トピック

PCの画面を見続けると目が疲れる……PCの作業効率低下を解決する方法を考えてみた

やっぱり「外付けディスプレイ」が最強?

13.3インチの一般的なノートPC(Prestige 13 Evo A12Mシリーズ)でExcelの画面を表示した。解像度はWUXGA(1,920×1,200)だ。慣れたサイズ感だが、どうしても「文字を大きくして見やすくする」か「文字を小さくして情報量を増やす」の2択になる。

文字を大きくしたいが、情報量も増やしたい……

 いつも使っているノートPCは小型・軽量で持ち運びはラク、処理速度にも満足している人。あえて不満をあげるとしたら? 「文字が小さい」「画面が狭い」などと答えるのではないだろうか。

 携帯性を優先したノートPCでは、13~14インチのディスプレイが主流、解像度はフルHD(1,920×1,080)~WUXGA(1,920×1,200)が多い。

「拡大鏡」を使えば一部分の表示を見やすくできるが………

 画面は結構広いともいえるが、「長時間使っていると目が疲れるので文字を大きくしたい」と思う人も多いはず。しかし、そうしてしまうと、画面に表示される情報量が減り、作業効率が落ちてしまう。つまり、「文字を大きくして見やすくする」か「文字を小さくして情報量を増やす」の2択になる。

 そこで今回は、「移動中は我慢できても、長時間のリモートワークにおける作業効率の低下は回避したい。小さい文字も、狭いディスプレイも嫌」というワガママな人向けに解決法をいくつか紹介しよう。

13.3インチのノートPCとModern MD272QXPW。ここまで画面が広くなる

 先に言ってしまうと、根本的な解決方法は「大画面の仕事用ディスプレイの導入」になる。しかし、いざ購入するとなると迷うと思う。

 そこで今回は、MSIのディスプレイModern MD272QXPW(以降、MD272QXPW)を例に、最新のビジネス向けディスプレイの機能や使い勝手も紹介していきたい。

最新ディスプレイには姿勢矯正機能や、疲労を確認できる機能があるものもある
USB Type-C接続で利用できるKVM機能も
目次
  1. まずは知っておきたい「画面表示を見やすくする機能」……拡大縮小や虫眼鏡など
     - Windowsによる「拡大縮小とレイアウト」
     - デスクトップを切り替えて使う「仮想デスクトップ」
     - OfficeアプリやWebブラウザーで使える表示倍率の変更
     - 画面の一部を拡大する「拡大鏡」
  2. 「外付けディスプレイ」で根本解決
     - まずは「大きさ」と「解像度」
     - スムースに調整できる「高さ」「傾き」「回転」
     - 姿勢を矯正できる「ベストポジションを探れる機能」
     - 休憩の目安も確認「アムスラーグリッド」「乱視確認」
     - 「目に優しい」基本仕様、ノングレアパネルや100Hz
     - 入力はUSB Type-Cなど3系統、給電も可能
     - KVM機能まで搭載、キーボード・マウス・ディスプレイを切替OK
     - “パソコン感薄め”な仕事用ディスプレイ
  3. 自分に合うディスプレイを選ぼう
  4. 「仕事環境」をどう改善していくか?


まずは知っておきたい「画面表示を見やすくする機能」拡大縮小や虫眼鏡、仮想デスクトップなど……

 まず、手元のノートPCで利用できるディスプレイ関連の機能を見直しておこう。Windows標準の機能では[設定]画面から変更できる「拡大縮小とレイアウト」や「仮想デスクトップ」がある。

Windowsによる「拡大縮小とレイアウト」

 Windowsの機能である表示スケールの変更機能。多くのソフトの表示サイズをまとめて変更できる。倍率を上げれば見やすく、倍率を下げれば画面を広く使える。

デスクトップ上の何もないところを右クリックして[ディスプレイ設定]を選択する。[拡大縮小]では、表示する項目の“倍率”を変更できる。「150%」や「125%」が推奨設定されていることも多い。

デスクトップを切り替えて使う「仮想デスクトップ」

 仮想デスクトップを使うことで、1枚の画面に対し、複数のデスクトップを切り替えて使うことができる。キー操作で切り替えできるので、慣れると便利だ。「同時に見る」とか「広く俯瞰する」のではなく、「切り替えて使う」なら便利な解決法といえる。

複数のウィンドウを開いた状態。[Windows]+[Ctrl]+[D]キーを押すと、「新しいデスクトップ」を追加できる。[Windows]+[Tab]キーを押してタスクビューから追加してもいい
「新しいデスクトップ」(仮想デスクトップ)が追加されて切り替わる。[Windows]+[Ctrl]+[←]/[→]キーで切り替え可能。例えば「デスクトップ1」は、Webブラウザーやメーラー専用、「デスクトップ2」は、ExcelやWordの作業用といった使い方ができる

