クリエイターが知らないと損する“権利や法律”
自動車の絵が描きたい
~第6章:表現の自由って、どれぐらい自由なの?~
2016年8月30日 07:20
オンラインソフト作者に限らず、あらゆるクリエイターが創作活動を続けるために、著作権をはじめとして知らないと損する法律や知識はたくさんある。本連載では、書籍『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』の内容をほぼ丸ごと、三カ月間にわたって日替わりの連載形式で紹介。権利や法律にまつわる素朴な疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えする。
前回掲載した“そうだ、ジャスコへ行こう”の続きとして、今回は“自動車の絵が描きたい”というテーマを解説する。
自動車の絵が描きたい
先生、確認なんですけど、実在する自動車の絵を漫画に描こうと思ったら、メーカーに許可取らなきゃいけないですよね?
無断で描けますよ。
自動車や服のように量産できる工業製品のデザイン形状は、原則として著作権ではなく『意匠権』で保護されます。
ところが、写真やイラストで平面に写しとる行為だけなら、意匠権の保護範囲ではないのです。
やった! じゃあ、遠慮せずどんどん描いちゃお。
意匠権も商標権と同じように、特許庁にデザインと分類を登録する必要があります。
意匠登録されたら、類似したデザインの製品を他社が生産すると、意匠権侵害になります。
2012年にアップルがサムスンを米国で訴え、巨額な賠償金の支払いを認める陪審員評決がされて話題になりましたが、そのほとんどは意匠権侵害によるものだったそうです。
あ、あれって特許権侵害じゃなかったんです?
特許権侵害もあったのですが、意匠権侵害の方が圧倒的に賠償額は大きかったようですね。
ただ、その後評決は見直され、アメリカ以外の国では和解が成立しています。
なるほど……。
ちなみに、物品の形状や構造に関するアイデアを保護するのは、実用新案権です。
すべりにくいグリップとか、マッサージ効果のある靴の中敷きとか。より便利になる工夫であればよく、特許ほど新規性は求められません。
ただし、保護期間は出願から10年間と、特許よりずっと短いです。
そうやって考えると、著作権の保護期間が死後50 年って、めちゃくちゃ長いですね……。
なお、知的財産権のうち、特許庁が所管になっている特許、実用新案、意匠、商標の4つの権利を『産業財産権』といいます。
どれも登録が必要なところが、著作権との違いですね。
次回予告
今回の続きとして次回は“芸能人の写真を使いたい”というテーマを解説する。
原著について
『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』
(原著:鷹野 凌、原著監修:福井 健策、イラスト:澤木 美土理)
クリエイターが創作活動するうえで、知らないと損する著作権をはじめとする法律や知識、ノウハウが盛りだくさん! “何が良くてダメなのか”“どうやって自分の身を守ればいいのか”“権利や法律って難しい”“著作権ってよくわからない”“そもそも著作権って何?”といった疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えします!