どれ使う?プログラミング教育ツール

任天堂のプログラミング教材はゲーム作りの解説が超絶ていねい、親が教えなくても挫折しない!

「ノードン」をワイヤーでつなぐ直感的なプログラム方法

 発売と同時にSNS上でこの画面をずいぶんと見かけたくらいにじんわりとした盛り上がりを見せているのがNintendo Switchの「ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング」。自分でプログラミングをしてSwitchでプレイできるオリジナルのゲームを作ることができます。プログラミングの方法が独特の直感的な手法をとっていて子どもを含むプログラミング初心者でも理解しやすく、超絶に丁寧なステップバイステップの誘導で基本のゲームづくりをサポートをしてくれます。

「ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング」。Switchを使ってSwitchでプレイできるゲームをプログラムする

独特のプログラミング手法で、「入力」「出力」を徹底イメージ

 プログラミングの手法は独特。「ノードン」と呼ばれるキャラクター化されたさまざまなプログラム要素をワイヤーでつないでゲームのカラクリをつくっていきます。

スティックでキャラを左右に動かしてみる

 各ノードンは、「入力」「出力」「モノ」「中間」とカテゴリーが分かれていて、常に入出力のイメージを持てるようにできています。例えばスティックでゲームキャラクターを左右に動かすプログラムは以下のようになります。「入力」カテゴリーの「スティック」ノードンと「モノ」カテゴリーの「ヒト」ノードンを使います。

プログラム画面で「入力」カテゴリーの「スティック」ノードンの左右方向の出力を「モノ」カテゴリーの「ヒト」ノードンの左右方向の入力にワイヤーでつなぐ。「スティック」ノードンと「ヒト」ノードンにはそれぞれ様々な性質が設定できる
プレイ画面ではスティックを左右にすると人のキャラクターが左右へ移動する

 各種「ノードン」の設計はゲーム作りに最適化されていますから、ゲームに必要な仕組みが比較的少ないステップでプログラムできます。また、「ノードン」をワイヤーでつなぐというビジュアル化がされたプログラミング手法なので、要素同士の関係性やことばでの理解を入り口に、プログラミングの世界に入っていくことができます。

ちょっと動きとキャラを足してみる ~上下の動き・ジャンプとリンゴを壊すアクション

 ちょっとだけプログラムを足してみます。ヒトのコントロールに上下の動きとジャンプを追加し、リンゴを1個置いて、ヒトがぶつかったらリンゴが壊れるようにしましょう。こんな感じです。「ヒト」ノードンの入力に、「スティック」ノードンの上下と「ボタン」ノードンのBを加え、ヒトとリンゴの設定の「ふるまい」を設定します。

プログラム画面で「スティック」ノードンの上下と「ボタン」ノードンのBを加える
「ヒト」・「リンゴ」ノードンの設定画面で「ふるまい」を設定する。ヒトは「こわす」、リンゴは「こわれる」にしておけば、衝突時にリンゴが壊れる
プレイ画面

ゲーム作りをとにかく丁寧にナビゲートしてくれる!

 プログラム作りの基本的な考え方がわかったところで、ここからが「ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング」の本領発揮。シューティングやアスレチック、レースなど誰もが作ってみたくなるタイプのゲームが、レッスンとして7個用意されていて、すべて丁寧なステップバイステップで作り方を誘導してくれます。

ゲームはレッスン1から7まで難易度順に並んでいて1から順に終えると次のロックが解除される。レッスンをひとつ終えると確かめテストのような「チェックポイント」が追加され、これを終えないと次のレッスンに進めない

細かい操作を丁寧にナビゲートしながらも飽きさせない

 ゲームというのはシンプルなものでもけっこう大量な要素が組み込まれていて、ひとつのレッスンでゲームが完成するまでの道のりはけっこう長くかかります。ユーザーがやっていることを見失わないように、ほんのちょこっと作ってはプレイ画面で動かしてみるというのをとにかく徹底的に繰り返します。

 わざと一回失敗させたり、「これだけじゃちょっと簡単すぎる・難しすぎるね、じゃぁ次にこうしてみよう」という実感値を大切に先に進んでいくので、マニュアル通り作っている感覚ではなく、まさにタイトル通りナビゲートされている感覚です。

