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手のひらAIスパコン「DGX Spark」であえてゲーム開発、3時間のハッカソンで作ったとは思えない力作が集結した

日本初となる所有者限定の「DGX Sparkハッカソン」開催

 東京・浅草橋にある技研ベースにて「第一回DGX Sparkハッカソン」(以下、DGX Sparkハッカソン)が、6月13日に開催された。

 このハッカソンは、その名の通り、参加資格がNVIDIAの卓上AIミニPC「DGX Spark」の所有者に限られ、自分が持ち込んだDGX SparkでAIを活用したゲームを作るという、とてもユニークなものだ。DGX Sparkのみを対象にしたAIハッカソンは、おそらく日本初であろう。本稿ではその様子をレポートする。

手のひらに乗るAIスパコン「DGX Spark」

 最初に、DGX Sparkについて簡単に説明しよう。

 DGX Sparkは、NVIDIAが2025年に発表したAIスパコンであり、150×150×50.5mm、約1.2kgという手のひらに乗るサイズながら、FP4で最大1PFLOPSという高いパフォーマンスを誇る。DGX SparkはNVIDIAの純正品以外にも、リファレンスデザインが提供されており、ASUSやLenovo、MSIなどさまざまなメーカーから同等の性能を持つ製品が発売されている。

MSI版のDGX Spark「MSI EdgeXpert」

 また、同製品は、NVIDIA GB10 Grace Blackwell Superchipと128GBの統合メモリを搭載していることが特徴であり、比較的規模の大きなLLMも動かすことが可能だ。発売当初の価格は60万円程度であり(現在はメモリなどの高騰のため100万円程度まで価格が上がっている)、個人でも買えるAIスパコンとして注目を集めた。

DGX SparkでAIを活用したゲームを作ることが課題、第一回DGX Sparkハッカソン

 今回のハッカソンを主催したAI/ストラテジースペシャリストの清水亮氏は、AI開発やローカルLLMなどに使用することが本来の目的のDGX Sparkで、あえてゲームを作るのも面白いのではないかと考え、この「DGX Sparkハッカソン」を企画したという。前述した通り、参加条件は個人でDGX Sparkを所有していることだ。第1回となる今回は、アメリカ西海岸からリモートで参加した人や岡山から参加した人など、全9人の参加者が集まった。

 最初に主催者の清水氏が、ハッカソンのテーマや作るもの、審査基準について説明を行った。

ハッカソンのテーマや作るもの、審査基準について説明を行う主催者の清水亮氏

 AIを活用したゲームを作ることが目的のハッカソンだが、そのテーマとして、清水氏は「DGX Sparkを使う」「面白いこと」「AIをリアルタイムで使う」の3つを挙げた。最初の2つは当然だが、3つ目はAIを使ってゲームを開発する(いわゆるバイブコーディング)だけでなく、ゲームの中でもAIをリアルタイムに使う必要があるということだ。

 また、清水氏は、特にゲームセンターに置かれるゲームで重視されることとして「3分で終わる」「説明が不要」「後ろで見てて楽しい」の3つを挙げた。さらに、ゲームとは「ルール」と「それを守らせる力」の2つから成り立っており、そのイディオムとして「タイムアタック」「スコアアタック」「対戦」「デストラクション」「スピード」「ペナルティ」があることを説明した。

テーマは「DGX Sparkを使う」「面白いこと」「AIをリアルタイムで使う」の3つ。ゲームでは「3分で終わる」「説明が不要」「後ろで見てて楽しい」の3つが重要。ゲームのイディオムとして「タイムアタック」「スコアアタック」「対戦」「デストラクション」「スピード」「ペナルティ」がある

 制限時間は3時間である。なお、本来は、Anthropicがリリースしたばかりの最新モデル「Claude Fable 5」を使ってバイブコーディングを行う予定であったが、開催当時、アメリカ政府の利用制限の影響で使用できなくなってしまい、急遽、Opus 4.8やAntigravityといった他のモデルを使って開発を行うことになった。

 参加者のうち6人は、自分が所有するDGX Sparkを持ち込んでいたが、残りの3人は自宅に置いたDGX Sparkにリモートで接続して開発を行っていた。

早速開発を始める参加者たち
自分のDGX SparkとノートPCを持ち込んで開発をする参加者が多かった
手前の参加者のようにDGX Sparkは自宅に設置したままサーバーとして動作させ、リモートでログインして開発を行う人もいた
MacBook Neoの内蔵カメラを活用したゲームを開発中の参加者
DGX Sparkにキーボードとディスプレイを接続して開発している参加者もいた
MacBook NeoとDGX Sparkを使って開発している参加者

3時間で作ったとは思えない力作が続々登場!

