Book Watch/著者は語る

フリーランスの僕がベルリンへ移住して感じた街の魅力とは?

『ライフハックで行こう!―Think IT edition―「僕らのベルリンライフ」編』の著者、高田ゲンキ氏

 コミックエッセイ『ライフハックで行こう!』の主人公である僕、高田ゲンキと妻の美穂子は、ふたりともフリーランスのイラストレーターをしています。この仕事の良いところは“パソコンとインターネットがあれば、世界のどこでも仕事や生活ができてしまう”ということで、そのアドバンテージを活かして2012年にベルリン移住をしたのですが(その経緯は、Think ITにて28日公開の最新エピソードで描いていますので、是非お読みください!)、逆に言えば、たとえば海外就職や留学等の“ベルリンでなければならない必然性”もまったくありませんでした。つまり、ベルリン以外の国や都市でも移住地になり得たわけですが、僕たちは自分たちの意志でベルリンを移住先として選びました。

 2016年8月からThink ITで連載が始まった本作。まずは“僕らのベルリンライフ”と冠して、そのベルリンでの生活にフォーカスしました。具体的なトピックとしては“スタートアップ”“ベルリンという街が持つ魅力”“ベルリンで出会った人”に関するものが中心となっています。

スタートアップ

 スタートアップ。これは僕がベルリン移住を決意するにあたって、最大の理由になりました。実は僕はこれまで音楽・絵・IT等に関心を持って取り組んできましたが、そのどれもがアメリカにルーツを持つものだったので北米文化に憧れが強く、移住先として欧州をイメージすることがほとんど無かったのです。しかし、移住先としてさまざまな国や都市を比較していく中で、ベルリンが“ヨーロッパのシリコンバレー”と呼ばれるほどスタートアップカルチャーが盛り上がっている街であると知り、一気に関心が高まったのでした。

マンガを読んでいただければわかる通り、「僕が移住地としてベルリンを選んだ大きな理由のひとつ」としてベルリンのITスタートアップシーンの魅力を語ったわけですが、そもそもITスタートアップシーンそのものが、「ライフハックの実現」とも言えるのです。

前回触れた通り、ライフハックとは「自身の生活や仕事のスタイルにおいて“気の利いた手段で、もっと快適に、もっと楽して、もっと効率良く”(Wikipediaより)」していくことなのですが、スタートアップシーンで日々生み出されているプロダクトは、ほとんどの場合においてまさにこういった目的のために開発されています。

第2話 「ベルリンのITスタートアップシーンがアツい!」本文より

ベルリンはスタートアップ系のミートアップも多い。参加者の国籍はさまざま

ベルリンという街が持つ魅力

 ベルリンにスタートアップカルチャーが根付きはじめたのは、2012年にベルリンにオフィスを構えるスウェーデン発の音楽スタートアップ「SoundCloud」が、巨額の資金調達に成功して注目を集めたのがきっかけと言われているので比較的最近の話なのですが、ベルリンという街はそれ以前から魅力的な街として注目を集めてきました。その魅力とはアートやクラブ、さらにはクラシック音楽などのさまざまな文化の中心地であることなどが挙げられますが、僕がこの街で生活をする中でそれ以上に魅力を感じているのが“ベルリンが持つ多様性”です。

 まず、この街自体がいくつものエリアによって構成されており、複雑な歴史背景もあってそれぞれのエリアが全く異なる個性的な顔を持っているので、生活をしていて飽きることがありません。そして、そこに住む人たちもまた多様です。人種・民族・言語・宗教・職業・貧富等、実にさまざまな人々がここにいて、基本的にはそれぞれが尊敬・尊重しあって共存しているこの環境は、まさに“多様性”という言葉にふさわしいのです。そして、その多様な要素が混ざりあった街は信じられないほどクリエイティブで刺激的なので、5年住んだ今でも街を歩くだけでインスパイアされて創作意欲が湧いてきます。特に僕らのようなクリエイターにとって、このような刺激的な環境を拠点にして生活することは、非常に重要なのです。

日曜日のマウアー・パーク。人々は蚤の市を物色したり、土手で語らったり……と、思い思いに緩やかな時間を楽しむ

ベルリンで出会った人

 これだけ世界中から注目されて各国から人が集まっている街なので、きっと面白い人たちに出会えるだろう。そう思って移住してみましたが、実際に出会った人たちの多くは期待を遥かに超えて面白く刺激的でした。新しいことに挑戦するには絶好の場所なので、貪欲に自分の夢や目標に突き進んでいる人たちが集まって来るのでしょう。『ライフハックで行こう!-Think IT edition- 「僕らのベルリンライフ編」』では、僕が出会った起業家やフリーランサーをフィーチャーしていますが、皆非常に高い学歴・職歴の持ち主であるにもかかわらず、そこに慢心せずに常にチャレンジャーとして前人未到の領域に挑戦し続けている人たちで、僕自身ものすごくモチベートされたので、その一部だけでも伝えられればと思い、マンガにしました。

 そんなことを頭のかたすみに置いて『ライフハックで行こう!―Think IT edition―「僕らのベルリンライフ」編』をお読みいただけたら……と思って本稿を書きました。なぜなら、“スタートアップ”“ベルリンで出会った人”“ベルリンの魅力”こそが、冒頭で書いた“我々が移住先としてベルリンを選んだ理由”に他ならないからです。本書を通して、僕の目から見たベルリンの魅力を追体験していただけたら嬉しいです!

高田 ゲンキ

 ベルリン在住のイラストレーター/マンガ家。1976年生、神奈川育ち。 2004年にフリーランスとして活動開始以来、Macを中心としたフルデジタルでの制作環境を活かして場所や業界慣習にとらわれない自由なワークスタイルを確立。2012年に夫婦でドイツ・ベルリン移住。自身の仕事術やライフハック術、人生論、ベルリンの生活の様子などをブログ『Genki Wi-Fi』とマンガプロジェクト『ライフハックで行こう!』で発信中。ご意見、ご感想、応援のメッセージはこちらから。Twitter(@Genki119)でマンガ更新の告知や、おまけマンガを更新中! 是非フォローしてください!