どれ使う?プログラミング教育ツール

2進法やアルゴリズムなどの概念も学べるコンピューターサイエンスの学習教材「コードアベンジャーズ」

 日本では、子ども向けのオンライン教材というと、デジタル化された通信教育を専用端末で受講するとか、動画授業閲覧などをイメージすることが多いでしょう。今回紹介するのはニュージーランド発のオンラインプログラミング学習教材「Code Avengers(コードアベンジャーズ)」。Webブラウザーでアクセスして利用するタイプの教材です。

コンピューターサイエンスの総合的な学習コース

 日本ではこの夏にリリースされたばかり。日本語版のサイトがあるので、ここから10日間の無料トライアルに進んで試してみましょう。価格は支払いサイクルによって異なる設定で、3カ月60米ドル(月額換算20米ドル)~1年間96米ドル(月額換算8米ドル)となっています。

無料トライアルから入って会員登録が必要

 ログイン後の画面はこんなふうになっています。言語切り替えは右上にあり、登録画面やログイン画面も同様です。日本語版はJR(ジュニア)コースがベータ版としてリリースされているので、「JR」を選びます。年齢は「7-11才」を選んでみます。該当するコースだけが表示されます。どれから始めてもどんなペースで進めても自由です。

3つのジャンルで複数のコースが用意されている。現時点では「デモ」以外のコースに挑戦

 ジュニア版には「データ表現(Data Representation)」、「コンピューター思考(Computational Thinking)」、「プログラミング(Programming)」のコースがそれぞれ用意されていて、全体としてコンピューターサイエンスの学びを構成しているのがわかります。本記事ではプログラミング教材と紹介していますが、総合的な視点なのがうれしいところ。

2進法やアルゴリズムなどの概念を学ぶ内容も

 各コースは複数のレッスンで構成されています。例えば「Data Representation(データ表現)2:博物館のなぞ」を選ぶと「コード、暗号、ASCII」や「2進法スイッチ」「デジタル画像-ピクセルグラフィック」などのレッスンが並んでいます。

「Data Representation(データ表現)2:博物館のなぞ」のレッスン一覧。取り組んだ履歴も残る
「2進法スイッチ」の学習画面

「Computational Thinking(コンピューター思考)2:クリエーチャーフィチャーどうぶつ園」には、「アルゴリズムってなんだろう」「シーケンスのアルゴリズム作成」「抽象化する」などのレッスンが並んでいます。言葉だけ聞くと『なにやら難しそう……』と思うかもしれませんが、噛み砕いた会話形式の導入や説明と簡単なアクティビティをセットにしてあるので、不安に思うことはありません。

導入や説明の会話の音声は英語のままで吹き出しは日本語。漢字にはふりがながていねいにふられている
「Computational Thinking(コンピューター思考)2:クリエーチャーフィチャーどうぶつ園」の中の「シーケンスのアルゴリズム作成」の学習画面

プログラミングはブロック型のビジュアルプログラミング方式

「プログラミング(Programming)2:安全に備えよう」の教材は、ブロック型のビジュアルプログラミング方式。ストーリーに沿って、プログラミングで図を書いたりクリックに反応するものなどを作っていきます。最初はブロックの中に文字ではなく絵だけが描かれたブロックを使います。レッスンが進んでプログラムの要素が増えてくると、文字だけの表記だけのブロックも混ざってきます。

絵だけのブロックと文字表記のブロックの両方を使う

 ブロック内の言葉は英語のままで日本語化されていません。作業の説明文にはブロックの言葉の意味を日本語で併記してあるので、ブロックの英語表記を記号として捉えられれば、英語が読めなくても照らしあわせて進められるでしょう。さらに対象年齢を上げると文字表記のブロックだけになってきます。

 日本語が母語の子どもたちにとって、ブロックの表記文字が英語で、説明音声が英語というのは、ハードルが高くなるポイント。説明表記は日本語化されていますが、文字を読むの苦手なお子さんには取り組みづらいかもしれません。年齢だけでなくお子さんによって個人差が大きいので、大人が少しサポートして一緒にやってみて判断するとよいでしょう。

日本には少ないタイプの教材

 日本では子ども向けのプログラミング学習教材やツールは増えましたが、コンピューターサイエンスの学びを積み上げるような学習教材はあまりなく、小学校の学習項目としても残念ながら想定されていません。その意味で貴重な教材といえるでしょう。こうした総合的なコンピューターサイエンス教材は、今回のニュージーランドに限らずアメリカなど日本以外の国で作られたものが圧倒的に多く、多言語展開していても日本語化されているものは限られています。

 「Code Avengers」は英語の要素が強めなので、いっそ、英語の記述やセリフが目や耳に入ることをメリットにした使い方をするのもひとつのアプローチ。小学校高学年や中学生で英語に慣らしたい場合などにはちょうど良いかもしれません。完全な英語バージョンに切り替えるのも簡単です。

 学習教材ですので、このツールで自由な作品制作をするわけではありませんが、ブロック型のビジュアルプログラミング部分はGoogleが提供しているビジュアルプログラミングエディターBlocklyを活用して作られているので、類似のプログラミング方式を目にすることも多いでしょう。なお、今回紹介していないプロコースの方は、日本語化はまだ一部のようですが、JavasSriptやPython等のプログラミング言語をテキストで記述する学習ができます。

 いきなりプログラミングだけというのでなく、コンピューターサイエンスの学びを総合的に得られるこんな教材も、ぜひ試してみてください。

 2020年度から小学校でプログラミング教育が実施されています。これに伴い家庭でも手軽にプログラミングを学習できるツールが多数登場していますが、どんなツールを使えばいいのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか? そこで本連載では家庭でのプログラミング教育にピッタリなお勧めツールを紹介していきたいと思います。