細かい操作を丁寧にナビゲートしてくれる。ステップ通り操作しないと先に進めないから間違える心配はない。疑問に思いそうなことは、たいていノードンとナビゲーターの会話で説明される。青い丸がナビゲーターのボブ。ノードンもそれぞれにキャラ設定にあった喋り方で自分の役割を主張する

 地道なステップで、完成に1時間以上かかるものもありますから、大人が先を急ぐ頭で取り組むと『概要はわかったから先に進みたい……』と思いそうになりますが、子どもがスイスイやっているのを見ると全然苦にならない様子。どうやら一手一手プログラムを積み上げていくのはゲームをプレイするのと同じような感覚のようです。

ゲームの完成度とプログラムの理解しやすさの両方を保つバランスが絶妙

 サンプルとして作成するゲームは、ゲームとしての完成度もしっかりあり、十分楽しめるレベルになります。

 今の子どもたちがプレイするゲームは3Dが当たり前なので、手軽に3Dのゲームが作れるのも魅力。使えるキャラクターの造形や、仕込まれている動きがいい感じに作り込まれているので、簡単なプログラムでもとてもゲームらしい動きをするので満足感が上がります。

レッスンのひとつ「コロコロボール」ゲームの完成プレイ画面。Switch本体の傾きを利用してボールを転がしリンゴをとるゲーム。点数カウントも実装

 とはいえ、1つのゲームを完成させるにはそれなりに複雑なプログラムが必要で大量の「ノードン」とワイヤーでプログラム画面が埋まります。ナビゲートされるままに進めていくと作り方を忘れてしまうので、あれはどうやったんだっけ……と思い出したいときは、学んだ小技がリスト化された「ノードンガイド」やリファレンスをあとで参照するといいでしょう。

「コロコロボール」の完成させるとこれくらいのプログラム量になる。場面転換がないゲームでもけっこうなプログラム量。壁やキャラクターなどの「モノ」は配置した場所がゲーム画面中の表示位置になる

 自分でもっと手をいれたくなる余地も残してあり、レッスンでは最後は自分流のアレンジをするように促されます。完成したゲームをコピーして再編、拡張してもいいですし、もちろんゼロから自分でオリジナルゲームをつくることもできます。

 一般的にプログラミング学習でゲームを題材にする場合、プログラムを理解しやすくするためにゲームの面白さや完成度を極端に下げるか、プログラム全体を理解させることはあきらめて完成度の高いゲームの一部のコードだけを触らせるか、のどちらかになる傾向があるのですが、ゲームの完成度とプログラムの理解の両方を保つバランスが絶妙なところに設定されていると感じます。エンディングの演出もちゃんと作ったりと、そういう手を抜きません。

プログラミング手法は「Nintendo Labo」から引き継がれている

 「ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング」のプログラム画面を目にしたとき、『あれ?これはあの「Nintendo Labo」とおなじ系譜だよね……』と思ったのですが、公式サイトの開発者インタビューを読むと、ばっちりそのあたりの背景が語られていました。

 「Nintendo Labo」はダンボール工作とSwitchで作ったプログラムで楽しいゲームや装置を作るコンセプトのゲームタイトル。なかでも「Nintendo Labo VR Kit」は3Dゲーム作りに特化しています。詳しくは以前「Nintendo Labo」を使った子ども対象のハッカソンイベントを取材した「こどもとIT」の記事を読んでいただくと、こうしたゲームプログラミングツールを手にした子どもたちのポテンシャルがわかります。

 ゲームのプレイだけでなく、裏の仕組みに興味を持って、ゲームとクリエイティブに関わって欲しいと思うお父さん&お母さん方は、「ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング」をお子さんと一緒に挑戦してみてはどうでしょうか? そして、お子さんが作ったゲームをたくさんプレイしてあげてください!

 なお、パッケージ版(税込み3,480円)にはアナログな「ノードンふりかえりカード」が付属しますから、会話しながらプログラムを考えたり画面から離れてプログラムの解説をしたりするときに便利です。ダウンロード版(税込み2,980円)を購入した場合はノードンカード(税込み500円)だけ追加購入も可能です。

キャラクターカードのように裏には役割などが記載されている
【はじめてゲームプログラミング 紹介映像】

 2020年度から小学校でプログラミング教育が実施されています。これに伴い家庭でも手軽にプログラミングを学習できるツールが多数登場していますが、どんなツールを使えばいいのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか? そこで本連載では家庭でのプログラミング教育にピッタリなお勧めツールを紹介していきたいと思います。