週末ゲーム

第544回

第五回“WOLF RPGエディター コンテスト”お勧め作品ピックアップ(前編)

「flamberge -フランベルジェ-」「Another Saviour」などRPGを5本紹介

第五回“WOLF RPGエディター コンテスト”結果発表ページ

 フリーのRPG制作ソフト「WOLF RPGエディター」で制作したゲームのコンテスト“WOLF RPGエディターコンテスト(ウディコン)”。毎回順調に参加者を増やしている同コンテストだが、第五回となる今年は87作品が応募され、投票者はついに1,000人を越える大盛況のイベントとなった。

 コンテストの参加作品は現在もダウンロードでき、すべて無償でプレイ可能。総合グランプリのほか、斬新さや物語性といった部門別のランキングも掲載されている。さらに、すべての作品にプレイヤーから寄せられたコメントが掲載されているので、コンテスト期間中にはプレイする暇がなかった、という人もこれらを参考に、自分好みの作品を探してみてはいかがだろうか。

 “週末ゲーム”では昨年の第四回に引き続き、筆者が趣味でピックアップした10作品をご紹介する。あくまで1プレイヤーの主観によるピックアップだが、作品選びのひとつの参考になれば幸いだ。前編となる今回は、それぞれ独自のコンセプトをもつRPGを5本取り上げる。

戦闘すればするほど評価が下がる!?新感覚のステージクリア型RPG「flamberge -フランベルジェ-」

「flamberge -フランベルジェ-」

 突如現れた未知の島へ挑む冒険者達を描いたRPG。全4章で1章ごとに1つのダンジョンを攻略していき、プレイ時間は1~2時間程度の短編となっている。各章をステージに見立てて章ごとにクリア評価が行われるのが特徴で、この際“あらかじめ提示された戦闘回数を超えると徐々に評価が下がる”のが大きなポイントだ。

 RPGの楽しみの1つに戦闘を繰り返してキャラクターを強化していくというものがあるが、本作はその対極にあるような作品。最低限の戦闘回数でボスに到達し、ギリギリの戦力でこれを撃破するのが目標となっている。戦闘によりキャラクターのステータスは向上するが、章が変わると章ごとの既定値にリセットされるという徹底ぶりだ。また、ダメージを受けると減っていく“スタミナ”の値と宝箱の取得数も評価に繋がるため、被ダメージを抑えて戦いつつ、効率的に探索することも重要となる。

 このような方式のため戦闘は当然シンボルエンカウントだが、章を進めるごとに敵シンボルの動きがすばやく、いやらしくなっていくため一種の“避けゲー”としての要素も。敵のシンボルには倒したときに手に入るもの(HP回復アイテム、スタミナを回復できる食料、一部の宝箱で必要になる鍵など)も表示されるので、必要なものを持つ敵を狙って戦うとよい。

 戦闘は敵、味方が入り交じって順次行動するCTB方式で、装備した武器ごとに設定されたスキルで戦う。スキルによっては強力な“派生技”が発動する仕組みで、発動率は戦闘中の行動で上がっていくが、スタミナを消費して“覚醒”することで一気に引き上げることも可能。

戦闘時は前列・後列の概念があり、それぞれ異なる武器とスキルを使うことが可能
各章クリア時に評価が表示される

 規定戦闘回数以内で進めた場合の戦闘バランスはなかなかシビアで、キャラクターによってはザコの一撃で戦闘不能になることも珍しくない。とはいえHP回復用のアイテムやスキルで戦闘不能から復帰できるほか、戦闘中に戦闘メンバーの入れ替えも可能。とくにボス戦では戦闘メンバーの役割分担やローテーション、覚醒を駆使した総力戦となるのがアツい。

 描き込まれたドット絵キャラクターがちょこまかと動くイベントシーンも見所。吹き出し風のメッセージウィンドウにより複数のキャラクターが同時にしゃべるなど、賑やかな内容となっている。戦闘中も決め台詞などが次々と表示され、バトルの臨場感やキャラクター同士の生き生きとした掛け合いが表現されるのも本作の魅力だ。

ちょこまかと動くキャラクターによるイベント演出も見所
口は悪いが不思議と愛嬌のある“パスピエ”など、キャラクターも魅力的

 一度クリアした章は何度でもやり直すことができ、この際ステータスは戻るものの入手した武器は引き継ぎ可能。高評価を目指してプレイするのが楽しい作品ではあるが、演出面でも光るものがあるので、まずは普通にプレイしてストーリーを堪能し、改めて目標を決めて再挑戦するのもアリだろう。戦闘や探索というRPGの面白さと競技性を絶妙に組み合わせた意欲作、RPGが好きならぜひ体験してみてほしい。

