【第29話】
オンラインソフト文化の連鎖と継続力
(12/10/16)
窓の杜の連載記事“週末ゲーム”が先週で500回を迎えた。Impress Watch全体を見ても、“週末ゲーム”はもっとも古くから続く連載のひとつであり、窓の杜だけでなくImpress Watchの歴史とも言える存在だ。開始から10カ月強の本コラムが29回であることを考えるとその偉業の大きさを感じ、手前味噌になるが、“週末ゲーム”の担当編集者およびライター陣の努力を称えたい。また視点を変えれば、500回という数字はオンラインソフト作者が質の高いゲームを提供し続けてくれた証でもあり、記事を楽しみにしてくれた読者がいた証でもある。
つまり、オンラインソフト作者がいるからこその“週末ゲーム”であり、読者がいるからこその“週末ゲーム”でもあり、プレイヤーがいるからこそオンラインソフト作者はゲームを制作するのであろう。これらの要素がひとつでも欠けたら“週末ゲーム”が500回を達成することはなかったであろうし、これこそがオンラインソフト文化の連鎖であると考える。これはゲームというジャンルに限らず、オンラインソフト全般に当てはまる話だ。もちろん、窓の杜が果たす役割は作者や読者のそれに比べたら小さいものであり、作者と読者の橋渡しをしているだけに過ぎない。
続けるといえば、良質なフォントや素材画像でお馴染みのデザイン事務所“FLOP DESIGN”を思い出す。FLOP DESIGNは2008年頃から2011年までの間、月1回以上のペースをきっちり守りがなら新作のフォントをリリースし続け、窓の杜はそれらのフォントをほぼすべて紹介した。そのほとんどの記事を筆者が担当したため、いまでもそのひとつひとつをよく覚えている。
そんな縁もあり、本コラムのタイトルロゴを制作する際にはFLOP DESIGNに依頼することになった。これもまた、オンラインソフト文化の連鎖と、その継続性が生んだ成果のひとつであり、筆者自身もそれに関われたことに感謝している。
一方、偶然にも先週、オンラインソフト文化の根幹を揺るがす問題が窓の杜で報じられた。セキュリティソフトの誤検知問題に悩まされていたINASOFTの矢吹拓也氏がついに、全公開ソフトの更新を休止すると発表したのだ。窓の杜は矢吹氏への応援の意味も込めて、この件の動向を報じてきたが、残念な結果に終わってしまった。矢吹氏は長年に渡ってオンラインソフト文化を盛り上げた作者の一人であり、その影響は小さくないはずだ。
オンラインソフト作者がソフトの更新を休止したり、ソフトの開発を終了する理由はさまざまだが、そのほとんどが自主的なものであり、今回のようにオンラインソフト文化の連鎖とは本来関係のない存在によって休止へ追い込まれた例は過去にないだろう。もしINASOFT製ソフトの更新再開があるとするなら、それを望み続ける“継続の力”が必要であり、窓の杜も報道という形で応援を継続することになるだろう。