柳谷智宣のAI ウォッチ!
コピペ地獄にさようなら! AIが外部データと直接つながる「MCP」超入門
AIに手足を与える共通規格「MCP」を理解する[前編]
2026年2月17日 09:00
生成AIを活用する際は、プロンプトと一緒に渡す情報が重要な役割を果たす。前提条件や文脈を提示することで、本当に必要な出力が得られるからだ。そのため、毎日[Ctrl]+[C]と[Ctrl]+[V]を繰り返す、コピペ祭りが起きてしまっている。
Webブラウザーでニュースを見つけ、それをコピーしてチャット欄に貼り付ける。Excelを開き、データをコピーして貼り付ける。社内Wikiを検索し、規約をコピーして貼り付ける。その上で「これについて要約して」「このデータを分析して」と指示する。こんな作業にうんざりしている人も多いのではないだろうか。
これだけデジタル化が進んでいるのに、人間がデータの運び屋を担うのはナンセンスだ。AIが私のPCの中身や、社内のデータベースを直接見てくれればいいのに。そんな不満を解消する技術として登場したのが「MCP(Model Context Protocol)」だ。今回は「MCP」について紹介した上で、実際にClaudeで活用する方法を解説する。
AIと外部システムをつなぐ共通規格として定着しつつあるMCPの歴史
MCPを一言で説明するなら「AIと外部システムをつなぐための共通規格」となる。
よく「AIのためのUSB-C」と例えられるが、的を射ている。かつて、PC周辺機器をつなぐ端子はバラバラだったが、それがUSBに統一され、何でも挿せば動くようになった。MCPはそれと同じことをAIの世界で実現したものだ。
このプロトコルは、Claudeを開発するAnthropicによって2024年11月にオープンソースとして公開された。当初は「また新しい規格か」と冷ややかな目もあったのだが、その後の展開は早かった。翌2025年の3月にはOpenAIがMCPの採用を発表し、4月にはGoogle DeepMindとAWS、5月にはMicrosoftが続いた。
主要なプレイヤーがこぞって採用したことで、MCPは事実上の業界標準となった。
それまでは、AIモデルごとに独自のプラグインやコネクターを開発する必要があり、開発者は疲弊していた。しかし、MCPの登場により、一度「MCPサーバー」を作れば、それをClaudeでもChatGPTでもGeminiでも使い回しやすくなる。いまでは、GitHub上に数え切れないほどのMCPサーバーが公開されており、誰でも利用できるようになっている。
MCPをAIに接続するだけで、AIはそこにあるデータを読み書きできるようになる。もはや、AIのためにデータを整形したり、コピペして運ぶ必要はなくなったのだ。
エンジニアだけでなくライターや企画職にも恩恵をもたらすMCPの活用法
MCPには「プロトコル」なんて名前がついているから、技術者向けかと思いきや、実際の恩恵は非エンジニアの方が大きいかもしれない。
もちろん、エンジニアにとってのMCPは超絶便利なツールとして活用されている。GitHubでは多数のコミュニティ製MCPサーバーが公開されており、例えばローカルで動いているDockerコンテナの調子が悪いとき、ターミナルで複雑なコマンドを叩かなくても、AIに「いまのコンテナのログを見て、エラーの原因を探って」と言えば、AIが勝手にログを読みに行き、診断してくれる。
自作MCPサーバーの開発も盛んだ。PythonやTypeScriptで書けるため、社内の独自APIやレガシーな管理システムをAIにつなぐことも簡単。日報システムにMCP経由でつなぎ、「先月の私の日報から、主な実績を抜き出して」と指示できるようにした会社もある。
筆者のようなライターでもMCPは活用できる。例えば「リサーチ」。ブラウザー検索用のMCPとWebページを読み取るMCPを組み合わせて、「このテーマについて最新ニュースを10件調べ、内容を要約し、関連する企業の株価もチェックして」という指示を出すと、AIは自分で検索し、ページを開き、情報を集めて作業を進めてくれる。ユーザーはその間、何もする必要はない。
