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Microsoft、プレビュー版「Windows 10」の提供方法を再編 ~リングからチャネルに

「Microsoft Office」や「Microsoft Edge」、「Microsoft Teams」でも実施へ

新しいチャネルモデル

 米Microsoftは6月15日(現地時間)、「Windows 10 Insider Preview」の提供方法を変更すると発表した。ビルドの頻度に基づく現在の“リング”(Ring)モデルから、ビルドの品質を重視した“チャネル”(Channel)モデルへの移行・転換が行われる。

ビルドの頻度に基づく現在のリングモデル

 「Windows 10」には日々改善が加えられているが、それがそのまま一般ユーザーに届けられるわけではない。初期ビルドには致命的な問題(OSが起動しなくなる、ユーザーデータが破壊されるなど)が含まれていることが少なくないため、まずは社内でテストされた後、“Windows Insider Program”(WIP)に参加する希望者へ解放される。そこで不具合の報告や改善の提案を募り、それを反映したより安定したビルドが一般ユーザーへ届けられるわけだ。

 こうして徐々にテストユーザーを広げていく仕組みはリングモデルと呼ばれており、現在“Windows Insider Program”には3つのリングが設定されている(他にも開発されたばかりの不安定なビルドを“毒見”する“Canary”リングなどが存在するが、極めて不安定なため社内限定で、一般ユーザーは参加できない)。参加するリングによって、新しいビルドの提供頻度が異なるのが特徴だ。

  • ファスト(Fast):最新機能に触れられるが、不安定。1週間に1回ないし2回提供される
  • スロー(Slow):ファストよりは安定したビルドを受信可能。1カ月に1回ないし2回提供される
  • Release Preview:一般ユーザーに提供される前の製品版。ドライバーやアプリの開発者、組織でPCを一括管理しているIT管理者などが導入前にテストするために利用する。2016年に新設

 しかし、5年以上にもわたり運用された結果、最近ではこの原則が崩れつつある。

 まず、従来は開発ブランチ(RS_PRERELEASE)のビルドを“Fast”リング、“Slow”リングでテストしたのち、製品ブランチに切り離して最終のテストを行う仕組みであったのが、それぞれのリングは次第に「Windows 10」のバージョンに紐づくようになっていった。たとえば“Release Preview”リングで「19H1」が提供されている場合、“Slow”リングでは「19H2」が、“Fast”リングでは「20H1」のコードがテストされるのが通例となっていた。1つの開発ブランチの異なる3つのバージョンが同時にテストされていたわけだ。

 また、初期ビルドでさまざまな機能を導入し、早期にフィードバックを得たいという開発チームの目論見もあるようだ。実際、現在の“Fast”リングはもはや「Windows 10」の特定バージョンと紐づいておらず、かならずしも次期バージョンに搭載されるとは限らない機能や改善がテストされている。複数の開発ブランチを柔軟にテストできるよう、異なる開発ブランチのビルドを供給するテストも実施中だ。

 一方で、“Slow”リングには新しいビルドがなかなか提供されず、十分に機能しているとは言い難かった。単純に“Fast”リングでテストしたビルドを“Slow”リングに流すという関係では、もはやなくなってしまっている。

 そこで、実情にそぐわなくなってきたリングモデルは、新しい“チャネル”モデルへと置き換えられることになった。ビルドを受け取る頻度よりも、その役割を重視して再編された格好だ。

  • 開発(Dev):次期バージョンに搭載されるとは限らない、開発中の新機能がテストされる。新しい機能に興味があり、採用前の段階で積極的にフィードバックしたいユーザー向け。不安定なので、トラブルを自分で解決できるスキルも必要だろう
  • ベータ(Beta):次期バージョンに搭載されることが決まった機能がテストされる。比較的安定性は高く、次のバージョンの「Windows 10」がどんなものになるのか一足先に体験したいアーリーアダプター向け
  • Release Preview:一般ユーザーに提供される前の製品版。Microsoftによるサポートもあり、大規模導入の前のテストやリリース前の検証にお勧め

 すでに“Fast”リングや“Slow”リングに参加している場合は、“Dev”チャネルや“Beta”チャネルへ自動で移行される。今月後半にも「設定」アプリの“Windows Insider Program”ページにも反映される予定だ。

 また、この新しいチャネルモデルは“Office Insider”との共通化も図られている。「Microsoft Edge」や「Microsoft Teams」にも、近いうちに同様のテストモデルが導入されるという。

“Office Insider”との共通化も