BunBackup」は、多機能性と使い勝手のよさを両立したオンラインソフトの代表と言えるのではないだろうか。

 とくに「BunBackup」はバックアップソフトの定番、そしてバックアップソフトはオンラインソフト全体の定番ジャンルなので、パソコン初心者も含めて、万人にフレンドリーであることが重要になってくる。それを忠実に実践する「BunBackup」は優秀なオンラインソフトであると同時に、オンラインソフトの“入り口”としても最適であり、まさにオンラインソフトの定番なのだ。

(中井 浩晶)