はんこレス実現への基礎知識

印鑑の電子化を始めるにはまず紙の電子化から!

はんこレスの実現例を知ろう

 本連載では、3月3日に発売された“脱はんこ”を実現するためのノウハウが身に付く書籍『できるはんこレス入門 PDFと電子署名の基本が身に付く本』から、“脱はんこ”の実現に必要となる基礎的な知識が身に付くレッスンを抜粋してお届けします。書籍ではさらに具体的に主要な電子署名サービスの利用方法などを細かく解説しているので、ぜひご購入ください。

 実際に「はんこレス」を導入してみましょう。本書では、環境や用途によって、機能を組み合わせられるように構成しています。自社にあった例で実践しましょう。

実現例1:紙のデジタル化から始める

 まずは、身の回りにある紙の文書をデジタル化することから始めましょう。シンプルに紙の文書をWordやExcelを使ってデータ化し、それを扱いやすいPDFへと変換します。文書がPDF化されれば、それを共有したり、クラウドストレージで保管したりすることが手軽にできます。いわゆるペーパーレスの実現ですが、デジタル技術で業務やビジネスを変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)の第一歩には欠かせません。

これまで紙で送っていた書類をPDFにする

実例2:PDFに電子印鑑を押印する

 PDF文書を日常的に扱っている環境では、PDF文書への押印に挑戦してみましょう。電子印鑑であれば、特別なサービスを使わなくてもPDFソフトや印影の画像ファイルだけで手軽に実現できます。社内で回覧する報告書や申請書などに自分の電子印鑑を押印したり、クラウドストレージで共有して、上司にも電子印鑑の押印を依頼したりしてみましょう。

電子印鑑なら、どこにいても押印ができる
【HINT!】押印をやめてしまうのもひとつの手

 デジタル化による業務効率のアップを目的にするなら、思い切って社内文書への押印をなくしてしまうのもひとつの選択です。身の回りの文書の棚卸しをして、押印が形式的な意味しかない文書は、思い切って押印を不要にしてしまうことで、本当に必要な文書への押印だけをデジタル化することができます。また、メールなどで文書の回覧と承認ができるワークフローシステムを使えば、文書を社内の特定の人に回覧し、誰が確認したか、承認したかを確認できるようにできます。押印は文書を見るだけで、誰が内容を確認したのか、承認したのかがわかります。こうした業務フロー全体の改善を視野に入れて、「はんこレス」の取り組みを進めましょう。

実例3:PDFを活用する

 PDFソフトの機能を活用して、デジタル化された文書をより扱いやすくしたり、セキュリティを強化したりしてみましょう。たとえば、有料版のAdobe Acrobatを利用すると文書に「社外秘」の透かしを入れたり、機密性が高い部分を塗りつぶしたり、印刷を禁止したりできます。電子印鑑の依頼をするときなどに、こうした機能を併用すると、より高いセキュリティを実現できます。

これまで紙で送っていた書類をPDFにする
【HINT!】PDFにタイムスタンプを押すには

 PDF文書がいつ発行されたものなのかを確認できるようにしたり、e-文書法の保管要件を満たしたりするには、前回のテクニックで説明したタイムスタンプが必要です。タイムスタンプはAdobe Acrobat(有料・無料とも)を使って、文書に付与できますが、そのためにはタイムスタンプサービスの契約が必要なため、敷居が高くなります。次で説明する実現例4のクラウド型電子署名サービスを利用したり、クラウド型の請求書発行サービスや会計サービスなどを使って、PDFに付与するのが簡単です。

実現例4:クラウド型電子署名サービスを使う

 契約書など、外部との本格的な契約で「はんこレス」で実現したいときは、クラウド型電子署名サービスを利用しましょう。クラウド型電子署名サービスを利用すると、自分の押印、相手への押印の依頼、契約状況の確認、契約後の文書の保管(タイムスタンプ付与)など、一連の手続きが手軽にできます。

本格的な契約ならクラウド型電子署名サービスを使う
【HINT!】マイナンバーカードでも電子署名ができる

 ローカル型(当事者型)の電子署名は、マイナンバーカードを利用することで実現できます。マイナンバーカードには、各人に固有の電子証明書が含まれているので、パソコンやスマートフォンのカードリーダーを利用して、電子証明書を読み込むことで、文書に電子署名をすることができます。本人性が高いため、行政手続きなどでも採用されていますが、マイナンバーカードやカードリーダーを用意する必要があるため、やや敷居が高く、あまり普及していないのが実情です。

段階的に導入してもいい

 ここでは「はんこレス」を実現するための4つの実現例を説明しました。『できるはんこレス入門 PDFと電子署名の基本が身に付く本』ではこれらのすべての方法を具体的に解説しています。自分の環境や自社の業務内容に合った方法を選んで手順を進めることで、誰でも「はんこレス」を実現できます。もちろん、実現例1から実現例2、3、4と、段階的に導入を進めるのもおすすめです。また、すでにPDF化などを実現している場合は、途中から導入を進めてもかまいません。