また、Slackなどのチャットツールと連携させれば、「昨日、プロジェクトAについてどんな議論があったかまとめて」と聞くだけで、流れてしまったログから重要な決定事項を拾い上げてくれる。これは、記憶力や検索能力を外部拡張するような体験となるだろう。
GmailやNotionのMCPサーバーを実際に連携させてみた
では、実際にClaudeにおいてMCPの使い方を紹介する。
まずは、ClaudeのWeb版で、Claudeに用意されている「コネクタ」を使ってみよう。このMCPサーバーはクラウドで動作する。
Claudeの[+]メニューから[コネクタ]-[コネクタを管理]をクリック。標準で用意されているGmailやGoogle カレンダーを連携させよう。もちろん、これもMCPサーバーだ。ここでは、Gmailアカウントを紐づけてみた。
ちなみに、Anthropicによると、AIは必要に応じてメールのデータにアクセスするが、そのデータを第三者に共有することはもちろんない。Claudeとの会話を削除すれば、その会話で使ったメールのデータも削除されるとのこと。
設定が完了したら、Claudeにプロンプトを入力する。
ここでは、海外の取引先とのやりとりを抽出してもらい、ボールがこちらにないこと(返信する必要がないこと)を確認してみた。もし同じことをGmailで行うなら、会社名や個人名で検索し、メールをさかのぼって確認する必要がある。複数メンバーがいるなら、それぞれ見逃しのないように検索しなければならない。
しかし、MCPで連携しているClaudeには「1月に、○○社のメンバーとやり取りしたメールの内容を抽出してリストアップして。ボールがこちらにある場合は指示して」と入力するだけ。特に何の操作も不要で、自分で考えてGmailにアクセスし、関連情報をすべて抽出してくれた。こちらからの返信も確認し、ボールがどちら側にあるか(返信する必要があるのかどうか)をジャッジしてくれた。この会社に海外送金したメールも抽出し、リストアップしてくれたのには驚いた。
「あの取引先とのやりとりはどうなってたっけ?」というのはよくあること。海外の取引先と英語でやり取りしていればなおさらだ。メールを自分でコピペしなくて済むどころか、Gmailさえ開かず、Claude上でやり取りの内容を確認できてしまうのは手間が省ける。これが、MCPを使う大きなメリットなのだ。
ローカル動作するMCPサーバーを利用してみる
次は、ローカルで動作するMCPサーバーを利用してみよう。
こちらはWeb版では利用できないので、Claude Desktopアプリを公式サイトからインストールする必要がある。続いて、MCPサーバーを動かすために、Node.jsも必要なので、公式サイトからインストールしよう。
今回は「Filesystem」というコネクタを使ってみよう。自分のPC内にある特定のフォルダーをAIに見せる機能だ。ここでは、喫茶店の売り上げを記録した月報を保存しておいたPC内のフォルダーを指定し、「フォルダー内の昨年の売り上げを分析して、経営コンサルタントとしてアドバイスしてください」と頼んでみた。
AIはフォルダー内のファイルを次々と読み込んでいく。フォルダーにアクセスしたり、コマンドを実行しようとしたりするたびに、ユーザーに許可を求めてくるので、[一度だけ許可]や[常に許可]をクリックして作業を進めてもらおう。これは、想定外の操作を行い、システムに被害を及ぼすのを防ぐための機能だ。
しばらく待つと、見事なレポートを書き上げてくれた。年間を通しての来客者数や売上、単価を算出してグラフ化した上、詳細な分析と経営提言まで行ってくれた。
ファイルをアップロードする必要がなく、自然言語で指示できるのはラク。もしローカルファイルではなく、Google ドライブで管理しているなら、「Google ドライブ」コネクタを利用すればよい。
喫茶店「レベリング」の2025年度分析における最優先課題は、12月と8月で売上に2.8倍もの差が生じている季節変動の解消です。特に年間平均を大きく下回る1月・2月・7月・8月の閑散期対策として、季節限定メニューの開発や地域イベントとの連動が不可欠です。
