柳谷智宣のAI ウォッチ!
生成AIは脅威ではなく相棒だ! AIを24時間365日対応の最強家庭教師にして「リスキリング迷子」から脱出せよ
1日5分、スキマ時間から始めるAIリスキリング[後編]
2025年11月18日 09:00
「AIに仕事が奪われるのではないか?」
そんな漠然とした不安を抱えながら日々を過ごしているビジネスパーソンは多いのではないだろうか。テクノロジーの進化はあまりにも速く、昨日までの常識が今日にはもう通用しない。5年前に「AIが人間の仕事を奪う」などと言えば、映画の見すぎだと思われていたのに、いまでは現実になってしまった。
MetaやMicrosoft、Google、Amazon、Intelなどの大手企業でも、AIの活用を理由にリストラが進んでいる。人事やサポートセンターなどのバックオフィス部門だけでなく、ソフトウェア部門のプログラマーもコーディングAIの性能向上に伴ってリストラが行われている。
業界や職種によっては、これまでのキャリアプランのままだと先行きが怪しくなっている人もいるのではないだろうか。ライターである筆者も「ChatGPT」に相談したことがあるが、「何もしなければ、ライターとしての仕事量も単価も確実に目減りする」と、きつい答えが返ってきた。
いま注目すべき「リスキリング」、しかし現実は「リスキリング迷子」
こんな状況の中で「リスキリング(学び直し)」が注目されている。
しかし、現実は「何を学べばいいかわからない」「どこから手をつければいいのか見当もつかない」という状態で、そうこうしているうちに、日々の業務に追われ、時間は過ぎていく。これが「リスキリング迷子」だ。この迷子状態を放置することこそ、「AIに仕事を奪われる未来」を、自ら引き寄せてしまうことに他ならないのだ。
従来のリスキリングが挫折しがちなのは、第一に「時間がない」ことが挙げられる。本業を抱えながら新しいスキルを学ぶ時間を確保するのは至難の業だ。第二に「独学は孤独」。一人で学習を続けるモチベーションを維持するのは難しい。疑問点をすぐに解消できる相手もいない。そして第三に「金銭的コスト」。質の高い学習プログラムやスクールは高額になることが多い上、投資したコストに対して、昇給や転職などの明確なリターンが保証されていないことも、挫折してしまう理由になっている。
以前はこれらの問題を解決するハードルが高かったが、いまでは強力なツールが目の前にある。もちろん生成AIだ。多くの人はまだ生成AIを「調べ物ツール」あるいは「文章作成アシスタント」程度にしか捉えていないかもしれない。だが、それは生成AIの可能性のほんの一部に過ぎない。
生成AIを24時間365日対応の「キャリア戦略コンサルタント」に
生成AIは、以前から「税理士試験の問題を出してください。解答したら添削し、解説してください」などとプロンプトを工夫すれば、勉強にも活用できた。加えて、最近は「学習モード」という機能が登場した。前編では、ChatGPTの「学習モード」について紹介したが、Geminiにも「ガイド付き学習」機能が搭載されている。
迷うのはリスキリングの「中身」を決めることだろう。やみくもに流行のスキルに飛びついても時間と労力を浪費するだけ。「リスキリング迷子」から脱却する鍵は、生成AIを「キャリア戦略コンサルタント」として活用し、徹底的に戦略を練ることだ。
まずは自分を知ることが重要。生成AIと壁打ちして自分の強みを分析しよう。自分のこととはいえ、意外とわかっていないことや勘違いしていることがあるからだ。次に業界分析。これはAIにまかせてしまおう。その上で、リスキリングにお勧めのスキルをいくつか提示してもらって検討してみよう。
生成AIと会話しながら詰めていくのもよいが、例えば以下のプロンプトに自分の情報を入力し、一発で出力してもらうこともできる。
#自己分析
・現在の職業・職種: [(例)Webデザイナー、ライター、経理事務、プロジェクトマネージャーなど]
・経験年数: [(例)約5年]
・保有スキル(テクニカル): [(例)Photoshop、HTML/CSSの基礎、Pythonの基礎文法]
・保有スキル(ソフト): [(例)顧客折衝、チームリーダー経験、ロジカルシンキング、資料作成]
・私の強み(得意なこと): [(例)細かい作業を正確にこなすこと、新しいツールを覚えるのが早い、人と話すのが好き]
・私の弱み(苦手・避けたいこと): [(例)人前でのプレゼンテーション、高度な数学、マルチタスク]
・興味・関心がある分野: [(例)データ分析、AI技術の活用、UI/UXデザイン、サステナビリティ関連]
・(任意)キャリアの目標: [(例)転職して年収を上げたい、現在の会社でDX推進のリーダーになりたい、フリーランスとして独立したい]
STEP1 #自己分析の内容を元に、私の現在の「強み(活用すべき資産)」と「弱み(補うべき点)」を客観的に整理してください。また、私の経験・興味と、キャリア目標との整合性も評価してください。
