使ってわかるCopilot+ PC

第81回

NPU搭載だけれどCopilot+ PCじゃない『AI PC』はCopilot+ PCと何が違うのか?

Copilot+ PCのWebサイトより

NPUを搭載しているけれどCopilot+ PCではない?

 前回はCopilot+ PCの魂とでも言うべきNPUについて解説した。根本的なことながら、真面目に説明すると難しい話になるので、一般向けには『高性能なAI PC』として売り込めば十分だと筆者も思うが、テクノロジーに興味がある方はご一読いただければ。

 今回はもう1つ違う切り口として、NPUを搭載しているけれどCopilot+ PCではないPCについて話をしたい。NPUはCopilot+ PCで初めて登場したものだと思われている方もいらっしゃるかもしれないが、実際にはその数年前からNPUを搭載したPCは世に出ている。

 そういったPCに搭載されているNPUに価値はあるのか。またCopilot+ PCとの違いは何なのか。その辺りを解説していく。

Copilot+ PCは40TOPS以上の性能を持つNPUが必須

 Copilot+ PCの要件として、40TOPS(1秒間に40兆回の演算)以上の性能を持つNPUを搭載すること、とされているのはご存知だろう。そして世の中には40TOPS未満の性能しかないNPUを搭載した製品も存在する。

 Intel製のCPUだと、開発コードネーム「Arrow Lake」と呼ばれるCPU「Core Ultra シリーズ2」にもNPUが搭載されている。同社のデスクトップPC向けのCPUとしては初めてNPUを搭載しているのだが、性能は最大13TOPSで、Copilot+ PCの要件を満たさない。

「Core Ultra シリーズ2」にはNPUが搭載されているが、「Arrow Lake」のNPUは性能が最大13TOPSと低め(画像は「Core Ultra 9 285K」の情報)

 同じ「Core Ultra シリーズ2」でも、ノートPC向けに展開されている「Core Ultra 200Vシリーズ」、開発コードネーム「Lunar Lake」に限って、NPUの性能が最大48TOPSと高い。同じ「Core Ultra シリーズ2」の製品なのに、Copilot+ PCに対応できるものとできないものがある。

 ちなみに2026年から展開されている「Core Ultra シリーズ3」については、今のところ全て40TOPS以上のNPUを搭載すると発表されている。よって「Core Ultra シリーズ3」は全てCopilot+ PCに“対応可能”となるはずだ。

 なお「Core Ultra シリーズ2」以前にも、ノートPC向けのCPUではNPUを搭載しているものがある。それらも40TOPS未満の性能なのでCopilot+ PCにはなれない。

 AMDも同様で、製品名に「Ryzen AI」と入っているものは40TOPS以上のCPUを搭載しているが、それ以外の「Ryzen」シリーズには40TOPS未満のNPUを搭載しているものがある。Qualcommに関しては、「Snapdragon X」シリーズは全て40TOPS以上のNPUを搭載している。

40TOPS未満のNPUでも動かせる機能はある

 では、40TOPS未満のNPUに使い道はあるのだろうか。

 まず大前提として、40TOPS未満のNPUではCopilot+ PCに対応できない。本連載で紹介してきたCopilot+ PCの機能の多くは使用できない。

 しかし、一部のAI機能は使用できるものもある。例えば、PCのカメラ映像をリアルタイムに加工する「Windows スタジオ エフェクト」は、Copilot+ PCではないNPU搭載機でも使用できるものがある。

 対応可否は製品によって異なるので必ず使えるとは言えないが、「Windows スタジオ エフェクト」が求めるNPUの処理性能はそれほど高くはなく、10TOPS程度のNPUでも処理が間に合う機能が一部開放されている形だ。もし利用できれば、高品質な映像加工処理を低い消費電力で実行できるメリットがある。

「Windows スタジオ エフェクト」の一部機能が使える

 また、各社が独自に展開するAIツールは使用できることが多い。例えばIntelなら、Intel製のNPUに対応、またはOpenVINOという記述があれば、おそらく40TOPS未満のNPUでも動作する。

 NPUの性能がCopilot+ PCに比べて劣る分、処理速度が落ちる可能性はある。それでもCPUやGPUより高速・高効率に実行できたり、NPUがないと動作しない機能が使えたりといったメリットはある。対応ソフトはクリエイティブ系を中心に広がってきているので、気づかぬうちに恩恵を受けている方もいらっしゃるかもしれない。

Intel製NPUを活用するソフトの1つ「OpenVINO AI Plugins for GIMP」

Copilot+ PCにはスペックの最低保証がある

 さて、少し前に「Core Ultra シリーズ3」は全てCopilot+ PCに“対応可能”であると述べたが、“対応する”と断言しなかったことには意味がある。マイクロソフトが公開している、Copilot+ PCの最小システム要件にはこう書かれている。

・40TOPS以上の性能を持つNPUを備えたCPU
・16GBのDDR5/LPDDR5メモリ
・256GBのSSD/UFSストレージ
・その他、Windows 11の最低システム要件

 Copilot+ PCの要件はNPUの性能だけではない。16GB以上のメモリと、256GB以上のSSDかUFSを搭載することも求められている。最近のPCでこれを下回るものはあまりないが、昨今はメモリやストレージの高騰が著しく、安価な製品ではあえて8GBをベースにする機種も増えてくるかもしれない。

 しかしその場合、たとえ40TOPS以上のNPUを搭載する製品でも、Copilot+ PCの要件は満たせないことになる。今後、安価なCPUにも高性能なNPUの搭載は広がっていくはずだが、NPU以外の部分でCopilot+ PCの要件を満たさないものがないとは限らないので注意が必要だ。

 逆に言えば、Copilot+ PCを名乗っている限りは、メモリは16GB以上、ストレージは256GB以上が保証される。CPUも比較的新しいものに限られ、現時点では性能も比較的高い。Copilot+ PCにはあるスペックの最低保証が、Copilot+ PCではないNPU搭載PCにはない、というのも大きな違いと言える。

Copilot+ PCの要件。NPUだけでなく、一定の性能が担保されている
著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/