どれ使う?プログラミング教育ツール

iPad用無料アプリ「Springin'」は文字を使わないプログラミングツール! 直感的にものづくりを楽しもう

「Springin'」

 子ども向けのプログラミングツールの多くはテキストでコードを記述するのではなく、何らかのビジュアル化をして簡単な操作でプログラムを作成できるようになっています。一番多いのは、ブロック化されたさまざまな命令をドラッグ&ドロップで組み合わせるタイプですが、今回紹介する「Springin'」(スプリンギン)は、それとは全く違う独自の手法でプログラミングをして、直感的にデジタルものづくりを楽しめるアプリです。

直感的な方法でカラクリを作る!

 「Springin'」はiPad用の無料で利用できるアプリです。プログラミングをしているというよりも、自分で描いた絵に性質や関係性を付与していろいろなカラクリを工作する感覚。ぐいぐい作品作りに入っていける「デジタルものづくり」ツールという感じです。

 作った作品は、ネット上のマーケットにアップロードでき、iPad版「Springin'」アプリはもちろん、WebブラウザーやAndroid版の「Springin'」アプリで遊べます(Android版「Springin'」は今後作品を制作する機能を追加予定)。

 アプリの作品制作画面では、キャラクターやパーツを自分で描いてどんどん追加できます。手始めにりんごを1個描いてみましょう。りんごを1個置いた「シーン」をタップして「属性」を設定するだけで、ちょっとした動きの作品ができます。

左:「Springin'」の基本画面。「シーン」に「重力」の属性を設定しているところ/右:アイテムは手軽な描画ツールでささっと手描きできる

 シーンにつけられる属性は2種類で、「重力」と「傾きセンサー」です。「重力」にするとプログラムを実行したらリンゴは下に落ちていきます。「傾きセンサー」にするとタブレットの傾きに応じてリンゴがいろいろな方向に動きます。なお、「重力」はかかり具合や方向を指定できて、上方向や左右方向など好きな方向に引き寄せられるようにすることもできます。

アイテムにいろいろな性質を持たせて、あっという間にゲーム風の作品が完成!

 リンゴのようなアイテム自身にも「属性」を指定できて、実にたくさんの種類が用意されています。自分自身の性質を決めたり、触られた時のアクションを決めたり、他のアイテムとの関係性を決めたりすることができます。

 「属性」をつけるにはアイテムをタップしてずらっと並んだアイコンのON/OFFをするだけ。ただし、アイコンを見るだけでは何ができるのかすぐには理解できないので、画面下部の辞書マークからリファレンスを参照するのがおすすめです。動画も使って各属性の役割を教えてくれます。

左:アイテムにつけられる属性。非常にたくさんある。例えば、動く時に回転する性質にしたり、触られたときに音を鳴らしたり、重力等に左右されないよう位置を固定したりできる/右:画面下部の辞書マークからリファレンスを開いたところ。チュートリアルなどもここにある

 リンゴ1個ではピンとこないかもしれませんが、アイテムを増やして、各アイテムに適宜「属性」を付与していくことで、楽しい効果を組み立てることができます。バナナなどを追加して、リンゴとバナナにいくつかの属性を設定し、シーンの属性を「傾きセンサー」にしてみます。

アイテムを増やしてさまざまな属性を加えたところ。バナナを加え、上下左右に跳ね返る壁になるものを配置。ところどころあけてある。音を録音する機能もあり、アクションに応じてオリジナルの音を鳴らせる

 これだけで、タブレットの傾きでバナナを動かして遊ぶちょっとしたゲーム仕立ての作品ができました。タブレットを傾けてリンゴにぶつけるとリンゴが「りんご!」と喋り、くるくる回るバナナがシーンの外に飛んでいかないようにうまく動かし続けます。動画でご覧ください!

【「Springin'」で作ったiPadを傾けてバナナをリンゴにぶつけるゲーム - 窓の杜】

 これだけでけっこう楽しめます。ゲームに限らず、手でタップして楽しむ楽器のようなものもできるでしょうし、動く絵本のようなものも簡単にできそうですね。

子ども向けプログラミングツールのタイプと目的はさまざま!

 「Springin'」は、アイテムごとの「属性」を設定することがいわばプログラミングなわけで、テキストで記述するプログラミング言語を模したブロック型のビジュアルプログラミング系のツールのように、プログラムを記述する感覚はありません。もし「一般的なプログラミング言語の習得のための前準備」を目的とするなら、そこには直結しないツールですが、その分「デジタルものづくり」に抵抗なくさっと入っていけます。

 プログラムのかたまりをアイコンひとつで「属性」としてさっと適用しているわけですから、アイテムごとの属性でカラクリを創出したり、アイテム間の関係性で条件を作ったりという組み立てを考え、発想をぐいぐい働かせていくことが、まさに「プログラムを組み立てている」と捉えられるでしょう。

 子ども向けのプログラミングツールは、「プログラミング」をどう捉えるかがツールによって異なりますし、目指す方向性も少しずつ違います。「Springin'」は、細々したプログラムの文法を覚えるのは横に置いておいて、直感的にプログラムのパーツを使いまくってとにかくカラクリを作るのを楽しんで欲しい!! という想いが伝わってくるツールです。

 作り方のヒントを見たりチュートリアルをやってコツをつかめばお子さんがひとりでどんどん作品作りをすることもできますから、試してみてはいかがでしょうか?

 2020年度から小学校でプログラミング教育が実施されています。これに伴い家庭でも手軽にプログラミングを学習できるツールが多数登場していますが、どんなツールを使えばいいのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか? そこで本連載では家庭でのプログラミング教育にピッタリなお勧めツールを紹介していきたいと思います。