石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

極寒サバイバルゲーム「フロストパンク2」をイージーモードで遊ぶ意味

極限状態を30年間生き抜いた人々は何を思うのか?

「フロストパンク2」のタイトル画面

忙しくても本作だけは譲れない

 本稿が掲載される頃には、幕張メッセで年に1度のゲームイベント「東京ゲームショウ2024」が開幕している。筆者も取材に追われているはずで、本稿を執筆している今は準備もあって手一杯だ。

 だが、これだけはやっておかねばならない。9月21日に発売された極寒サバイバルシミュレーションゲーム「フロストパンク2(Frostpunk 2)」だ。筆者は前作が大好きで、本連載でも前作を改めて紹介している。

 筆者は本作を全力で楽しむため、あえて前情報を入れないようにして発売を待っていた。タイミングが個人的には非常に悪いのだが、とにかく触りだけでも遊んでみようと思う。

チュートリアル代わりのプロローグをイージーモードでプレイ

 本作を開発したのは、ポーランドの11 bit studios。ゲームは起動時の言語が英語になっているが、日本語も用意されているので、言語(Language)設定を変更しよう。

 本作にはいくつかゲームモードがあるが、まず遊ぶのはストーリーモード。いくつかの物語が用意されており、それぞれに状況と目的が異なる……というのが前作であったが、本作でも同じような形式のようだ。難易度設定があるのも同様で、筆者はあえて最も簡単なレベル「市民」を選択した。これにはちょっとした意図があるので、後ほど解説する。

ゲーム開始前に難易度を選べる。筆者は基本的に最もイージーな設定にする

 最初はプロローグを選択することになり、ゲーム開始前にムービーが流れる。現れた老人は、30年前に起こった全球凍結(世界中が凍り付く状態)の中で、新たな街「ニューロンドン」を率いて、極寒の地で生存を果たした「キャプテン」だと言う。

 この設定は前作をプレイしていればわかる。「ニューロンドン」は前作の舞台となったジェネレーターを中心とした街で、「キャプテン」はプレイヤー自身である。つまり、前作の30年後が本作の舞台というわけだ。

前作の舞台となった30年前、ニューロンドンを率いたキャプテンの現在の姿

 ムービーが終わるとプロローグのゲーム開始。放浪者がホワイトアウト(大寒波)を耐えるため、大型機関車の近くにキャンプを構えて備えるという内容だ。ニューロンドンとは別の舞台らしい。何もないところからスタートという意味では、前作の最初のシナリオ(ニューロンドン誕生の物語)と似ている。

基本的に何もない雪原だが、ちらほら資源らしきものが見える

 まずは機関車の炉を動かして暖を取るため、落ちている石油を取りに行きたい。本作では石油などの資源のある場所に「採掘地区」を建設すれば、そこにある資源を集めてくれるようだ。だが一帯が氷に覆われていて、何も建設できない。

 まずは資源がある場所まで氷を砕く必要があるという。「フロストブレイク」という名前が付けられており、タイル状で区切られたフィールドの氷を壊していく。これにも建設と同様に資源と労働者、そして時間がかかる。

「フロストブレイク」で氷を割って移動可能な土地にしていく
氷を割る作業にも時間がかかるので、しばらく待つ

 氷を壊したら、資源の上で「採掘地区」を建設。石油が手に入れば機関車を動かせるようになり、機関車の周囲に「居住地区」、つまり家を建設できる。

資源のある場所に到達できたら、「採掘地区」を建設して資源を採集する
機関車の周囲は温かい。「居住地区」を用意して人を住ませる

 同様に、食料資源があるパネルまで氷を割り、「食料地区」を建設すれば食料が得られる。この調子で氷を砕いて資源まで到達し、新たな地区を建設するという流れだ。

「食料地区」を建てれば、必要な食料も手に入る

 パネル単位で氷を割って道を作り、資源のある場所に地区を建てるだけなので、前作よりも建設周りは簡略化されているように思う。

 順調に資源を集めつつ、ホワイトアウトに備えるための食料を貯めていく。設定がイージーモードだったためか、資源にはかなり余裕がある状況で、初プレイで目標量の食糧確保に成功。プロローグはクリアとなった。

氷を割って進み、周辺にある資源をどんどん回収する
目標とするだけの食料を手に入れたらプロローグはクリア

 そしてストーリーが動き出す。「世界の終わりを生き延びた……それで?」というメッセージ。そう、放浪者は生き延びたが、人々はただ生き延びるために生きているのだろうか。それも30年以上も。

クリア後、「世界の終わりを生き延びた」の文字が
続いて「……それで?」。この一言に本作のテーマを感じる

 そう思わせておいての、タイトルロゴである。そしてその背景にあるのは、30年経って著しく発展を遂げたニューロンドンの姿。そして「キャプテンは死んだ。ニューロンドンは衰退している」という文字。プロローグという名のチュートリアルが終わり、いよいよ物語が始まる。

30年後のニューロンドンをバックに、タイトルロゴが出る

前作とは描きたいものが違う

 ……というところでプレイ時間は終了。ざっと見た感じ、前作では見えなかったニューロンドンの周囲(スカウトは別にして)が広く描かれ、そこにあるさまざまな資源を集めに行くことになるようだ。「フロストブレイク」もここで必要になってくる。

ニューロンドンの外の、さらに広大な領域へと出ていく

 目的は明確で、建設や資源集め自体はそう難しくはなさそうだ。代わりに人間関係が複雑になっているようで、複数の勢力があるような説明がなされている。前作は生き延びるための街づくりという感じだったが、本作は建築周りのシステムを簡略化しつつ、もっと人間に注目してドラマ性を高めているのかなと思う。

画面下部のアイコンを見ると、どうも複数の勢力が居るようだ。人々の思いは一枚岩ではない

 極限状態を30年以上も耐え忍んできた人々が、生きる意味を問う作品……前作もそうだったが、開発元の11 bit studiosは、極限状態における人間の弱さや悪の面をストレートに描いてくる。本作ではプレイヤーはスチュワード(執政官)となるそうだが、街の維持と人々の調和を図っていくことになるのであろう。

 本シリーズは極限状態を描いているだけあって、おどろくほどあっさり人が死んでいく。自然に打ち負けることもあれば、人間同士のいさかいも起こる。鍵となる場面では人の命を天秤にかけるようなろくでもない二者択一を迫られ、たとえゲーム的には順調であっても、心を削られる場面がたびたび登場する。

 筆者は本シリーズをプレイする際、難易度を最低にしている。するとゲーム的には簡単になるのだが、「誰も死なせず、問題を全て解決して、パーフェクトクリアを目指す」ようにしている。つまり難易度を下げて、難しい課題に取り組むのだ。心を削られることのないハッピーエンドを目指して。

 辛そうなゲームなので遊びたくないという方には、筆者の遊び方をおすすめしたい。高難易度でのクリアを目指すことを否定する気は全くないが、こんな遊び方でも楽しめるゲームなのだということはお伝えしておきたい。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』 記事一覧

 PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。