どれ使う?プログラミング教育ツール
任天堂のプログラミング教材はゲーム作りの解説が超絶ていねい、親が教えなくても挫折しない!
「ノードン」をワイヤーでつなぐ直感的なプログラム方法
2021年7月1日 06:55
発売と同時にSNS上でこの画面をずいぶんと見かけたくらいにじんわりとした盛り上がりを見せているのがNintendo Switchの「ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング」。自分でプログラミングをしてSwitchでプレイできるオリジナルのゲームを作ることができます。プログラミングの方法が独特の直感的な手法をとっていて子どもを含むプログラミング初心者でも理解しやすく、超絶に丁寧なステップバイステップの誘導で基本のゲームづくりをサポートをしてくれます。
独特のプログラミング手法で、「入力」「出力」を徹底イメージ
プログラミングの手法は独特。「ノードン」と呼ばれるキャラクター化されたさまざまなプログラム要素をワイヤーでつないでゲームのカラクリをつくっていきます。
スティックでキャラを左右に動かしてみる
各ノードンは、「入力」「出力」「モノ」「中間」とカテゴリーが分かれていて、常に入出力のイメージを持てるようにできています。例えばスティックでゲームキャラクターを左右に動かすプログラムは以下のようになります。「入力」カテゴリーの「スティック」ノードンと「モノ」カテゴリーの「ヒト」ノードンを使います。
各種「ノードン」の設計はゲーム作りに最適化されていますから、ゲームに必要な仕組みが比較的少ないステップでプログラムできます。また、「ノードン」をワイヤーでつなぐというビジュアル化がされたプログラミング手法なので、要素同士の関係性やことばでの理解を入り口に、プログラミングの世界に入っていくことができます。
ゲーム作りをとにかく丁寧にナビゲートしてくれる!
プログラム作りの基本的な考え方がわかったところで、ここからが「ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング」の本領発揮。シューティングやアスレチック、レースなど誰もが作ってみたくなるタイプのゲームが、レッスンとして7個用意されていて、すべて丁寧なステップバイステップで作り方を誘導してくれます。
細かい操作を丁寧にナビゲートしながらも飽きさせない
ゲームというのはシンプルなものでもけっこう大量な要素が組み込まれていて、ひとつのレッスンでゲームが完成するまでの道のりはけっこう長くかかります。ユーザーがやっていることを見失わないように、ほんのちょこっと作ってはプレイ画面で動かしてみるというのをとにかく徹底的に繰り返します。
わざと一回失敗させたり、「これだけじゃちょっと簡単すぎる・難しすぎるね、じゃぁ次にこうしてみよう」という実感値を大切に先に進んでいくので、マニュアル通り作っている感覚ではなく、まさにタイトル通りナビゲートされている感覚です。
地道なステップで、完成に1時間以上かかるものもありますから、大人が先を急ぐ頭で取り組むと『概要はわかったから先に進みたい……』と思いそうになりますが、子どもがスイスイやっているのを見ると全然苦にならない様子。どうやら一手一手プログラムを積み上げていくのはゲームをプレイするのと同じような感覚のようです。
ゲームの完成度とプログラムの理解しやすさの両方を保つバランスが絶妙
サンプルとして作成するゲームは、ゲームとしての完成度もしっかりあり、十分楽しめるレベルになります。
今の子どもたちがプレイするゲームは3Dが当たり前なので、手軽に3Dのゲームが作れるのも魅力。使えるキャラクターの造形や、仕込まれている動きがいい感じに作り込まれているので、簡単なプログラムでもとてもゲームらしい動きをするので満足感が上がります。
とはいえ、1つのゲームを完成させるにはそれなりに複雑なプログラムが必要で大量の「ノードン」とワイヤーでプログラム画面が埋まります。ナビゲートされるままに進めていくと作り方を忘れてしまうので、あれはどうやったんだっけ……と思い出したいときは、学んだ小技がリスト化された「ノードンガイド」やリファレンスをあとで参照するといいでしょう。
自分でもっと手をいれたくなる余地も残してあり、レッスンでは最後は自分流のアレンジをするように促されます。完成したゲームをコピーして再編、拡張してもいいですし、もちろんゼロから自分でオリジナルゲームをつくることもできます。
一般的にプログラミング学習でゲームを題材にする場合、プログラムを理解しやすくするためにゲームの面白さや完成度を極端に下げるか、プログラム全体を理解させることはあきらめて完成度の高いゲームの一部のコードだけを触らせるか、のどちらかになる傾向があるのですが、ゲームの完成度とプログラムの理解の両方を保つバランスが絶妙なところに設定されていると感じます。エンディングの演出もちゃんと作ったりと、そういう手を抜きません。
プログラミング手法は「Nintendo Labo」から引き継がれている
「ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング」のプログラム画面を目にしたとき、『あれ?これはあの「Nintendo Labo」とおなじ系譜だよね……』と思ったのですが、公式サイトの開発者インタビューを読むと、ばっちりそのあたりの背景が語られていました。
「Nintendo Labo」はダンボール工作とSwitchで作ったプログラムで楽しいゲームや装置を作るコンセプトのゲームタイトル。なかでも「Nintendo Labo VR Kit」は3Dゲーム作りに特化しています。詳しくは以前「Nintendo Labo」を使った子ども対象のハッカソンイベントを取材した「こどもとIT」の記事を読んでいただくと、こうしたゲームプログラミングツールを手にした子どもたちのポテンシャルがわかります。
ゲームのプレイだけでなく、裏の仕組みに興味を持って、ゲームとクリエイティブに関わって欲しいと思うお父さん&お母さん方は、「ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング」をお子さんと一緒に挑戦してみてはどうでしょうか? そして、お子さんが作ったゲームをたくさんプレイしてあげてください!
なお、パッケージ版(税込み3,480円)にはアナログな「ノードンふりかえりカード」が付属しますから、会話しながらプログラムを考えたり画面から離れてプログラムの解説をしたりするときに便利です。ダウンロード版(税込み2,980円)を購入した場合はノードンカード(税込み500円)だけ追加購入も可能です。
2020年度から小学校でプログラミング教育が実施されています。これに伴い家庭でも手軽にプログラミングを学習できるツールが多数登場していますが、どんなツールを使えばいいのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか? そこで本連載では家庭でのプログラミング教育にピッタリなお勧めツールを紹介していきたいと思います。