ニュース

「Windows 11 バージョン 22H2」は色表現でも大きく進歩 ~新API「ACM」の導入で

あらゆるディスプレイでAdvanced Colorコンテンツの魅力を引き出せる

公式ブログ「DirectX Developer Blog」

 「Windows 11 2022 Update」(バージョン 22H2)ではカラーマネジメントシステムがアップデートされており、より正確な色表現が可能になっているという。米Microsoftが10月12日(現地時間)に更新した「DirectX Developer Blog」で、その詳細を解説している。

 あまり気にしないユーザーも少なくないと思われるが、実はデバイスにより色の表現は異なる。ショッピングサイトで色が気に入って買ったのに、実際に届いた商品の色は商品写真と違った……などという経験をしたことのあるユーザーもいるだろう。

 カラーマネジメントは、そうしたデバイス感での色表現の差異をなくし、できるだけ正確な表示を可能にする技術および仕組みだ。とくに映像関係のプロフェッショナルにとっては重要で、専用の機器でモニターをキャリブレーション(補正)したり、モニターにカラープロファイルを設定するといった作業は欠かせない。

 Windowsではそうした状況に対応するため、Windows 2000以降で「ICM」(Image Color Management)、Windows Vista以降で「WCS」(Windows Color System)といったAPIを提供している。しかし、これらのAPIはカラーマネジメントが必要なアプリのヘルパーに過ぎず、コンテンツもディスプレイもほとんどが業界標準のsRGBカラーを前提としていた。当時はそれで十分だったが、現在ではより高品質・広色域のディスプレイが一般的となっており、機能不足が否めなくなっている。

 そこで、「Windows 11 バージョン 22H2」では「Auto Color Management」(ACM)と呼ばれる仕組みが導入されている。

余談だが、「Windows 11 バージョン 22H2」では「クイック設定」にカラープロファイルの切り替えコマンドも追加されている

 ACMにおいて、広色域(またはHDR)を明示的にターゲットにしていないアプリはsRGBに一貫してマッピングされる。ICM/WCSカラーマネジメントAPIを使用して明示的にカラーマネジメントを行うアプリは、ディスプレイのネイティブな色域をターゲットにすることもできる。また、最新の高度なカラーAPIで書かれたアプリは、広色域コンテンツとsRGBコンテンツを混合してマッチングすることも可能。

 つまり、ACMで新規に開発またはアップデートされたアプリは、色の正確さを維持しつつ、より多くの色をレンダリングできるようになる。ACMがない場合、デスクトップ描画を担当する「DWM」(Desktop Window Manager)はディスプレイがより高いビット深度をサポートしていてもそれをフル活用していなかった。しかし、ACMを有効にすると、IEEE半精度浮動小数点演算(FP16)を使用して合成を行うため、ボトルネックがなくなり、ディスプレイの全精度を活用できるようになる。

 アプリケーションは10~168bit精度で数十億色にアクセスでき、8bit精度しかサポートしていないディスプレイでもACMはディザリングなどの技術を活用し、できるだけ高い品質でレンダリングを行う。

 また、「Windows 11 バージョン 22H2」ではACMにより、「Surface Studio 2+」と「Surface Pro 9」をはじめとする一部の認定ディスプレイおよび特別にプロビジョニングされたSDRディスプレイで「Advanced Color」が利用できるようになる。Advanced Color機能そのものは「Windows 10 バージョン 1709」(Fall Creators Update)で導入されたものだが、このときはHDRディスプレイのみがサポートされていた。

 ちなみに、Advanced Colorは以下のうち1つ以上を満たすコンテンツを指す。

  • ダイナミックレンジ(輝度):sRGBの0~100nitの範囲よりも高いもの
  • 色域:sRGBの原色より広いもの
  • 精度/ビット深度:各色チャンネルあたり8bit以上

 また、アプリでACMを利用するには、以下の要件を満たす必要がある。

  • 「Windows 11 バージョン 22H2」(Build 22621)以降
  • 「WDDM 3.0」以降をサポートするドライバー
  • 対応するGPU
    • AMD:
      • 「AMD RX 400」シリーズ以降
      • 「Radeon Graphics」を内蔵する「AMD Ryzen」プロセッサー
    • Intel
      • 統合:第12世代(Alder Lake)以降のプロセッサー
      • 統合以外:「Intel DG1」およびそれ以降
    • NVIDIA:
      • 「NVIDIA GTX 10」シリーズ(Pascal)およびそれ以降
  • 8-bit sRGBパネルでも機能するが、1チャンネル当たり10bit以上のパネルを強く推奨
  • グローバルレジストリキーの編集(開発者のみ、同社のドキュメントを参照のこと)

Windows 11 バージョン 22H2の新機能を使いこなす 2022年 記事一覧