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Adobe、「Flash Player」の更新と提供を2020年末で終了

Webブラウザーの各ベンダーもFlashの廃止ロードマップを発表

Adobe社のリリース

 米Adobe Systems Incorporatedは25日(現地時間)、「Adobe Flash Player」の更新と提供を2020年末で終了する計画を明らかにした。 Apple、Facebook、Google、Microsoft およびMozillaなどのベンダーと協力しながら、「Adobe Flash Player」の段階的な廃止と既存コンテンツの移行を進めるという。

 「Adobe Flash Player」は、まだWebで静的コンテンツが主流であった黎明期に、ゲームやビデオといった動的コンテンツをオンラインで配信するためのWebブラウザープラグインとして誕生した。

 しかし、近年ではHTML5、WebGL、WebAssemblyといったオープンなWeb標準技術が成熟しつつあり、これまで「Flash」が必要とされていたコンテンツのほとんどが、プラグインなしで実現できるようになっている。その一方で、古い「Flash」プラグインがWebブラウザーの動作速度や安定性、セキュリティの面で悪影響を及ぼすことが懸念され、各ブラウザーベンダーは「Flash」プラグインをブロックし、ユーザーの許可があるまで動作させない仕組みを各自に導入していた。

 また、Adobe自身も2015年にFlashオーサリングソフト「Flash Pro CC」に代えて、HTML5オーサリングも視野に入れた「Animate CC」を投入するなど、脱「Flash」を進めていた。

 なお、Adobeは2020年まで「Adobe Flash Player」のサポートを継続することを約束している。これには定期的なセキュリティパッチの提供、OSやブラウザーとの互換性の維持、必要に応じた機能の追加などが含まれるとのこと。

 また、今回のAdobeの発表に歩を合わせて、各ベンダーも「Flash」サポートのロードマップを発表している。

Apple(Safari)

 もともとAppleはiOSで「Flash」をサポートしていない。デスクトップOS(OS X/macOS)でも2010年から「Flash」のプリインストールを実施していないため、「Flash」廃止の影響は限定的なものになりそうだ。

 なお、「Flash」を追加で導入しても、「Safari」ではデフォルトで無効化される。「Flash」プラグインを実行するには、それぞれのWebサイトでユーザーが明示的に許可する必要がある。

Google(Google Chrome)

「Google Chrome」

 Googleの提供するWebブラウザー「Google Chrome」には「Flash」プラグインが同梱されている。しかし、3年前は「Flash」プラグインを毎日利用するユーザーは全体の80%に達していたのに対し、現在ではわずか17%にまで減少しているという。

 「Google Chrome」ではすでに「Flash」プラグインが初期状態で無効化されており、実行にはユーザーの許可が必要となっている。基本的に今の状態が2020年末まで継続されると考えてよいだろう。

Microsoft(Internet Explorer、Microsoft Edge)

「Microsoft Edge」

 「Windows 10 Creators Update」では「Microsoft Edge」に“Click-to-Run”機構(ユーザーの明示的許可でプラグインを実行する仕組み。「Google Chrome」や「Firefox」にも類似の機能が搭載)が組み込まれており、段階的な廃止の動きはすでに始まっている。

 それに加え、今回の発表では以下の施策が明らかにされている。

  • 2017年末から2018年にかけて:「Microsoft Edge」の場合は、Webサイトの初回利用時に「Flash」プラグインの実行可否を選択し、それを記憶する仕組みが導入される。なお、「Internet Explorer」ではこれまで通り、特別な許可なしに自動で「Flash」が実行される
  • 2018年後半:「Microsoft Edge」が更新され、セッションごとに毎回「Flash」実行の許可が必要となる
  • 2019年後半:「Microsoft Edge」と「Internet Explorer」の両方で「Flash」がデフォルト無効に
  • 2020年末まで:「Microsoft Edge」と「Internet Explorer」から「Flash」を実行する機能を削除

Mozilla(Firefox)

「Firefox」

 「Firefox」では早くから“Click-to-Activate”や“Click-to-Play”と呼ばれる機構を導入するなど、脱プラグインを進めてきた。「Flash」プラグインのみはユーザー数が多いことを考慮して例外扱いされてきたが、来月リリース予定の「Firefox 55」では他のプラグインと同様、初期状態で無効化され、利用を希望する場合はユーザーがサイト単位で有効化する必要がある。

 これに加え、「Firefox」では以下の廃止スケジュールが発表されている。

  • 2017年9月:「Firefox 56」以降、Android版でプラグインのサポート廃止
  • 2018年後半:「Flash」プラグインを許可する設定を記憶しなくなる。セッションごとに有効にする必要がある
  • 2019年前半:「Flash」プラグインを利用するサイトで警告を表示
  • 2019年:「Flash」プラグインをデフォルト無効に
  • 2020年初め:「Flash」プラグインのサポートをデスクトップ版「Firefox」でも廃止。「Firefox ESR」では引き続き利用可能
  • 2021年:Adobeが「Flash」のサポートを終了すると、「Firefox」でのプラグイン読み込みがブロックされるようになる

 詳細は公式ブログを参照のこと。