「flamberge -フランベルジェ-」
【著作権者】
katarazu 氏
【対応OS】
(編集部にてWindows 7で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.13

戦略性とキャラクターカスタマイズを極めた怪獣退治RPG「Another Saviour」

「Another Saviour」

 戦闘、キャラクターカスタマイズ共にユニークなシステムを多数搭載したRPG。昨年の第四回ウディコン参加作品「Princess Saviour(プリンセスセイバー)」の外伝的作品で、バリアのような魔法障壁“AFF”が肝となるCTBバトルや、パーティ共通で覚えたスキルを好きなキャラクターにセットできるスキルカスタマイズ、シンボルエンカウントのシンボルが透明化し不要なザコ戦を避けられるエンカウントキャンセルといったシステムを前作より引き継いでいる。

 本作の新システムとして特徴的なのは、キャラクターの戦闘スタイルを決める“スタイルセット”。スタイルによってステータスが大きく変動するほか、“攻撃時にHP・MP回復”など固有のボーナスもある。また、与えたダメージを“出血値”として蓄積し、特定のスキルで“開放”することで倍率をかけて追加ダメージにできる“アサシンギルド”や、“GP(ゴリラパワー)”を溜めて超強力な攻撃技を繰り出す“バトルオーガ”など、独自のシステムを備えたスタイルを使いこなすのも面白い。

 戦闘中の行動によってカウントダウンされていく“FP”が0になったときに発動する“エミッション”も本作のポイント。直後に再行動が可能となるほか、あらかじめセットした“ネコバッジ”というアイテムに応じてさまざまな特殊効果が発動し、一気に畳みかけたり、戦況をひっくり返す鍵となる。発動時のカットインも見所だ。

スタイルは随時切り替え可能
エミッション発動。セットしたネコバッジに応じてステータス向上や“ガードしながら行動”といった特殊効果など、さまざまな恩恵を受けられる

 前作から引き継いだ火・水・風という3つの属性による戦術も進化。RPGで属性というと、とかく敵の弱点を突くことに終始してしまいがちだが、本作ではすべてのスキルに属性があり、戦闘中に順次移り変わる場の属性“ZONE”とスキルの属性、敵の弱点属性が一致したときのみ弱点を突ける。一方、攻撃スキル以外でもスキルと場の属性が一致すれば、回復スキルなら対象の全体化などさまざまな恩恵を受けることが可能だ。

 ZONEがいつ、どのように変化するかは敵・味方の行動順と併せて表示されるため、FPの値も含め状況を先読みし、ときには様子を伺い、最高のタイミングで最適なスキルを放つのがバトルの醍醐味。“戦場の流れ”をRPGのシステムにうまく落とし込んだものと言えるだろう。

 ストーリーは、複雑な設定や伏線が絡み合う前作から打って変わって、『UMA(怪獣)の脅威により国家存亡の危機だ!倒せ!』という単純明解なもの。ダンジョンには通常のザコ敵のほかに特別なシンボルで表示される中ボス級のUMAが徘徊していることがあり、これを避けたとしても同じフロアのザコ戦中に乱入してくることも。さらにボス戦前には往年の特撮風の怪獣登場デモが挿入されるなど、強大なUMAに人類が立ち向かう様子が演出されている。

ザコ戦中の強制割り込みやボス戦前の怪獣登場演出など、UMAの脅威がこれでもかと描かれる

 また、「Another Saviour(アナザーセイバー)」の名の通り、本作のストーリーは「Princess Saviour」に対するifものという位置付けで、ある一点を機に歴史が大きく変わった世界が舞台。本作からでもプレイに支障はないが、前作で対決したキャラクターや救えなかったキャラクター達が異なる立場で登場し、前作をプレイしていると『ああ、こういう未来もあり得たのか』という感慨がある。本シリーズ未プレイで両方に興味があるなら、筆者としては「Princess Saviour」からプレイすることをお勧めしたい。

前作のキャラクター達が異なる形で登場
「Another Saviour」
【著作権者】
稲穂スタジオ
【対応OS】
Windows 2000/XP/Vista/7
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.09(13/08/13)

爽快バトルとやり込み要素を存分に詰め込んだ王道JRPG「アクアリウムス」

「アクアリウムス」

 突然変異により生まれ、世界の98%を支配している新人類“イボルバー”と旧人類が争う未来の地球を舞台としたSF RPG。ある事件により自分達の住む世界がイボルバーによる人間牧場“アクアリウム”の1つであることを知った少年“新九郎”とその幼なじみの少女“桔梗”が外の世界へと飛び出し、アクアリウムから人類を解放する戦いへと身を投じていく。

