石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

「カロリーメイト」がゲーム化? 豪華声優陣をはじめツッコミどころが多すぎる

そのうえ理不尽なほど難しい。腕の自信のあるゲーマーの挑戦を求む

「CalorieMate LIQUID FOR GAME CREATORS」のタイトル画面

「カロリーメイト」をゲーム化、とは?

 先週末、バランス栄養食「カロリーメイト」のゲームが登場したという話を聞いた。それ絶対ネタモノですよね? 明らかにツッコミ待ちの作品ですよね? ということで関西人の筆者はやらざるを得ない。

 モノはSteamで無料配信しているらしい。正式なタイトルは、「CalorieMate LIQUID FOR GAME CREATORS」だ。「カロリーメイト」の中でも、ドリンクタイプの「カロリーメイトリキッド」のゲームである。確かに固形タイプに比べて知名度が低い印象があるし、その宣伝をしたいのだろう。

 細かいことはやればわかると思い、遊び始めてみたのだが、筆者の想像を上回る濃いネタが満載で、あまりにもツッコミどころが多い。

ゲームをやれば「カロリーメイトリキッド」が欲しくなるのかどうか

突然のナレーションから始まる

 ゲームを開始すると、いきなりナレーションが入る。「ゲーム作りにも 壁は無数に現れる」……なるほど、これは激務で栄養バランスが崩れがちなゲームクリエイターを、「カロリーメイトリキッド」で応援するという趣旨のものらしい。

 などと落ち着いて聞いていられない。この落ち着いた低い声。これはほら、リキッドじゃなくて、ソリッドな感じの。

 了解だ、誰が何を言おうとリキッド。

 ゲームを始める。最初にプレイヤーならぬフレーバーセレクトだ。大塚明夫さんの声はフルーツミックス味だそうで、カフェオレ味は津田健次郎さん、ヨーグルト味は伊藤美来さんがそれぞれ声を担当している。無料ゲームの割にやたら気合の入った声優陣である。

 フレーバーには5角形のレーダーチャートがある。フレーバーによって能力の違いがあるのか……と思ったら3つとも全部満点評価で同じである。しかも内容をよく見ると、タンパク質やミネラルといった数値で、ゲーム的な性能の話は一切ない。「カロリーメイトリキッド」はどのフレーバーでも栄養バランスがバッチリだよ! と言いたいだけのようである。

カロリーメイトリキッド フルーツミックス味(CV:大塚明夫)
カロリーメイトリキッド カフェオレ味(CV:津田健次郎)
カロリーメイトリキッド ヨーグルト味(CV:伊藤美来)。以上の3フレーバーでお届けします

 というわけでゲームスタート。冷蔵庫に入った「カロリーメイトリキッド」の缶が見える。まさにこの缶がプレイヤーキャラクターであり、缶を動かして進む3Dアクションゲームとなっている。最終的に、別の部屋でゲーム開発にいそしむ開発者へ、自らを届けるのがミッションだ。

冷蔵庫から飛び出してスタート
飛ぶなり転がるなりして移動する。缶がいちいちリアル

 缶がひとりでに転がる絵面は何ともシュールだが、ゲームプレイはそうも言っていられない。缶が立った状態でもズルズルと引きずるように動けるし、ジャンプもできる。これに加えて、缶を横倒しにして転がると、移動速度が一気に向上する。ピタッと止まるのが難しいので、精密な操作が求められる時には、立てた状態に戻すのがいい。真面目に解説されても意味がわからないと思うが、やればわかる。

ジャンプで高いところに移動。この缶、やたらと喋る

 開発者が居る部屋へと向かっていくと、台所から隣の部屋に行く途中に、猫がいる。何だかこう、丸っこい三毛猫である。缶としてはその横を通っていかねばならないわけだが、この構図、猫を飼ったことがある人なら結果が想像できる。

猫。かわいい

 ニャー!(缶を叩く猫)

やっぱり叩かれた

 ですよね。転がろうがゆっくり近づこうが、どっちも猫の標的になること間違いなし。まあこっちは缶だし、猫がじゃれるくらいはいいでしょ。

 おや、画面が白くなっていく。

GAME OVER

 画面右上にハートマークがあり、この周囲のゲージがなくなると、即ゲームオーバー。猫に4発叩かれるとダメになる缶とは。実物は硬めの缶なので、猫ごときにやられるはずはないのだが。

