【第148回】
アートアクション「Art Is Dead」
マウスをクリックして、世界の名画でシューティング!!
(01/09/12)
「芸術は死んだ」と語ったのは、マルセル・デュシャンだったか? 間違っていた
ら勘弁してもらいたいが、いずれにしてもこの言葉が一種定型化しつつあった古い美
意識を否定し、ダダイスム、そしてシュルレアリスムの誕生につながった。また、価
格の高い作品や巨匠の作品のみを“名画”とする風潮を揶揄して、「芸術は死んだ」
という言葉が使われることもある。気に入ったかどうかよりも、絵画=資産と考える
昨今、たしかに芸術は瀕死の状態なのかもしれない。筆者にはどうでもいい話だが。
……とまあ、そんなこんなで今回紹介するのは、その名もズバリ「Art Is Dead」。
名画をモチーフに楽しむ、シュルレアリスムな作品だ。
名画を使ったミニゲーム集
|
|
洋館の壁に掛けられている3枚の名画をゲームで楽しむ |
『Sunflowers』ならぬ『Gunflowers』。それぞれ3~4レベル用意されている |
「Art Is Dead」は、古今東西の名画をモチーフにした、オムニバス形式のシュー
ティングアクション。ゲームに使うのはマウスの左ボタンだけという、超シンプルな
内容だ。制限時間内に、できるだけ多くの標的をクリックすればいい。プレイするた
びにポイントが加算され、そのポイントが増えると新しいゲームが楽しめるようになっ
ている。マウス以外のポインティングデバイスでもプレイ可能だが、素早い操作が必
須なので、トラックパッドやトラックボールではちょっと厳しいかもしれない。
まず最初はゴッホの『ひまわり』
|
ゴッホの『ひまわり』。群がるハエをマウスの左クリックで撃ち落とす |
デモ版を起動し、メインメニューから“1 Player”をクリックする。薄暗い洋館の
エントランスが表示されたら、壁に掛けられた絵の中から1枚を選ぶ。
階段を昇った突き当たりに飾られているのは、ビンセント・バン・ゴッホ の『ひ
まわり』だ。バブルの絶頂期に某保険会社が60億円近い高値で落札し、以来、日本人
にもなじみの深い名画のひとつ。その後「贋作ではないか」というウワサも流れたが、
この絵はいまも新宿の高層ビルの最上階にひっそりと展示されている。ちなみにゴッ
ホはアルル時代に7枚の『ひまわり』を描き、日本にあるのはその中の7枚目。「Art
Is Dead」に使われているのは、ロンドン国立絵画館所蔵の作品のようだ。
ゲームはとても単純で、ひまわりに群がるハエの大群をマウスの左クリックで撃ち
落とすだけ。ただし、間違ってミツバチを撃つと350点も減点されてしまう。残弾数
に制限はないので、気前よく撃ちまくろう。スコアを伸ばすコツは、画面左下から現
れる毛虫を確実に仕留めること。1匹500点のボーナスだ。
『キャンベルスープ缶』を狙い撃ち
|
|
ウォーホルの『マリリン』。制限時間内にできるだけ多くのスープ缶を撃つ |
よく見るとスープ缶の名前が「Warhols」になっている |
『ひまわり』のすぐ左隣に掛けられているのは、ポップアートの巨匠、アンディ・
ウォーホルの『マリリン』。マリリン・モンローの顔写真をコラージュした、シルク
スクリーンの作品だ。ゲームではこの『マリリン』の上に現れる、『キャンベルスー
プ缶』を撃つ。スープ缶には“きれいなもの”と“潰れたもの”があるので、きれい
なものだけを撃つようにしよう。こちらは残弾数に限りがあるので、ムダ弾を使わな
いように注意すること。缶は最初のうちは止まっているが、面が進むにつれて動きが
激しくなる。
『睡蓮の池』をゴミから守れ
|
モネの『睡蓮の池』。池に向かって投げ捨てられるビンやうちわを撃て
|
2階の扉の左側には、クロード・モネの『睡蓮の池』が飾られている。橋の上を渡
る人物……これもまたモネの作品『緑衣の女』や『ラ・ジャポネーズ』『ゴーディベー
ル婦人の肖像』からコラージュされた人物……がグラスやうちわを次々と投げ捨ててい
くので、これを撃ち落とさなければならない。池に落ちると、1個につき50点のマイ
ナスだ。
最初の面はのんびりと楽しむことができるのだが、面が進むにつれて徐々に難しく
なっていく。最終面は画面いっぱいにモノが飛び散るので、パーフェクトを狙うのは
かなり厳しいかもしれない。
たまにはこんなゲームも悪くない
|
交代でスコアを競うパーティモードもある |
単純なアクションゲームなので“奥の深さ”は期待できないが、雰囲気がとてもい
い。アールデコ風なタイトルロゴに、名画を使ったゲームの数々。背景に流れるBGM
も洒落ている。メル・ブルックスのコメディ映画に似た香りも漂い、これまでにプレ
イしてきた作品とはだいぶ違った印象だ。ひとことで表現するなら、「オトナのアク
ションゲーム」といったところだろうか。ちょっと時間に余裕のあるとき、あるいは
気分転換にぜひ。
気に入ればその場で製品版を買うことも
|
PC用のガンコントローラも使えるらしい
|
デモ版ではプレイできるのは、紹介した『ひまわり』『スープ缶』『睡蓮の池』の
3つ。確かにこのソフトはデモ版としてダウンロードするのだが、実はシェアウェア
として公開されており、オンライン購入することが可能だ。決済にクレジットカード
が必要だが、気に入ればその場で製品版を購入できるようになっている。価格は
14.99ドル。ホームページに掲載されている情報によれば、製品版では『モナリザ』
など22枚の絵画を使った60種類以上のゲームが楽しめるとのこと。
(sr-art-demo-v01.exe、15.0MB、ゲームデモ)
□「Art Is Dead」のホームページ
http://www.smallrockets.com/pc/artisdead/index.htm
□「Art Is Dead」のダウンロードページ
http://www.smallrockets.com/pc/artisdead/downloads.htm
(駒沢 丈治)
(C) Small Rockets 2001.