 本作の一番の魅力は、個性豊かなキャラクター達。外部から隔絶された世界であるアクアリウムはそれぞれ独自の文化を築いており、そこからやってきた人々の出自も現代日本風のサラリーマンから中世貴族まで幅広い。新九郎が所属することになる特殊部隊“Vanquish The Evolver”のメンバーや敵イボルバー達も、良くも悪くも覚悟が決まった人々ばかり。敵も味方も何かを勝ち取るため、あるいは守るために戦う王道ながら熱いストーリーが展開される。

ネタあり、熱い展開あり。豊富な会話イベントが用意されているほか、シナリオの見せ場ではイベント絵も

 戦闘はターン制のコマンド選択型。ポイントは特定のスキルが発動した際、続けて別のスキルを選んで1ターンに複数回攻撃できる“スキルコンビネーション”システムと、火・水・風・土・雷の属性をもつ特殊なスキルを一定の法則(基本は同じ属性の連続)により続けて発動することで、追加ダメージを与えることができる“属性チェーン”システムだ。

 チェーン数が多いほど追加ダメージはどんどん増えていくので、この2つを組み合わせることで敵を圧倒できる。チェーンが繋がった際のエフェクトも派手なものとなっており、強力なボスをパーティ総掛かりのチェーン攻撃でボコボコにするのはなかなか爽快。そのほか戦闘では、必殺技や連携攻撃のカットインも見所だ。

属性チェーンにより大ダメージ、さらにスキルコンビネーションで追撃ができる
特定の必殺技を2人で合わせて放つことで、連携攻撃に

 キャラクター育成の面では、ファイター、ウィザードといった職業を“サーキットデバイス”というデバイスを装備することで自由に変更できるのが特徴。キャラクターの経験値とは別に装備したデバイスの経験値が溜まっていき、レベルアップでスキルを覚えていく。サーキットデバイスはメインの他に追加でサブを1つ付けることができるが、こちらはレベルの上限がメインの半分までに制限される仕組み。

 サーキットデバイスはゲームを進めることで種類が増えていき、パラディンやビショップなど、いわゆる上位職にあたるものも登場。メインとサブの組み合により、たとえば“回復魔法もそこそこ使える盗賊”など自由度の高いキャラメイクが可能となっている。

 また本作は、メインシナリオの他に豊富なフリークエストが用意されており、達成することで経験値やお金、アイテムを入手できる。内容は主にアイテム集めで、入手方法はフィールドでの素材採取や釣り、合成など、今時のRPGらしいもの。とはいえSFという設定を活かしてクエストの受注と納品はどこでも可能だったり、一度行った釣り場と同じ魚が釣れる釣り堀が用意されるなど、煩雑になりがちな要素をなるべく減らすよう工夫がなされている。

豊富に用意されたクエスト。終了後にはアイテムの“クエスト辞典アプリ”から、ちょっとした後日談を読むこともできる
釣りはタイミングを合わせてボタンを押すミニゲームとなっている

 このように本作は、いまどきの日本のコンシューマーRPGにあるようなキャラクター演出とやり込み要素をこれでもかと詰め込みつつも、破綻せず、テンポを損ねないようまとめ上げた良作。公称プレイ時間は約20時間だが、筆者の場合すべてのクエストをこなしつつ全キャラクターをまんべんなく育てたところ、30時間以上たっぷり遊ぶことができた。ボリュームのあるRPGをじっくりと楽しみたい人にお勧めの一作だ。

「アクアリウムス」
【著作権者】
クリロウ 氏
【対応OS】
(編集部にてWindows 7で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.77(13/12/01)

探索と成長、バトルの楽しさを凝縮したサクサクRPG第二弾「影明かし」

「影明かし」

 サクサク進行し、2時間ほどのプレイ時間で探索とキャラクターの成長、戦闘というRPGの醍醐味を存分に味わえるRPG。本作は、2011年の第三回ウディコンの参加作品「武神の目覚め」のシステムを引き継ぎ、さらにプレイアビリティを高めた新作だ。なお、ストーリー上の繋がりはないため、本作からプレイしても全く問題ない。

 敵がマップ上に固定配置され戦うかどうかはプレイヤーの自由というエンカウントシステムに、触れるだけでどんどん中身を取れる宝箱、1ターンごとに武器を自由に持ち替えられる戦闘システムなどは前作同様だ。

