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小学生がマイクラでプログラミング! 子供向けプログラミング教育ツールのワークショップ

“第3回G7プログラミングラーニングサミット”レポート(前編)

 2017年8月22日、早稲田大学西早稲田キャンパス63号館において、“第3回G7プログラミングラーニングサミット”が開催された。

 本イベントは、早稲田大学グローバルソフトウェアエンジニアリング研究所および(株)フジテレビKIDSの産学協同プロジェクトとして、世界各国のプログラミング学習ツールを紹介し、それらのツール群を体験ならびに比較調査するために開催されているものであり、今回が第3回目の開催となる。

 今回は、一般社団法人みんなのコードが主催するプログラミング教育明日会議とP-kies Clubが主催する“ぼうしロボ”ワークショップも同時に開催された。ここでは、前編と後編の2回に分けて、体験・展示会の様子を中心にレポートする。

「Minecraft」や「ORANGE pico」などの子ども向けワークショップが開催

 “第3回G7プログラミングラーニングサミット”では、各種のプログラミング学習ツールを利用したワークショップが実施され、人気を集めていた。ワークショップが行われた学習ツールは、「ルビィのぼうけん」「Minecraft」「アーテックロボ」「PETS」「アルゴロジック」「ORANGE pico」の6つであり、電源を必要としないものから、パズルゲーム、ビジュアルプログラミング、物理ロボットまで多岐にわたっていた。対象年齢は小学校3年生~6年生であり、中にはキーボード操作やローマ字を読めるスキルが必要とされているワークショップもあった。ここではその中から、「Minecraft」と「ORANGE pico」のワークショップの様子を紹介する。

〇マイクラの世界の中でプログラムを作成してエージェントを操る

「Minecraft: Education Edition」を使ったプログラミングワークショップの様子

 「Minecraft」は、子どもに大人気のサンドボックスゲームであり、もともとはインディーズとして開発されていたものだが、マイクロソフトが開発元のMojangを買収し、幅広いプラットフォームで利用できるようになっている。「Minecraft」は、プログラミングとの親和性も高く、創造性や好奇心を刺激するソフトとして、教育の現場でも活用が進んでいる。今回のワークショップでは、通常版の「Minecraft」ではなく、教育用の「Minecraft: Education Edition」が利用された。「Minecraft: Education Edition」は、授業進行支援機能やWindowsやOfficeとの連携機能、教育用に準備された機能やブロック、アイテムなどが追加されたものであり、現時点では学校などの教育関係者しか利用できない。

 このワークショップでは、「Minecraft: Education Edition」用の拡張機能である「Code Builder for Minecraft: Education Edition」を利用して、プログラミングの学習が行なわれた。「Code Builder for Minecraft: Education Edition」により、「Minecraft」の世界で、“MakeCode”や“ScratchX”などを使ったプログラミング学習が可能になる。今回は、マイクロソフトのビジュアルプログラミング環境である“MakeCode”を利用して、「Minecraft」の世界の中のエージェントを操るプログラミングに挑戦した。

「Code Builder for Minecraft: Education Edition」のビジュアルプログラミング環境“MakeCode”を利用してプログラミングを行なった
画面に表示されているエージェントの行動をプログラミングする

 参加者の多くが「Minecraft」を知っていたが、「Minecraft」でプログラミングをしたことがある人はわずかであった。“MakeCode”は“Scratch”などと同じく、ブロックを並べてプログラミングするため、キーボードのタイピングが苦手な子どもでも気軽にプログラミングができることが特徴だ。今回のワークショップでは、タッチパネルを備えた2in1 PCを利用しており、指先で画面をタッチすることでもプログラミングができるので、ハードルはさらに低くなる。

“MakeCode”は、Scratchなどと同じく、ブロックを並べてプログラミングを行なう
タイピングが苦手な子どもでも、マウスやタッチパネルを使ってプログラミングが可能だ

 まず、基本としてエージェントを動かすプログラムを作成した後、エージェントにブロックを置かせるプログラム、さらに繰り返し命令を使って任意の個数のブロックを並べていくプログラムなどを作成した。「Minecraft」の世界の中で、プログラムを作成してエージェントを操るというのは、子ども達にとってもとても楽しい体験だったようで、歓声をあげる子どももいた。

 後半では、条件分岐命令を使って、よりインテリジェントな動作をエージェントにさせるプログラムの説明も行われた。子ども達は、このワークショップを通じて、プログラミングの楽しさや、プログラミングの力を十分に理解したようだ。

