開発者と読み解くAIの世界

いま押さえるべき最新AI用語まとめ ~LLM、RAG、オーケストレーション、MCP、バイブコーディング……って何のこと?

AIの話についていけなくなってきた人に送る

 本コーナー「開発者と読み解くAIの世界」では、AIアプリ開発に携わるエンジニアより寄稿いただき、開発者目線でみる生成AIの面白さや活用法、開発現場のリアルをお伝えします。

 AI技術は今、これまでにないスピードで進化し、毎日のように新しい用語が生まれています。LLM、RAG、エージェント、オーケストレーション、MCP…。

 少し目を離しただけで、初めて聞く単語が当たり前のように会話に登場し、追いかけるのが難しいと感じる方も多いはずです。会議やニュースで飛び交う言葉の関係性や位置づけを見失い、技術の本質が掴みにくい状況になっています。

 本記事では、こうしたAI関連の主要用語を体系的に整理して解説します。

 AI活用が避けられない今、最新の専門用語に振り回されず、議論・判断できる基礎知識を手に入れていただけたら幸いです。

いま押さえるべき最新AI用語まとめ

8つの領域による体系的な整理

  「今、どこの話をしているのか」 という現在地が見えなくなることが、AI用語をより難解にさせます。

 大きく以下の8つの領域に分類することで、整理しやすくなります。

 ここからは、各領域の重要用語を解説していきます。

① AIコア(AI Core)~すべての中心となる「脳」の性能と仕組み~

LLM(Large Language Model)

 大量のテキストデータを学習し、文脈を踏まえた文章の生成や応答ができるAIモデルです。

 「ChatGPT」や「Claude」などに使われており、 多くの生成AIアプリの中核となる「エンジン」 にあたります。(例:GPT-4o、Claude 3.5 Sonnetなど)

パラメータ数

 AIモデルの内部にある「調整つまみ(変数)」の数や規模を表す指標で、大きいほど高性能になりやすい傾向はありますが、その分コストも上がります。

コンテキストウィンドウ

 AIが一度に扱える(参照できる)情報量の上限を指します。これが大きいほど、長い資料や大量の会話履歴をまとめて扱えます。

トークン(Token)

 AIが文章を処理するときの最小単位で、文字数とは一致しません。多くのサービスでは主にトークン数が料金・処理量の基準となります。

事前学習・ファインチューニング・蒸留

 AIの振る舞いを形成・調整する学習工程を表す用語です。

 「事前学習」は基礎となる知識を広く学ぶ工程、「ファインチューニング」は目的に合わせて追加学習する工程です。「蒸留」は、大きなモデル(教師)の出力の振る舞いを小さなモデル(生徒)に学習させ、性能を保ちつつ軽量化する手法を指します。

② 生成(Generation)~AIが「何を、どう出力するのか」~

マルチモーダル生成

 テキストだけでなく、画像・音声・動画など複数の種類の情報を同時に処理し、生成できるAIの能力です。

ハルシネーション(Hallucination)

 AIが誤った内容を、もっともらしく答えてしまう現象です。

推論(Inference)

 AIモデルが、実際に質問に答えたり文章を生成したりする処理のことです。モデルを学習させる段階と、学習済みモデルを動かす段階に分けると、推論は後者にあたります。

③ 文脈(Context)~AIに「何を前提として渡すか」~

プロンプトエンジニアリング(Prompt Engineering)

 AIに出す指示文(プロンプト)を工夫して、より望ましい回答を引き出す技術で、 AIを上手に使いこなすための“頼み方のスキル” です。

RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)

 AIが自分の知識だけで答えるのではなく、社内文書や最新情報を検索してから回答する仕組みです。

ベクトル検索

 文を数値(ベクトル)に変換し、そのベクトル同士の距離や類似度にもとづいて、意味的に近い情報を検索する技術です。

④ AI拡張(AI Extension)~AIを「組み合わせて働かせる」フェーズへ~

Function Calling / Tool Calling

 AIが外部のAPIやシステムを呼び出して、モデル単体でできない処理を行う仕組みです。

MCP(Model Context Protocol)

 AIと外部ツールやデータを、共通ルールでつなぐための仕組みです。

 「どうつなぐか」「どう呼び出すか」を決める規約であり、Function Calling / Tool Callingの呼び出しにも利用されます。

オーケストレーション(Orchestration)

 複数のAIや処理の実行順序や関係性を定義し、全体の処理を制御する仕組みです。

AIエージェント(AI Agent)

 目標を与えると、自分で考え、必要なツールを使いながらタスクを完了まで実行するAIです。

⑤ AI活用(AI Utilization)~技術をどうビジネス価値に変えるか~

チャットボット / Conversational UI

 会話形式でシステムを操作できるUIです。

Copilot(伴走型)vs Agent(代行型)

 「Copilot」は人が主役でAIが補助する形、「Agent」はAIが主役で人が監督する形です。「一緒に進めるAI」か「仕事を任せるAI」かの違いです。

⑥ 開発(Development)~AIアプリを誰でも作れる時代へ~

ローコード / ノーコードAIプラットフォーム

プログラミングをほとんどせずに、AIアプリやエージェントを作れるツール群です。

バイブコーディング(Vibe Coding)

 細かいコードを書く代わりに、自然言語で「やりたいこと」を伝えながら開発するスタイルです。

⑦ セーフティ(Safety)~リスクを制御し、安全に使う~

プロンプトインジェクション / 脱獄(Jailbreak)

 AIの制限をすり抜けさせ、不適切な回答を引き出そうとする攻撃手法です。

ガードレール(Guardrails)

 AIの入力や出力を監視し、危険・不適切な挙動を防ぐ仕組みです。

⑧ 品質改善(Quality Improvement)~作りっぱなしにせず、育て続ける~

評価(Evaluation / Evals)

 AIの回答を測定する仕組みです。

LLMOps(Large Language Model Operations)

 LLMを使ったシステムを、安定して運用・改善し続けるための考え方や仕組みです。

まとめ ~AIの技術用語は体系的に理解してみよう~

 本記事では、AI領域で飛び交う主要な技術用語について、8つの領域にマッピングして解説しました。

 AIの技術用語は、バラバラに覚えるのではなく、この「8つの領域」のどこにあるかを意識することで、理解しやすくなります。

  • 「RAG」や「プロンプト」の話が出たら、[③ 文脈(Context)]の工夫の話だな
  • 「AIエージェント」や「MCP」の話なら、AIを組み合わせて動かす[④ AI拡張(AI Extension)]の話だな
  • 「ハルシネーション」や「ガードレール」は、[② 生成(Generation)]のリスクと[⑦ セーフティ(Safety)]対策の話だな

 このように分類できるだけで、理解度は格段に上がります。

 技術用語の理解だけでなく、体系的な理解のためにぜひ本記事を役立ててください。

著者プロフィール:岩城 祐作

 SESにてWebサービスやアプリケーション開発を中心に、フロントエンドからインフラまで幅広い開発に従事。生成AIを活用した業務支援やプロダクト開発に携わり、AIエンジニアとしての実装・設計を担当。2025年5月より株式会社AlgomaticにJoin。

・株式会社Algomatic:https://algomatic.jp/

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