STEP2 私の働いている業界・職種について、AIの影響で5~10年後の市場動向を分析してください。そして、分野で現在および将来的に、需要が最も高まると予測される「キースキル」を3~5つ特定してください。
STEP3 STEP1で分析した私の強み([AIが抽出した強み])と、STEP2で予測した未来([AIが予測した市場動向])を踏まえ、私がリスキリングすべき、スキルを優先度順に3つ提示してください。それぞれ、選定理由やメリット・デメリット、リスキリングにかかる時間、コストなどもまとめて、表組にしてください。
筆者が試したところ、出力されたのが以下の3つ。選定理由もメリットもきちんと提示してくれるので、ためになる。
- 生成AI活用・AIワークフロー設計(プロンプト+エージェント活用)
- データリテラシー+ライトなプログラミング(表計算+Python/SQL極めて基礎)
- パーソナルブランディング&デジタルマーケ(インフルエンサー的発信+案件獲得設計)
登る山(目標)が決まれば、あとは「登山ルート(学習計画)」を引こう。曖昧なロードマップだと、リスキリングが途中で挫折しやすくなるので注意すること。もちろん、これも生成AIに依頼すればよい。
例えば、Geminiの「ガイド付き学習」を有効にして「生成AIのビジネス活用についてリスキリングしたい」などと入力すればよい。具体的にどんな領域のスキルを身につけるかはコミュニケーションし、最後にロードマップを作ってもらおう。
今回は「3カ月間で」と指定したところ、1カ月目はプロンプトエンジニアリングの基礎、2カ月目はAIの選定と業務フローへの組み込み、3カ月目はビジネス利用のリスクと対策を勉強することとなった。
ロードマップが完成したら、いよいよ学習のスタートだ。生成AI家庭教師の最大の強みは、24時間365日、あなたの都合に完璧に合わせてくれることだ。「本業が忙しくて勉強時間が取れない」という人こそ、AIリスキリングが向いている。通勤中の10分、昼休みの15分といったスキマ時間を活用できるからだ。
従来のeラーニング教材はカリキュラムが固定されているが、生成AIなら「いまから10分で、昨日の学習内容の復習クイズを出して」といったリクエストにも即座に応えてくれる。気分に合わせて学習内容を変えることだってできる。
一人で学習を続けるのは精神的に辛いもの。特に、初歩的な疑問を誰にも聞けずにいると、モチベーションは一気に低下してしまう。その点、生成AIは頼れるメンターになってくれる。どれだけ初歩的な質問をしても、AIは決して馬鹿にしたり、見下したりしない。「中学生にもわかるように説明して」といった無茶ぶりにも、AIは根気強く、理解度に合わせて説明の仕方を変えてくれる。疑問点を即座に解消できるため、学習のつまずきを最小限に抑えられるのだ。
生成AIは脅威ではなく相棒だ
このように、AIの支援を最大限に活用してリスキリングを完遂することこそが、導入で触れたAIによる淘汰の波を乗りこえ、生き残る人材になるための戦略となる。
最初に述べた「AIに仕事が奪われる」という不安は、あながち間違いではない。正確に言えば「AIを使いこなせない人」の仕事が「AIを使いこなせる人」に奪われていくのだ。今後、ホワイトカラーの世界では「AIを相棒として使いこなし、自分の専門性と組み合わせて価値を増幅できる人材」の価値が高まることになるだろう。
生成AIの登場によってリスキリングのハードルは劇的に下がっている。かつては高額なスクールに通わなければ得られなかった知識やフィードバックが、いまや手のひらの上で、無料または安価に入手できる。生成AIは、あなたのキャリアを脅かす脅威ではなく、キャリア再構築を全力でサポートしてくれる「相棒」と考えよう。リスキリング迷子としてうろうろするのはもう終わりにして、すぐにChatGPTやGeminiを起動し、こう話しかけてほしい。
「いまのキャリアに漠然とした不安を感じているので、私の相棒として、これからのリスキリング戦略を一緒に考えてくれませんか?」
著者プロフィール:柳谷 智宣
IT・ビジネス関連のライター。キャリアは26年目で、デジタルガジェットからWebサービス、コンシューマー製品からエンタープライズ製品まで幅広く手掛ける。近年はAI、SaaS、DX領域に注力している。日々、大量の原稿を執筆しており、生成AIがないと仕事をさばけない状態になっている。
・著者Webサイト:https://prof.yanagiya.biz/
















![1冊ですべて身につくHTML & CSSとWebデザイン入門講座[第2版] 製品画像:3位](https://m.media-amazon.com/images/I/41DiWc47MYL._SL160_.jpg)






