ニュース

高機能オンラインホワイトボードの「Miro」が日本語化~日本向けテンプレートも

すでにTOPIX100社のうち60%が利用

 ミロ・ジャパンは、オンラインホワイトボードを提供するビジュアルプラットフォーム「Miro」の日本における事業展開について説明。2022年6月13日から日本語ユーザーインターフェイスを正式に公開し、無料版のユーザーを含めて、全てのユーザーが日本語環境で利用できるようにした。また、ローカルコミュニティであるMiroverse Japanを通じて、日本向けのローカルテンプレートの提供を開始したことなどを発表した。

 ミロ・ジャパンの五十嵐光喜社長は、「日本語化が予定より遅れたのは、日本のユーザーの要望に応えるために、社内で何度もテストを繰り返していたことが要因である。Miroにとっては、最初のローカライゼーションプロジェクトになり、手探りで学ぶところもあった。高品質に仕上げることができた。自信を持てる日本語化ができており、日本のユーザーに広く利用してもらいたい」と述べた。

ミロ・ジャパン 代表執行役社長の五十嵐光喜氏

 また、「Miroverseは、ローカルコミュニティに参加している人たちが独自にMiroのテンプレートを作り、ベストプラクティスをコミュニティで共有する仕組みである。新たにMiroverseJapanローカルテンプレートをリリースすることで、グローバルに活用できるテンプレートだけでなく、日本のユーザーが自らベストプラクティスとしてまとめた日本語のMiroテンプレートを共有できるようになる。これは、Miroの大きな強みである」とした。

日本語ユーザーインターフェイスを正式に公開
日本向けのローカルテンプレートも提供

チームのメンバー追加やハイブリッドワークに対応した機能強化も

 また、新たな機能についても発表した。これら機能は、6月16日に開催した同社プライベートイベント「Miro Next Japan」において発表した。注目を集めた新機能のひとつが、Miroボード上での音声やビデオによる操作を録画して、利用者がいつでも確認できる機能である。

 プロジェクトに新たなメンバーが加わったときに、必要な情報を録画によって共有。新たなメンバーは、自分が空いた時間に、リンクをクリックするだけで確認可能。録画内容はMiroボードとリンクしているため、単に録画した映像を見るだけでなく、必要に応じてボードに自由に書き込んだりすることができる。再生速度を速めることも可能であり、会議の時間を効率化できるという。2022年6月から、一部ユーザーを対象にβ版を提供する。

 また、デベロッパープラットフォームを活用し、コンテンツをMiro上に作成できる機能も発表した。QRコードを読み込むだけで、スマホを通じて、Miro上に付箋を追加。リモート環境からの情報収集を容易にしたり、ボード上への情報の集約を可能にしたのである。

 さらに、ハイブリッドワークに対応した新機能も追加。会議ツールとのコラボレーションを2クリックで可能にするWebex Boards用MiroアプリやGoogle Meet用Miroアプリの提供、プレゼンテーション作成時間を短縮するMagic Organize、VRによるコラボレートを実現する機能などを提供する。

 製品およびサービスでは、Azure DevOpsカードに対応した双方向の同期機能や、新たな見積アプリ、情報を正確に視覚化する新たなダイヤグラム機能を提供。さらに製品連携機能も強化し、Miro開発者プラットフォームv2の発表や、GitHubサンプルアプリリポジトリの発表などを行った。

 五十嵐社長は、「世界中で選ばれているMiroの価値を、日本の企業に届けたい。企業の力の源泉は社員である。社員の知見、創造性を、時間や場所を超えてひとつにしていくことがミロ・ジャパンの役割である。かつての日本の企業の強さは全員参加型の議論がベースとなり、エンゲージメント力が高かったことにあった。だが、ビジネスのスピードがあがり、全員が集まれる場がなくなり、集まっても日本人の特性を背景に発言できない雰囲気もあった」と指摘した。

 「これは日本の本来の力を活かせていないことにつながる。日本人が持つ素晴らしいアイデアをボトムアップで組み上げ、ひとつのものを作り上げるのが日本の企業の強さである。それが失われている」と続け、この課題に対してMiroが力を発揮できるとする。「Miroは手を挙げる必要がなく、社員全員の考えを自由に共有し、発言できる環境を提供できる。しかも、デジタル環境に永続的に保持できる。日本のお客様に最適な機能として提供したい」と述べた。

