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一時代を築いたメールソフト「Eudora」のソースコードがコンピューター歴史博物館で公開

Qualcommで開発されていた商用版「Eudora」、BSDライセンスで利用可能に

「Eudora 7.1」のスプラッシュ画面(CHMのWebサイトより引用)

 米コンピューター歴史博物館(The Computer History Museum、CHM)は23日(現地時間)、メールクライアント「Eudora」のソースコードを公開した。米Qualcommと5年間交渉した結果、ソースコードの所有権、商標、ドメイン(eudora.com/org)の移譲を受けることができたという。ライセンスはBSDライセンスで、商用でも利用できる。

 「Eudora(ユードラ)」は、かつて一世を風靡したWindows/Mac向けのメールクライアント。もともとはMac向けのフリーソフトで、1988年、イリノイ大学に在籍していたSteve Dorner氏によって開発された。ソフト名は、氏が大学在籍中に愛読していた短編小説『Why I Live at the P.O.(わたしはどうして郵便局で暮らすようになったか)』の著者Eudora Weltyにちなんでつけられた。最初のバージョンは1年をかけてC言語で開発され、ソースコードの長さは5万行に達したという。

 1991年、「Eudora」は米国の通信会社Qualcommに買収された。QualcommはMac版の開発を継続する一方で、MS-DOS/Windows版の開発にも着手。当初は社内だけで利用されていたが、1993年にはコンシューマー製品として発売され、多くのユーザーを獲得した。有償版に加え、広告が付く代わりに無償で利用できるバージョンが用意されていたのも人気の一因と言えるだろう。

 しかし、Microsoftの「Outlook」や他の無償メールクライアントが台頭すると、「Eudora」はQualcommにとって重要な事業ではなくなっていった。2006年、Qualcommは商用版「Eudora」の開発中止を決断。「Thunderbird」ベースのオープンソース版を後継としてリリースしたが、思うようにユーザーを獲得できず、「Eudora」プロジェクトは約20年の歴史に幕を下ろした。

商用版としては最後の「Eudora」となるv7.1 for Windows 英語版
「Thunderbird」ベースのオープンソース版「Eudora」v8.0.0b1

 今回公開されたソースコードは、「Thunderbird」ベースのオープンソース版ではなく、Qualcommが開発していた商用版。最終リリースは2006年10月で、Windows向けはv7.1.0.9、Mac版はv6.2.4となっている。なお、Mac版を動作させることはエミュレーターでも導入しない限り難しいが、Windows版は現在でも利用可能。Windows 10でも多少の問題はあるが稼働するという。

 そのほかにも、コンピューター歴史博物館では「MS-DOS」「Word for Windows」のソースコードなどがアーカイブされている。