 制限時間が終了すると、参加者が開発したゲームのプレゼンテーションを順番に行うことになった。どのゲームも完成度が高く、とても3時間で作ったとは思えない出来であった。

 最初に「ORACLE DUEL」という呪文を唱えて敵を倒すゲームが披露された。このゲームを開発したドリキンさんはアメリカ西海岸から参加したという。

参加者の一人であるドリキンさんは、アメリカ西海岸からリモートで参加していた
ドリキンさんの作品「ORACLE DUEL」。呪文を唱えて敵を倒すゲームだ

 続いて披露された「AIムチャぶりラッシュ」は、AIが出すお題のムチャぶりに顔の表情やポーズで応えるゲームだ。ステージ1では顔真似だけ、ステージ2ではポーズの真似だけをすればクリアだが、最終ステージでは顔の表情とポーズの両方を同時に真似る必要がある。ゲームが終わるとAIによる講評コメントが表示されるのも面白い。

AIが出すお題のムチャぶりに顔の表情やポーズで応える「AIムチャぶりラッシュ」。最初のステージは左のお題の顔真似をすればよい
第2ステージは全身を使ったポーズの真似で、最終ステージは顔の表情とポーズの真似を同時に行う必要がある
このようにノートPCの内蔵カメラを活用して顔の表情やポーズを真似する
ゲームが終わるとAIによる講評コメントが表示される

 「ゲーム神社」は、決まったゲームをプレイするのではなく、いくつかの質問に答えていくことで、プレイヤーがやりたいゲームをその場で生成してくれる。まさに生成AIをフルに活用したゲームという印象だ。

いくつかの質問に答えていくことで、プレイヤーがやりたいゲームをその場で生成してくれる「ゲーム神社」
ゲームの生成にはしばらく時間がかかる

 マイクとカメラを活用した「コトダマ・バトル」は、身体を動かして攻撃を避け、敵の弱点を大声で唱えて敵を倒すゲームだった。

マイクとカメラを活用した「コトダマ・バトル」。身体を動かして攻撃を避け、敵の弱点を大声で唱えて敵を倒していく

 「HENSHIN FLIGHT」は、自転車に乗って東京の街中を走り抜けたり、変身して上空から街を眺めたりできるフライトゲーム。天使モードでは腕を動かすことで羽根を羽ばたかせることができた。

自転車に乗って東京の街中を走り抜け、変身して上空から街を眺めることができる「HENSHIN FLIGHT」

 「バイト刑事の取り調べ室」は、バイト刑事になって容疑者の自供を勝ち取ることが目的という一風変わったゲーム。観客がQRコードを読むことでスマホから応援できる点が特徴だ。

バイト刑事になって容疑者の自供を勝ち取ることが目的のゲーム「バイト刑事の取り調べ室」。QRコードを読むことでスマホから応援できる

 「Gaussian Mission Arcade」は、ガウシアン・スプラッティングによるリアルな風景の中で、青い丸を集めていくドットイートタイプのゲームであった。

ガウシアン・スプラッティングによるリアルな風景の中で、青い丸を集めていく「Gaussian Mission Arcade」

 「ALIEN CODEX」は、オーソドックスなシューティングゲームだが、AI生成により、毎回違う形や動きの敵が出てくることが特徴だ。

オーソドックスなシューティングゲーム「ALIEN CODEX」。AI生成により、毎回違う形や動きの敵が出てくるのが面白い

 最後に披露された「iPhone何個分?」は、左に表示されるお題の重さが、iPhone何個分に相当するかを当てるクイズゲームだが、観客がスマホから余計なものを追加して邪魔できる、観客参加型のゲームだった。

左に表示されるお題の重さが、iPhone何個分に相当するかを当てる「iPhone何個分?」。観客がスマホから余計なものを追加して邪魔できる点が特徴だ

「第一回DGX Sparkハッカソン」の栄えある優勝者は……

 参加者9人による各プレゼンテーションが終わると審査が始まった。

 審査は、参加者全員が1人2票ずつの権利を持ち、自分がいいと思った作品に手を挙げて投票するという形式で行われた。その結果、「AIムチャぶりラッシュ」と「ALIEN CODEX」がともに5票で並んだ。最終的に清水氏のジャッジにより「AIムチャぶりラッシュ」が優勝となった。

参加者9人の発表が終わって審査が始まった。清水氏の最終ジャッジにより「AIムチャぶりラッシュ」が優勝となった。作者は精神科医の宋龍平氏

 「AIムチャぶりラッシュ」の作者は精神科医の宋龍平氏である。宋氏は岡山からこのハッカソンに参加するために上京したそうで、10代からPC-98 CanBeでプログラミングをはじめ、精神科医になる前にはフリーランスとして業務アプリの開発をしていたという。いわば筋金入りのエンジニアでもある宋氏の作品は、本人だけでなく、周りの観客も一緒に楽しめるゲームであり、今回のハッカソンのテーマにもっとも合致していたといえるだろう。筆者もぜひプレイしてみたいと感じた。

 今回のDGX Sparkハッカソンは、清水氏による「AIゲームセンター」構想とも関連しており、AIを活用したゲームの可能性の一端を示したものといえる。今後の動向にも注目したい。

「第一回DGX Sparkハッカソン」の優勝者・宋龍平氏に優勝トロフィーが贈呈された
「第一回DGX Sparkハッカソン」の優勝トロフィー
参加者が持ち寄った「DGX Spark」互換機。すべてASUS製の「ASUS Ascent GX10」だが、6台の「DGX Spark」互換機が並んでいるのはなかなか壮観だ。後ろにあるのは参加者の一人が持ち込んだポータブル電源。これでDGX Sparkを屋外でも動かしているとのこと