〇プログラミング学習向けマイコンボード「ORANGE pico」で本格プログラミング

こちらは、「ORANGE pico」を使ったプログラミングワークショップの様子

 「ORANGE pico」は、ピコソフトが開発したプログラミング学習向けマイコンボードである。キットでは2,000円前後で販売されている低価格な製品だが、キーボードとディスプレイを接続するだけで使え、ORANGE BASICと呼ばれるBASIC言語でプログラミングが可能である。ORANGE BASICは、多次元配列や、文字列、実数演算、数多くの関数、グラフィックスなどをサポートした本格的なBASICであり、実用的なプログラムの作成が可能だ。

PICマイコンを利用した「ORANGE pico」。ORANGE BASICと呼ばれるBASIC言語でプログラミングできる
キーボードと電源、ディスプレイを接続するだけで利用できる

 ワークショップでは、小型キーボードと小型ディスプレイが接続された「ORANGE pico」を使って、BASICによるプログラミング入門が行なわれた。まず、行番号をつけずに、直接命令を入力して、その結果が反映されるダイレクトモードの説明が行なわれ、キーボードからの入力にある程度慣れたら、プログラムモードでの行番号をつけたプログラムの作成に移行した。キーボードからの文字入力にやや手こずる子もいたが、講師やアシスタントの指導の下、for~next文の繰り返しやif then文の条件分岐を利用した数あてゲームのプログラムの作成にチャレンジしていた。

キーボードからの文字入力にやや手こずる子どももいたが、なんとか課題をこなすことができていた
最初はダイレクトモードで操作を行ない、後半はプログラムモードで行番号を付けたプログラムを作成した

展示・体験ブースにも多くの子ども達が詰めかけていた

ホワイエに設けられた展示ブース。各種のプログラミング学習スペースが展示されており、実際に体験できるようになっていた

 ホワイエには、展示・体験ブースが設けられており、ワークショップと同じ6つのプログラミング学習ツールを実際に体験できるようになっていた。こちらはワークショップとは異なり、事前の申し込みは不要なので、子ども達もいろんなツールを楽しんでいた。

 (株)for Our Kidsが展示していた「PETS」は、木製のブロックをはめ込んで、ロボットの動きをプログラミングする教材であり、PCやインターネット接続環境が不要なことが利点だ。特に小さな子どもの人気が高かった。

(株)for Our Kidsが展示していた「PETS」。木製のブロックをはめ込んで、ロボットの動きをプログラミングする教材だ
このように、手でブロックをはめ込むだけなので、未就学児でも十分遊べる
【「PETS」の動作の様子。爆弾を踏まないようにして、ケーキをとってゴールまでいけばクリア】
「PETS」が動作動作する様子(“第3回G7プログラミングラーニングサミット”レポート)

 JEITAが開発した「アルゴロジック」は、プログラミングの基本であるアルゴリズムを学べるパズルゲームであり、タブレットでも動作するので気軽にプレイできる。

JEITAが展示していた「アルゴロジック」。プログラミングの基本であるアルゴリズムを学べるパズルゲームだ
「アルゴロジック」はWebアプリとして動作する。タッチパネルとの相性もいい

 プログラミング学習向けマイコンボード「ORANGE pico」を展示していたピコソフト(株)は、ORANGE BASICの解説書「初めてのオレンジベーシック」を配布していた。キーボードで入力を行なう昔ながらのBASICだが、子ども達には新鮮にうつるようで、タートルグラフィックスなどを楽しんでいた。

ピコソフト(株)が展示していた「ORANGE pico」。会場では30%OFFの2,000円(税込み)で販売されていた
「ORANGE pico」の標準モデル「ORANGE pico type A」
こちらは上位モデルの「ORANGE pico type D」。デュアルCPU搭載で、USBキーボードやUSBメモリなどを利用できる
「ORANGE pico」は、プログラムを8個まで保存できる。タートルグラフィックスもサポートしている

 そのほか、(株)アーテックは、プログラミング可能なロボット教材「アーテックロボ」を、日本マイクロソフト(株)は、「Minecraft: Education Edition」を展示しており、こちらも興味を持った参加者が熱心に質問している姿が見られた。

(株)アーテックは、ソニーのKOOVのベースとなった「アーテックロボ」を展示していた
日本マイクロソフト(株)は、「Minecraft: Education Edition」のデモを行なっていた