 Miroはビジュアルコラボレーションツールのリーダー企業と位置づけられており、全世界で3500万人以上のユーザーが利用。法人顧客では、Fortune 100の99%が利用しているという。

ハイブリッドワークの実態に即し、従業員エンゲージメントを高める

 来日して会見に出席した米Miro 最高マーケティング責任者(Head of Marketing)のポール・ダーシー氏は、「2021年11月時点では、2,500万人の利用者数であったが、急速な勢いで成長しており、いまは3,500万人にまで拡大している。また、Miroverseで共有しているテンプレートは1,000以上となっている」と、グローバルで事業が拡大していることを示す。

米Miro 最高マーケティング責任者(Head of Marketing)のポール・ダーシー氏

 テレビ放送局であるProSiebenSat.1では、映像制作時のストーリー展開にMiroを活用し、写真やビデオクリップなどをシームレスに管理し、コミュニケーションをしながら、迅速な映像制作を実現しているという。

 UNDER ARMOURでは、カスタマージャーニーマッピングにMiroを活用。店舗やオンラインを問わずに顧客体験を最大化する提案に生かしているという。日本で最初のユーザーとなったYahoo! JAPANでは、社員がオンラインでも対面と同じように共同作業を行える環境を実現。アイデアを可視化して、効率的な作業ができるという。「これらの企業に共通しているのは、Miroによって従業員エンゲージメントを高め、生産性を高め、それに伴い、高い収益性を実現していることである」とした。

 一方で、昨今のハイブリッドワークの実情について「リモートワーカーはベッドから職場まで16歩で通勤ができ、労働時間が長くなっている。とくに、会議の増加率は150%、会議に費やす時間の増加率は250%となっている。ハイブリッドワーカーは、デジタルツールのなかで生活し、ソフトウェアのなかで仕事をしている」と指摘する。

 そして、「だが、ビデオ会議やメッセージツール、生産性向上ツールはハイブリッドワークの実態に即して設計されたものではない。その結果、ミーティングに費やす時間が長くなり、それにも関わらずコラボレーションの成果は少なく、サイロ化、断片化した仕事になっている。Miroはハイブリッドワークを自然な形で行えるツールであり、Miroを使うことで協業が促進され、共有ワークスペースを活用したプロジェクトが促進できる。社員がつながっていることを実感できる。」と、従業員エンゲージメントに関してのMiroの優位性を強調した。

従来のツールはハイブリッドワークの実態に即していない
ハイブリッドワークにおける従業員エンゲージメントに関するMiroの優位性「Miroが従業員に愛される理由」

 また、ダーシー最高マーケティング責任者は、「デジタルワークスペースに不可欠な要素」として次の5点を挙げ、Miroはすべての要素を提供していると述べた。

  • 同期・非同期コラボレーションに対応
  • あらゆるツールとの深い統合
  • 拡張性・カスタマイズ性
  • 直感的、包括的、求心力
  • さまざまなユースケースに対応
デジタルワークスペースに不可欠な5つの要素

国内での利用拡大にあわせ、日本オフィスも増員中

 日本での事業体制の強化についても触れ、2021年5月に日本オフィスを開設して以降、2021年11月時点でも5人以下の陣容のままであったが、現在、社員数を急速に増やしており、2022年夏までに50人体制に強化する計画を公表。2023年には100人体制に拡大する方針を示した。

 また、国内での利用者数は、2021年11月時点では50万ユーザーであったが、2022年5月末時点で70万ユーザーに拡大。TOPIX100社のうち、60%の企業が利用しているという。「日本語UIおよび日本語テンプレートの利用が可能になったことで、ユーザー数の伸びが加速することになる」と事業拡大に意欲をみせた。

 さらに、国内での活用事例としてNECを紹介。同社のソフトウェア&システムエンジニアリング統括部において、アジャイル開発の管理環境にMiroを採用し、フルリモートによる開発環境をMiro上に展開して、自由度の高いクラウドサービスとして活用。迅速なプロジェクトチームの立ち上げや、アジャイル開発環境の実現に貢献しているという。

NECではフルリモートによる開発環境でMiroを採用

 「MiroのAPI機能を用いて、開発で使用している各種ツールともシームレスな連携を実現しており、エンジニアの時間を本来の仕事である価値の作り込みに使えるようになった」とした。Miroでは、100種類以上の主要業務システムとの連携が可能になっているという。

アジャイル開発環境における、アイデア出しやチームビルディングにMiroを活用する