 本作では大量のスキルが用意されているのが特徴で、とくにパッシブスキルが豊富。店で購入したり各地にあるクリスタルに触れることで覚えることができ、戦闘がどんどん有利になっていく。攻撃回数や与ダメージを一時的に増やせるアクティブスキルもあり、こちらはSPというポイントを消費するため使い所が重要だが、さまざまな条件でSPを回復させるパッシブスキルもあり、戦闘の爽快感は高い。

スキルを覚えてどんどん強くなる
スキルで攻撃回数を増やして敵に大ダメージを与え、さらにパッシブスキルでSPが回復するというサイクルが爽快

 また探索面でも、ダンジョンの当該フロアにある宝箱の数が常時画面に表示されたり(前作はメニューを開いたときに表示)、装備品を取ったその場で現在の装備と比較しながら入れ替えるかどうか決めることが可能など、とにかくストレスフリーな作りだ。さらに、鍵を取ったらその鍵で開けられる扉を一覧表示してワープ可能と、至れり尽くせりの内容となっている。

武器は攻撃回数や属性攻撃などさまざまな特徴があり、使い分けが楽しい
扉の位置へワープ。開けてない扉はハイライト表示されるという親切ぶり

 流石に親切すぎるかと思いきや、戦闘が避けられない敵の配置などはよく練られており、効率的なルートを考える楽しみがある。基本的に難易度は低めだが、効率重視でエンカウントを回避して進むとボス戦はなかなかの歯ごたえで、1ターンごとに装備変更やスキル、アイテムを駆使して最善手を探り、ギリギリの死闘を繰り広げるのが面白い。

 軽快なSEに、マップ、キャラクター共に細かく描き込まれたドット絵も魅力。クリア後には詳細なプレイリザルトがテキスト出力されるため、短時間クリアや縛りプレイにチャレンジするのも楽しいだろう。

「影明かし」
【著作権者】
Foomal 氏
【対応OS】
(編集部にてWindows 7で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.4

テンポのよいランダムダンジョンRPG「空仰ぐ迷宮」

「空仰ぐ迷宮」

 ランダム生成されるダンジョンを制覇していくRPG。手軽さと自由度のバランスが取れたキャラクターメイキングと、テンポの良い展開が魅力となっている。

 ゲームの流れは、最大4人の冒険者でパーティを組み、ランダムに生成されるダンジョンをひたすら登っていくというもの。特定の階は非ランダムのボスフロアとなっており、ボスを倒すことで物語が進むとともに次のフロアからはダンジョンの様相が一変するという、このジャンルのゲームとしてはオーソドックスな作りを採用している。

 特徴は、手軽に行えつつも、適度な自由度があるキャラクターメイキング。ファイター・メイジなど4つある職業はステータスが異なるほか、それぞれMPを消費せずに使える特殊スキルが用意されている。一方、通常のスキルは剣、弓、杖など装備する武器によって使えるものが変わる仕組みとなっており、職業による装備の制限などはないため、この組み合わせによってさまざまなタイプのキャラクターを作成することが可能だ。

 さらに、ダンジョンで宝箱から拾える装備品は、“守りの~”“正義の~”“軽い~”“絶対の~”といったさまざまな接頭語がついていることがあり、バラエティに富んだ性能をもつ。キャラクターの戦闘スタイルに合わせた装備を好きなように選べるというわけだ。

主人公に加え3人のキャラクターを自由に作成し、パーティを編成できる。キャラメイクは完全お任せも可能なほか、独自グラフィックの読み込みにも対応
どんどん拾える装備品から使うものを選ぶのが楽しい

 戦闘はシンボルエンカウントとなっており、ダッシュ移動に対応。ひたすら敵を避けながら進むことも可能だ。難易度は比較的低めだが、歯ごたえのあるボス戦が好みならザコ戦を避けまくり、装備だけ強化して挑むのも面白いだろう。

 プレイ時間は本編クリアまで2時間程度。ストーリーは、長きに渡り封印されていた謎の迷宮の探索・調査に向かう……という内容で、テンポの良い進行を阻害しない程度の簡易的なものだが、クライマックスではちょっとしたサプライズも。装備品を選ぶ楽しさ、どんどん強くなって先へ進んでいく爽快感を味わえる、ランダムダンジョンRPGの楽しさがコンパクトにまとまった作品だ。

「空仰ぐ迷宮」
【著作権者】
Aruba 氏
【対応OS】
(編集部にてWindows 7で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.07(13/08/31)

(中村 友次郎)