 仕方ないので高速で転がって突っ込み、猫の頭にぶつかりながら(現実世界では猫に缶をぶつけないでください)隣の部屋へ飛び込んでいく。ちなみにもっとスマートに進めるルートもあるので探して欲しい。

猫の頭を越えてゆけ

 寝室らしい部屋にたどり着くと、ベランダには開発者の姿が。しかし様子がおかしい。彼が手にするノートPCから、ブロックのようなものが次々と飛び出してくる。

「作業中のデータは 第四の壁を破り PCから現実に拡張することがあると!」

何か出た

 そうか……まあ出てきたものは仕方ない。どうやらゲームのバグが現実世界に顕現したものらしく、物理的にバグをつぶしてやる必要がある。やるのは開発者ではなく、缶。

 何をさせられているのかよくわからないが、出てきた奴をぴょんぴょんと登って行ったりしながら、バグをいくつか潰したら、第四の壁とやらは閉じるらしい。なおバグ潰しの方法は特に解説が見当たらなかったので、色々試して上手くいく方法を探して欲しい。こういうところは本物のバグ潰しっぽい。

がんばってバグを潰す。バランス栄養食以上の働き

 続いてはベランダから隣の部屋へ。ここで開発者は座って仕事をしているので、デスク上までたどり着いて缶を持たせればミッション達成となる。テーブルの高さはかなり上の方なので、どうやって上がろうか……と考えていると、また新たなイベントが発生する。

目指すは手のひら

 今度はPCの中から、混乱しているフローチャートが顕現する。このフローチャートがアスレチックのようになっており、次から次へと移動することで、机の上までたどり着けるという仕組みらしい。

フローチャートが足場代わり
これも出てきた。なかなかかわいい

 なるほど、フローチャートって「フロー」っていうくらいだから、浮かぶイメージで。いやそうはならんやろ。

 現象に従い、粛々とフローチャートを上っていく。道中には行く手を邪魔するゲームキャラクターがおり、攻撃を仕掛けてくるものも。食らえばもちろんダメージを受けるし、フローチャートから落下してまたやり直しになる。

ドラゴンのブレスに妨害される。もう何でもあり

 本作は「カロリーメイトリキッド」の販促のための作品であろうし、声優陣が豪華だったり、映像が意外と綺麗だったりしても、まあ気合い入れて作ったんだな、くらいの話である。だからゲームを難しくする必要は全然ない。

 そのはずなのだが、フローチャートアスレチックはめちゃくちゃ難しい。これ自体は何度かやれば攻略ルートも見えてはくるのだが、落下したらまたやり直しだし、ダメージを受けすぎてゲームオーバーになったら、スタート地点の猫越えからやり直しである。せめてこの部屋に入ったところからやり直したいが、そういう親切設計はないらしい。

宣伝用ゲームとは思えない難易度の高さ

 上を向いて視点をぐるぐる動かしつつ、缶を立てたり横倒ししたりという素早いアクションを繰り返していると、まあまあ3D酔いする。「カロリーメイトリキッド」で酔いましたって字面が面白い。

 ゲームとしてはそこまで大ボリュームではないが、多数の実績要素も用意されており、やり込みでがんばれるようにもなっている。ノーダメージでゴールするなど超厳しい内容もあるので、熱中するのもほどほどに。プレイが長引いたら「カロリーメイトリキッド」で栄養補給だ。とでも言わせたいのだろう、きっと。

ヘビーな実績要素もある

 本作は2025年3月11日までの期間限定配信となっている。つまり半年ほどでストアから削除されるので、プレイしたい方はお早めに。

 最後に、筆者はカフェオレ味が好きだ。このことを他の人に話すと、「ゲテモノ好きなの?」とか「3つの中ではマシって意味?」とか言われるのだが、こってり濃縮されたようなミルクに、ほのかに漂うコーヒー風味が抜群に合う。あまり冷やさずにぬるめで飲むと、濃厚感が増すのでおすすめだ。本当に美味しいから騙されたと思って試して欲しい!

カフェオレ味は関西弁で喋る。ええやん
ヨーグルト味は語尾が「ぐる~」になる。この雑なキャラ付けもまたよい
著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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