OfficeアプリやWebブラウザーで使える表示倍率の変更

 ExcelなどのOfficeアプリや、Webブラウザーなら、[Ctrl]キーを押しながらマウスのホイールを手前に回すと、表示倍率を下げて表示範囲を広げられる。

マウスホイールを手前に回せば、表示倍率を下げられる

画面の一部を拡大する「拡大鏡」

 画面の一部を[拡大鏡]で大きく表示するテクニックもある。[Windows]+[+]キーで[拡大鏡]を呼び出せる。終了する場合は[Windows]+[Esc]キーを押す

[Windows]+[+]キーで[拡大鏡]を呼び出せる。終了する場合は[Windows]+[Esc]キーを押す


「外付けディスプレイ」で根本解決最新モデルなら「姿勢の改善」から「疲労の確認」まで様々な機能が……

 ソフト的な対処法をいくつか紹介したが、「俯瞰して見たい」「文字も見やすく大きくしたい」を両立させる解決策は「外付けディスプレイの導入」だ。

 そこで今回は、最新の「ビジネス向けディスプレイ」を紹介していきたい。

 単に「画面が広くなる」のはもちろんだが、最新モデルなら「姿勢を改善するための機能」や「目の疲労を軽減する機能」、さらには「目の疲れ具合を確認する機能」「複数のPCを便利に使う機能」まで、実に様々な機能が用意されており、「オマケ機能がちょっとついている」のではない製品もある。

 今回紹介したいのは、そうした「ビジネス向けディスプレイ」としてMSIが発売している高機能モデル MD272QXPW(27インチ、WQHD(2,560×1,440))。MSIは、世界有数のマザーボードやビデオカードの製造元でもある台湾メーカー。ゲーミングPCやeスポーツの分野でも定評のある企業だ。

 以下、基本となる「大きさ」「解像度」から順に紹介していこう。

まずは「大きさ」と「解像度」

 今回は「自宅用」を想定しているが、自宅用では、あまりゴツいものは選びたくない人が多いだろう。

 目立たない色で、ベゼル(枠)も薄いほうがスマート。ついでにPC以外のゲーム機やストリーミング機器なども接続できると嬉しい。

ノートPCとModern MD272QXPWの接続例。このディスプレイは27インチなので、ノートPCが小さく見えるほど。画面がとても広く、見やすく使える。27インチは設置場所を考えると意外に現実的。

 ディスプレイの性能を比較する際、解像度が注目されるが、数字が大きければいいというわけでもない。また、設置場所を考えると、自宅用には27インチ以下のサイズが現実的だ。

 高解像度の4K(3,840×2,160)で、27インチの場合、文字が小さすぎて事務作業には向かない。小型ノートPC&高解像度ディスプレイと同じ状況になる。結局、解像度を下げて使うことになるはずだ。

 27インチで、ちょうどいい解像度となると、4Kと同じアスペクト比のWQHD(2,560×1,440)だろう。フルHD(1,920×1,080)の約1.8倍の情報量を表示できる。MD272QXPWはベストな解像度と言える。

 ノートPCの文字サイズと同じになるように表示倍率を調整しても、WQHD(2,560×1,440)の解像度なら表示範囲は広い。見やすい文字サイズで俯瞰できることもメリットだ。

 また、MD272QXPWは、一般的なノートPCよりも画面を明るく、くっきり表示できる。これは、明るさやコントラストの設定範囲も関係するが、アンチフリッカー機能とノングレアパネルの恩恵でもあるだろう。

【見やすい文字サイズで俯瞰できる】
見やすい文字サイズに設定しても、画面が大きいと、これだけの情報量を表示できる。
ノートPCでの表示範囲。大きな表を扱う場合は効率が悪い
同じ文字サイズの表をMD272QXPWで表示した。かなり表示範囲が広くなる
MD272QXPWの解像度は、WQHDと呼ばれる「2,560×1,440」ピクセル。適切な文字サイズで作業できる
27インチのMD272QXPWは実用的なサイズだ。画面の幅は約61.4cm
画面の高さは約36cm

スムースに調整できる「高さ」「傾き」「回転」

 目の疲れや肩こりを軽減するためには、ディスプレイの設置位置は重要だ。

 MD272QXPWは、画面の高さ、傾き(チルト)、左右の回転(スイベル)の3つをスムーズに調整できる。

画面の高さは、0~11cm、傾き(チルト)は、-5~20度、左右の回転(スイベル)は、-30~30度に調整可能

 また、-90~90度で画面の方向を動かせる「ピボット」にも対応。縦に長いWebページやPDFファイルなどの閲覧時には便利だ。

姿勢を矯正できる「ベストポジションを探れる機能」

 一般的にディスプレイは正面、背筋を伸ばして画面上部に視線を合わせた場所が適切と言われるが、何となく調整していることが多い。高さや傾きに悩んだ時は「Eye-Q Check機能」が便利だ。

