クリエイターが知らないと損する“権利や法律”
ネットで拾った画像は利用できるのか
~第4章:無断で利用できる著作物を教えて!~
2016年8月9日 07:20
オンラインソフト作者に限らず、あらゆるクリエイターが創作活動を続けるために、著作権をはじめとして知らないと損する法律や知識はたくさんある。本連載では、書籍『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』の内容をほぼ丸ごと、三カ月間にわたって日替わりの連載形式で紹介。権利や法律にまつわる素朴な疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えする。
前回掲載した“〈コラム〉パブリック・ライセンスについて”の続きとして、今回は“ネットで拾った画像は利用できるのか”というテーマを解説する。
ネットで拾った画像は利用できるのか
著作物の利用に著作者の許可が必要ってことは、もしかして、インターネットに転がってる画像って勝手に拾っちゃダメなんです?
インターネットにアップロードされている著作物を『転がってる』とか『拾う』という表現は、あまりよろしくないですね。
落ちているわけではありませんから(ニコッ)。
ご、ごめんなさい……(笑顔怖いってば!)。
先ほど、違法にアップロードされている音楽や映像をダウンロードすると、刑事罰の対象になるという話をしましたね。
これは実は例外で、文章や画像、あるいは違法アップロードではない音楽や映像を、自分の楽しみのためにダウンロードするだけなら法的には問題ありません。
これを『私的使用のための複製』といいます。
著作権法30条(私的使用のための複製)
著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
1 公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合
2 技術的保護手段の回避(2条1項20号に規定する信号の除去若しくは改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うこと又は同号に規定する特定の変換を必要とするよう変換された著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像の復元(著作権等を有する者の意思に基づいて行われるものを除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。120条の2第1号及び2号において同じ。)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合
3 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合
(※ 2項は省略)
あ、そうなんだ! よかった……ハードディスクに貯め込んでた画像、削除しなきゃいけないかと思った。
どんな画像を貯め込んでいるかは、お情けで追求しません。
ただ、ダウンロードしたファイルを、勝手にアップロードしてはダメですよ。
公衆送信権侵害になってしまいます。
はーい、気をつけます。
条文にもあるように、私的使用の範囲は個人や家庭内に限られるので、例えば会社で資料をコピーするのは私的使用にはあたらないとされています。
ただ、現実問題として、会社内でのコピーなんて、日本中で毎日のように行われていると思いますけどね。
老眼の上司のために拡大コピーしてあげるのも、本来はダメなのですよ。
なんか理不尽な感じがしますね。
ただ、会社内コピーの場合などは、許可をまとめて簡単に取れる、日本複製権センターなどの仕組みも用意されていますね。
そして、著作者の許可が不要なケースは、他にもいろいろあります。
例えば先ほども少し説明した、非営利かつ無償の上演、演奏、上映、口述と、映画の著作物を除く貸与です。
著作権法38条(営利を目的としない上演等)
公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金(いずれの名義をもつてするかを問わず、著作物の提供又は提示につき受ける対価をいう。以下この条において同じ。)を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。ただし、当該上演、演奏、上映又は口述について実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合は、この限りでない。
4 公表された著作物(映画の著作物を除く。)は、営利を目的とせず、かつ、その複製物の貸与を受ける者から料金を受けない場合には、その複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。)の貸与により公衆に提供することができる。
(※ 2、3、5項は省略)
校内放送でCD流してもOKってやつですね。
そうです。あとは、写真の撮影や、録音、録画するときに、対象から分離するのが難しい著作物がちょっと入ってしまう程度なら問題ありません。いわゆる写り込みです。
著作権法30条の2(付随対象著作物の利用)
写真の撮影、録音又は録画の方法によつて著作物を創作するに当たつて、当該著作物に係る写真の撮影等の対象とする事物又は音から分離することが困難であるため付随して対象となる事物又は音に係る他の著作物は、当該創作に伴つて複製又は翻案することができる。
(※括弧書きと2項は省略)
自分の著作物に他人の著作物を『引用』する場合も、無断で利用できます。
もし著作物に『引用禁止』と書かれていたとしても、法的にはほぼ意味がありません。
ただし、どこから引用したか、出所を明示する必要がありますけどね。
著作権法32条(引用)
公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
(※ 2項は省略)
著作権法48条(出所の明示)
次の各号に掲げる場合には、当該各号に規定する著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。
1 32条、33条1項(同条4項において準用する場合を含む。)、33条の2第1項、37条1項、42条又は47条の規定により著作物を複製する場合
2 34条1項、37条3項、37条の2、39条1項、40条1項若しくは2項又は47条の2の規定により著作物を利用する場合
3 32条の規定により著作物を複製以外の方法により利用する場合又は35条、36条1項、38条1項、41条若しくは46条の規定により著作物を利用する場合において、その出所を明示する慣行があるとき。
そうか、引用って無断でできるんだ。
官公庁の資料などに、『引用禁止』ではなく『無断転載禁止』と書いてある場合は、ある限定的な効果があります。が、細かい話なので省きます。
あとは、新聞や雑誌に掲載された時事問題に関する論説の転載(39条)、政治上の演説(40条)、時事事件の報道目的で利用する場合(41条)なども、著作物を一定の条件で無断利用できます。
他にも、教育目的なら無断利用できる場合が多いです。
すべてを挙げている時間がないので、ここではこの辺りまでにしておきましょう。
意外と無断で利用できる場合って多いんですね。
次回予告
今回の続きとして次回は“引用したはずなのに怒られた”というテーマを解説する。
原著について
『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』
(原著:鷹野 凌、原著監修:福井 健策、イラスト:澤木 美土理)
クリエイターが創作活動するうえで、知らないと損する著作権をはじめとする法律や知識、ノウハウが盛りだくさん! “何が良くてダメなのか”“どうやって自分の身を守ればいいのか”“権利や法律って難しい”“著作権ってよくわからない”“そもそも著作権って何?”といった疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えします!