また、雨天時の売上35%減による年間約140万円の機会損失を食い止める「雨の日施策」や、14%に留まっているデザート注文率を向上させるセット提案により、客単価を939円から1,050円へ引き上げる必要があります。さらに、週末依存の構造を脱却するために平日のモーニングやランチ、テイクアウトを強化し、ポイント制によるリピーター育成を図るべきです。
これらの施策を段階的に実行することで、2026年度の目標である年間売上1,650万円(前年比11%増)の達成は十分に可能です。まずは即効性の高い閑散期および雨天対策から着手し、経営の安定化を目指すことが推奨されます。
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カスタムコネクタを追加してみる
次は、カスタムコネクタを追加してみよう。MCPサーバーのURLを自分で設定するのだ。
とはいえ、いろいろなWebサービスがMCPサーバーを公開しているので難しいものではない。ただし、カスタムコネクタの追加画面にも表示されるが、信頼できる開発者のコネクタのみを利用すること。ここでは、オールインワンワークスペース「Notion」と連携させてみよう。
コネクタの設定画面から[カスタムコネクタを追加]をクリックし、名前に「Notion」、リモートMCPサーバーURLに「https://mcp.notion.com/mcp」と入力して[追加]をクリック。コネクタが追加されるので[連携させる]を選択する。
これで準備完了。「Notionを見て、今年の打ち合わせを抽出して」と入力してみる。筆者のNotionには大量のノートがあり、その中に「打ち合わせ」というノートがある。しかし、あえて何も指定せずに指示してみた。
Notionを見て、今年の打ち合わせを抽出して
最初は、昨年のミーティングファイルを探したりしていたが、しばらくすると「打ち合わせ」ページを発見。その中から今年の打ち合わせ情報を抽出してくれた。また、想定外だったが、今年のアクションプランが書かれた昨年末の打ち合わせも2026年予定として抽出しているのが賢い。
次は、Notionに書き込んでみる。例えば、Claudeでアイデア出しをしていて、いい感じのネタが集まったら、「Notionに追加しておいて」と指示するのだ。この場合は、どのノートに書くのか、追記なのか新規ページなのかを指示した方がよい。
いいね。このアイデア、Notionの「企画アイデア」ノートに新規ページで追加しておいて
追記する際は作業の許可を求められる。こちらも[一度だけ許可]もしくは[常に許可]をクリックする。これだけで、情報をNotionに登録できる。ClaudeからNotionを開かずに、Notionの情報を取得したり、Notionに書き込んだりできるのは、とても便利だ。
孤独だったチャットボットが仕事のできるパートナーに変わる
MCPを使ってみると、これまでのチャットボットがいかに孤独だったかがわかる。賢い相談相手ではあるが、実際の仕事環境に手出しができなかったからだ。MCPは、その壁に穴を開け、AIに手足を与えたようなものだ。
一度この「つながったAI」を体験すると、チャット欄にテキストをコピペするのが面倒になり、もう手放せなくなるはず。今後は自分のデータや自分のツール、自分の文脈をAIと共有し、共に働くスタイルが当たり前になるだろう。面倒な設定は最初だけなので、ぜひMCPに触ってみることをおすすめする。
著者プロフィール:柳谷 智宣
IT・ビジネス関連のライター。キャリアは26年目で、デジタルガジェットからWebサービス、コンシューマー製品からエンタープライズ製品まで幅広く手掛ける。近年はAI、SaaS、DX領域に注力している。日々、大量の原稿を執筆しており、生成AIがないと仕事をさばけない状態になっている。
・著者Webサイト:https://prof.yanagiya.biz/















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