 「姿勢矯正」はメニュー名通り、ベストポジションを探れる機能だ。表示された“目”のアイコンが正面になるようにディスプレイの高さと角度を調整することで、ベストポジションを確定できる。

「姿勢矯正」の画面。“目”のアイコンが正面になるようにディスプレイの高さを調整する
ディスプレイ下部の[M](Menu)ボタンからメインメニューを呼び出せる。矢印ボタンと[E](Enter)ボタンを使って[プロフェッショナル]-[Eye-Qチェック]の順に選択する

休憩の目安も確認「アムスラーグリッド」「乱視確認」機能

 「Eye-Q Check機能」では疲労度チェックも行える。

 「アムスラーグリッド」と「乱視」がそれで、それぞれグリッド線と放射状の線が表示される。ぼやけて見える場合は20分ほど休憩したほうがよい、とのこと。

 なお、このグリッドはディスプレイの水平・垂直の確認にも使える。

「アムスラーグリッド」の画面。片目を隠して中央の黒い点を見て、グリッドが波打ったり、ぼやけたりする時は休憩の目安とのこと
「乱視」の画面。放射状の線を片目で見て、一部の線がほかの線より灰色に見えた時は休憩の目安とのこと

 ディスプレイ右下にあるボタンの配置は以下の通り。矢印ボタンと[E](Enter)ボタンを押した時の動作はカスタマイズ可能だ。

[M](Menu)ボタン(①)でメインメニューを呼び出す。[左](②)[右](③)で項目を選択、[E](Enter)ボタン(④)で決定する。項目のキャンセルは[M](Menu)ボタンを押す。右端の電源ボタン(⑤)は「スタンバイ」にも変更できる
メインメニューを表示して、矢印ボタンで[Naviキー]を選択。「入る」は[E](Enter)ボタンの意味。標準で、ディスプレイ内蔵スピーカーの音量調節が割り当てられている。[左]は[モード]、[右]は[入力源]が割り当てられている。3つのボタンに割り当てる機能はカスタマイズ可能だ

「目に優しい」基本仕様、ノングレアパネルや100Hzのリフレッシュレートなど…

 MD272QXPWは、高精細で視野角の広いIPSパネルを搭載。アンチフリッカーとハードウェアブルーライトカット機能で色味の変化を抑える。ドイツの技術、安全に関する認証企業TÜV Rheinland(テュフ・ラインランド)から低ブルーライト認定、フリッカーフリー認定も受けている。さらに、ノングレアパネルで光の反射や映り込みが少なく見やすい。ディスプレイの機能によって、目の負担軽減が期待できる。

 表示するコンテンツや環境に応じて設定できるモードは豊富。各モードは[左]ボタンからすぐに切り替え可能だ。

モードは[左]ボタンから呼び出せる。動画なら「ムービー」、事務作業なら「オフィス」などと、手軽に切り替えられる

 リフレッシュレートが100Hzに対応していることにも注目したい。一般的な60Hzと比較して、画面スクロール時などで残像が残りにくく滑らかに表示できる。一般的な事務作業でも、画面のちらつきが抑えられるため目に優しい。なお、映像を表示する速度を表す応答速度(MPRT)は、4ms(ミリ秒)だ。一般的な用途で不満に感じることはないだろう。

高性能なグラフィックボードを搭載しているPCなら、接続先のMD272QXPWにリフレッシュレート「100Hz」で表示可能。設定中のリフレッシュレートはメインメニューから確認できる

入力はUSB Type-Cなど3系統、給電も可能

 MD272QXPWの入力ポートは、USB Type-C、HDMI、DisplayPort(DP)の3つ。最大3台のデバイスを接続して切り替えられる。入力源はディスプレイ右下にある[右]ボタンからすばやく切り替えられる。

 例えば、自宅のデスクトップPCをDisplayPort(DP)、ゲーム機やストリーミング機器をHDMI、ノートPCをUSB Type-Cに接続といった使い方ができる。もちろん、USB Type-Cポートは給電対応。映像出力と給電可能なUSB Type-C端子のあるノートPCなら、USB Type-Cケーブル1本で、ディスプレイの接続と電源の供給が行える。

 また、後述するKVM機能を使うことで、キーボードとマウスも接続できる。ここまで使いこなすと、USB Type-Cケーブル1本で、ディスプレイ、キーボード、マウス、電源のすべてをまかなえることになる。

MD272QXPWのポート。①電源 ②USB Type-C ③HDMI ④DisplayPort(DP) ⑤ヘッドフォンジャック ⑥USB 2.0 Type-Bアップストリーム(同梱のUSBアップストリームケーブルでPCと接続すると、⑦USB 2.0 Type-Aが利用できるようになる) ⑦USB 2.0 Type-A

