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録音した音声のボリュームが小さすぎる! ~「Audacity」で適切な音量に調整するワザ
2017年7月25日 06:10
音楽配信や、近年のCDからリッピングして入手した音源ならば遭遇する機会は少ないと思いますが、レコードやカセットテープといったアナログメディアをソースとして自分でデジタル化した音源を再生してみると、妙に音量が小さくて聴きづらい、パンチに欠けるといった印象を受けることがあります。この場合はプレイヤー側のボリュームを調整すればとりあえず音量を上げることはできますが、他の音源に切り替わった瞬間に大音量になったりするため、実用上はあまりスマートとはいえません。
「Audacity」で小さすぎる音量をスマートに調整
自分でデジタル化した音源の音量が小さい場合、基本的にその原因は、録音時の録音レベル設定が小さすぎたことです。すなわち、録音レベルを上げれば、できあがった音源の音量も大きくなります。
このように書くと解決方法は非常に簡単に読めますが、録音レベル設定を上げていき、入力された音声信号が0dBを超えてしまうと、その箇所でクリッピングが発生して音が歪みます。ソースとなるレコードやカセットテープの曲では歪んでいないので、明らかに失敗ですね。
「Audacity」のような波形編集ソフトを使えばさまざまな編集作業が行えますが、発生したクリッピングを修正することはできないので、その音源に関しては録り直すしかありません。録音レベルはギリギリまで高く設定したいけど、長い時間をかけてデジタル化した音源の一箇所でも0dBを超えてしまうと失敗でやり直しとなるため、攻めて録音レベルを上げると失敗のリスクも飛躍的に高くなります。
この失敗を防ぐには、いったんデジタル化が完了した音源ファイルをベースとして、波形編集ソフトの編集機能で音量を調整しましょう。「Audacity」では手動で音量を調整することもできますが、それは面倒ですし、また失敗してクリッピングが発生するリスクもあります。一般的にノーマライズと呼ばれている編集作業を行えば、音源ファイルの内容を自動的に解析し、最適に音量を上げることができます。
最初に、録音しておいた音源ファイルを「Audacity」に読み込ませておきます。次に[エフェクト]メニューから[正規化]を選択します。開いたダイアログに“Normalize”と表示されていることでもわかりますが、「Audacity」の日本語表示ではノーマライズを正規化と表現しています。
基本的に手動で設定を変更する必要はないので[OK]をクリックすると、トラックとして読み込まれている音源を自動的に解析し、クリッピングが発生しない範囲(=[最大振幅を正規化します]の設定値)で音量が上がります。正規化を実行する前のトラックと見比べてみると、波形の上下幅が大きくなっていることがわかるでしょう。もちろん再生してみても、音量が大きくなっていることが実感できるはずです。
なおここでは音源ファイルひとつだけを例に操作方法を紹介しましたが、複数の音源ファイルを各トラックとして読み込ませた場合は、キーボードの[Ctrl]+[A]キーですべて選択した状態で[エフェクト]メニューから[正規化]を実行すれば、全トラックを解析してノーマライズが実行されます。各音源ファイルの最大音量を揃えたいという場合も、これで簡単に行えます。最後に[複数ファイルの書き出し]を実行すれば、トラックごとに独立したWAVファイルとして保存できます。
藤本 健
リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。またブログ型ニュースサイトDTMステーションを運営するほか、All AboutではDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。Twitterは@kenfujimoto。