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“Tor”を組み込んだメッセンジャーアプリ「Tor Messenger」の開発が終了

ベースとなっていた「Instantbird」の開発が停止している状況などを受けて

公式ブログ“Tor Blog”

 The Tor Projectは2日(英国時間)、通信の秘匿性を重視したインスタントメッセンジャー「Tor Messenger」の開発終了を発表した。2015年に最初のベータ版がリリースされて以降、11回のアップデートを重ねていたが、正式版のリリースを見ずに開発を終えることとなった。

 「Tor Messenger」は、クロスプラットフォーム対応のチャットアプリ。UIフレームワークに古い「Firefox」や「Thunderbird」などと同じ“XUL”を用いたメッセンジャーアプリ「Instantbird」をベースに、接続経路の匿名化を実現する技術“Tor”を組み込んでおり、やり取りの漏洩を防ぐ“Off-the-Record Messaging(OTR:オフレコメッセージ)”機能にも対応していた。

 開発終了のきっかけは、ベースとなっていた「Instantbird」の開発が終了したことにあるようだ。「Instantbird」のコードは「Thunderbird」が継承しているが、単体アプリとしての開発はすでに行われていない。

 また、もう1つの理由としてメタデータの問題が解決できなかった点が挙げられている。いかに接続経路や会話の内容を秘匿したとしても、集中型のサーバー・クライアントアーキテクチャーをもつサービスを利用する限りは、“誰と誰が会話したか”“誰と誰が頻繁に会話しているか”というメタデータ(いわゆるソーシャルグラフ)まで隠すことはできない。

 そのほかにも、開発リソースが限られており、ユーザーからの機能リクエストや不具合修正に対応できていない点も理由として挙げられている。