 また、MSIが提供するProductivity Intelligence(P.I.)というアプリを使うと、PCからディスプレイの設定を変更できる。ディスプレイに関する設定を任意のショートカットキーに割り当てられる。

KVM機能まで搭載、キーボード・マウス・ディスプレイを切替可

 前項で軽く触れたが、この製品は、KVM(Keyboard, Video, Mouse)スイッチ機能を備えるのも特徴だ。ディスプレイの入力源の切り替えと連動して、キーボードとマウスの制御も切り替えられる。

 作業スペースが少ない場合や、愛用のキーボードとマウスをいつも使いたい時に便利だ。

 デスクトップPCからキーボードとマウスを取り外して、MD272QXPWのUSB 2.0 Type-Aポートに接続しておく。同梱のUSBアップストリームケーブル(USB 2.0 Type-B)でデスクトップPCと接続すると、MD272QXPWを経由してキーボードとマウスが動作するようになる。ノートPCとはUSB Type-Cケーブルで接続する。

【2台のPCを接続した例】映像出力対応のUSB Type-Cケーブル(①)でノートPC、HDMIケーブル(②)でデスクトップPCに接続している。MD272QXPWに同梱のUSBアップストリームケーブル(③)でデスクトップPCと接続する。USB 2.0 Type-Aポートには、キーボード(④)とマウス(⑤)を接続する

 さらにデスクトップPCとノートPCの両方に、Productivity Intelligence(P.I.)というアプリをインストールし、KVMの設定は「自動」にしておく。入力源の切り替えにショートカットキーを割り当てることもできるので、KVMがさらに便利に使えるだろう。

2台のPCを接続した例。[右]ボタンから入力源をすばやく切り替えられる
Productivity Intelligence(P.I.)からディスプレイの設定を変更できる。画面右上の[設定](歯車のアイコン)からショートカットキーを登録可能だ。ただし、ディスプレイを検知するには、USBアップストリームケーブルで接続する必要があることに注意。
入力源の切り替えショートカットとして、[Shift]+[Ctrl]+[→]を割り当てた例
KVMの設定は「自動」にしておく

“パソコン感薄め”な「仕事用ディスプレイ」

 MD272QXPWは、MSIの「ビジネスモニター」ラインナップのひとつだが、“パソコン感”が薄いところも評価したい。リビングに置いてあっても違和感がない。

リビングにあっても違和感はない。USB Type-C経由の給電ポートとしても使える

 白色で主張しない割に高スペックだ。複数の入力ポートが用意されているので、普段はストリーミング機器を接続しておき、リモートワーク時だけ外付けディスプレイとしても使うのもいい。文字がにじみがちな液晶テレビより有用とも言えるだろう。


サイズなどの異なるモデルもアリ

Modern MD2712PW。27インチ、フルHD(1,920×1,080)、IPSパネル搭載。アンチフリッカー、ブルーライトカット、ノングレアパネルを搭載。入力ポート:HDMI×1、USB Type-C×1。リフレッシュレート100Hz対応、応答速度(MPRT)1ms

 MD272QXPWはMSIの公式ストアで、税込み39,380円(本稿執筆時点)。高いスペックとスマートな外観を考えると、決して高くはないと思う。

 もっと価格を抑えたラインナップもある。フルHD 27インチのModern MD2712PW、フルHD 24インチ白色のModern MD2412PWと黒色のModern MD2412Pだ。これらの製品はKVM機能こそないものの、ポジションの調整機能やEye-Q Check機能を搭載。画面も十分広いので、価格や設置場所にあわせて選ぶのもいいだろう。

Modern MD2412PW。24インチ、フルHD(1,920×1,080)、IPSパネル搭載。アンチフリッカー、ブルーライトカット、ノングレアパネルを搭載。入力ポート:HDMI×1、USB Type-C×1。リフレッシュレート100Hz対応、応答速度(MPRT)1ms。
Modern MD2412P。24インチ、フルHD(1,920×1,080)、IPSパネル搭載。アンチフリッカー、ブルーライトカット、ノングレアパネルを搭載。入力ポート:HDMI×1、USB Type-C×1。リフレッシュレート100Hz対応、応答速度(MPRT)1ms。Modern MD2312PWの色違いで、ベゼルカラーがブラックだ。


「仕事環境」をどう改善していくか?

 以上、ソフトウェア、ハードウェアの両面での対策を紹介してみた。

 ソフトウェア的な対策はコストがかからない反面、物理的な条件が変わらないため、どうしても「付け焼刃」になりがちだ。一方の外付けディスプレイはコストや設置場所がかかるといった条件もあるが、より根本的な解決になる。

 個々のユーザーによって変わってくる条件にあわせて、最適な解決策を検討していってほしい。