レビュー

ゆったり・繊細、「源ノ明朝」を縦組み本文向けに改編した「源暎こぶり明朝」フォント

同人活動や商業利用にも気軽に使える小説・ラノベ向きの和文フォント

「源暎こぶり明朝」v2.2

 「源暎こぶり明朝」は、縦組みの小説などで利用することを想定して少し小ぶりにデザインされたフォント。「源ノ明朝」をベースにしたOpenTypeフォントで(自動変換によるTrueType形式も同梱)、約18,000文字が収録されている。作者のWebサイトから無償でダウンロード可能。

 Adobeが無償提供している「源ノ明朝」ファミリーのうち、日本語本文向けの「源ノ明朝 JP Regular」に手を加えて、縦組みされた小説にフィットするよう改変を施したフォント。「源ノ明朝」は低解像度デバイスや小さな文字サイズでも読みやすいよう大きめに作られているが、本フォントはそれを約97.7%へ縮小し、適度な字間をもたせているのが特徴。オリジナルと比べると凝縮感が薄れ、ゆったりとした・繊細な印象を受ける。他の“源暎”シリーズと同様“SIL Open Font License 1.1”ライセンスで提供されており、同人活動や商業利用にも利用することができるのも利点と言える。

 本フォントに収録されているグリフのほとんどは「源ノ明朝」ベースだが、ひらがなはまったくのオリジナルだ。文章に余計な味付けをしない、読書の邪魔をしない、空気のようなデザインを目指しているとのことで、これといった特徴はないが、安心感と安定感のあるデザインになっている。

 カタカナも他の文字に合わせて小ぶりだが、こちらは約95%に縮小してあるという。一見、大きさを変えただけのように見えるが、ひらがなの書風に合わせて末端部分を少し改変しているのもポイントと言えるだろう。

 また、漢字や英数字にも手が加えられている。たとえば漢字には、“ヒゲ”や“八屋根”といった“筆押さえ”の要素が取り込まれている。“筆押さえ”は明朝体の写植に独特のいわば“飾り”で、最近では書き文字に合わせて省略される傾向にあるようだ。単に小ぶりにするのではなく、それによって生まれた余地を生かし、伝統的・装飾的な要素をもたせているとは心憎い。一方、英数字は1文字1文字クッキリとしたユーザーインターフェイス向けのオリジナルに代え、流麗さをより重視し、明朝体の文でも違和感の少ない書体に差し替えられている。

オリジナルのひらがな、“筆押さえ”を取り入れた漢字など、細部に手が加えられている

ソフトウェア情報

「源暎こぶり明朝」
【著作権者】
おたもん 氏
【対応OS】
(編集部にてWindows 10で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
2.2(17/10/09)