#モリトーク

ニュースでは伝わらない作者の思い

(12/07/17)

「瀬戸フォント」「瀬戸フォント」

 当たり前のことだが、インターネット上で公開されているソフトやフォントには、それを公開した作者が必ず存在する。「Google Chrome」のGoogle社、「Sleipnir」のフェンリル社など、有名なソフト・企業であればソフトと作者の名前がすぐに一致するだろう。では、個人制作のソフトやフォントを利用するときに、はたしてどれくらいのユーザーが作者のことを意識しているだろうか。

 窓の杜で掲載した先週の記事だけでも、作者にフォーカスを当ててみると、いつもとは違った側面が見えてくる。まずは、本コラムの第16話。そのなかで「瀬戸フォント」の埋め込みに関して、電子書籍も含まれるのかどうかは不明だとお伝えした。するとその後、それを知った同フォントの作者が、電子書籍への埋め込みも可能であると、その答えをWebサイト上で明らかにしてくれた。また、フォントそのものの再配布を禁止しなければならなかった理由も綴られており、無断しかも作者を偽った上で同作者の作品を再配布する人がいたそうだ。

「アタッシェケース」「アタッシェケース」

「ウイルスバスター」が「すっきり!! デフラグ」をブロック「ウイルスバスター」が「すっきり!! デフラグ」をブロック

 次に、オープンソース化された「アタッシェケース」の記事を見てみよう。同ソフトの作者はオープンソース化の経緯を自身のブログ上で語っており、大病で入院したことをきっかけに、同ソフトを途絶えさせてはいけないと決意したとのこと。また、無料化した「Lost Memory」もその経緯や思い出が作者のブログ上で説明されているので、詳しくは両作者のブログを読んでいただきたい。

 そして忘れてはならないのが、「いじくるつくーる」と「すっきり!! デフラグ」の更新停止を報じた記事である。同記事では、原因となった「ウイルスバスター」の誤検知問題を中心に報じたため、「ウイルスバスター」の開発元であるトレンドマイクロ社の怠慢として受け取った読者も多いだろう。しかし「いじくるつくーる」と「すっきり!! デフラグ」のWebサイトでは、作者の取り組みや心情が事細かく記されており、トレンドマイクロ社を敵対視せず、共に問題へ取り組もうとする作者の活動が伝わってくる。

 これらに共通することは、『多くの人に使ってもらいたい』『ユーザーの要望に応えたい』という作者の強い思いだ。大手企業が無料でソフトを公開するようになった昨今、無料であることの“ありがたみ”が徐々に薄れてきており、作者への感謝の気持ちも忘れがちになってしまう。作者の思いが強ければ強いほど、我々も“ユーザーの義務”を果たすべきではないだろうか。

お詫びと訂正:記事初出時、「瀬戸フォント」の作者がフォントの再配布を禁止している理由について、一部正確ではない内容がございました。お詫びして訂正いたします。

(中井 浩晶)