石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

Steamのゲームを家族間で貸し借りできる「Steamファミリー」【12月3日追記】

セーブデータも個人別に。同時プレイだけは不可

「Steamファミリー」の解説ページ

Steamゲームを家族間で共有したい

 最近は日本のゲーム会社もPCでの展開に積極的だ。日本の国民的RPGと言われる「ドラゴンクエストIII そして伝説へ…」のHD-2DリメイクがPC版も用意されたのは特に印象的だ。もはやPCゲームはマニアのためのものではない。

 我が家では妻が「ドラゴンクエスト」シリーズの大ファンで、過去のシリーズ作品も筆者よりはるかに熱心にプレイしている。今回の「ドラクエIII」もプレイしたいに違いない。

 ただ、PCゲームはちょっと扱いが面倒だ。Steamで購入したゲームはアカウントごとに管理されるため、筆者が持っているPCゲームソフトで妻に遊んでもらうためには、筆者のSteamアカウントでログインせねばならない。しかもセーブデータは筆者のものになるので、複数のセーブデータが持てないゲームだと、既存のデータを削除することになる。

 これらの問題をあっさり解決してくれるのが、Steamで9月に実装された「Steamファミリー」だ。どんなものか説明していこう。

Introducing Steam Families

ファミリーシェアリングでセーブデータも個別に持てる

 Steamファミリーは、Steamで家族のグループを作る機能。家族それぞれが作成したSteamアカウントで、最大6名のグループを作れる。利用は無料。

 目玉機能となるのが「ファミリーシェアリング」。家族それぞれがライブラリに保有しているタイトルを、家族全員で共有できるという機能だ。これを使えば、家族のPCで自分のSteamアカウントを使ってログインする必要はなくなる。しかもセーブデータは各々のアカウントに記録される。

 先の例で言えば、筆者と妻がSteamファミリーでグループ化すれば、妻のSteamライブラリに筆者の「ドラクエIII」が加わる。妻がプレイしたデータは、妻のSteamアカウントに独立して記録され、筆者のセーブデータには何ら影響を及ぼさない。

筆者はプレイ済みの「ファイナルファンタジー」を、妻のアカウントから起動すると、セーブデータがない。セーブデータはアカウントごとに独立しているのがわかる

 共有可能なタイトルは、ファミリーシェアリングに対応しているもの。大抵のタイトルは対応しているので心配はない。なお発売前のタイトルではファミリーシェアリングの対応情報が出ていないようで、発売後に再度確認すると対応していることがほとんど。また無料プレイのタイトルも対象外となる(各々がダウンロードすればいいため)。

ライブラリのゲームが共有されるが、一部共有されないタイトルもある

 制約は、同時プレイができないこと。ファミリーの登録メンバーの誰かがプレイ中のタイトルは、他のメンバーはプレイできないようになっている。先にプレイしているメンバーがゲームを終われば、他の人も利用できるようになる。

 実際に試してみると、Steamライブラリ上で通常は[プレイ]となっているボタンが、[購入]ボタンに変わっている。もし同時にプレイしたければ、ソフトを追加購入せよ、という意味だ。

ファミリーのメンバーが誰も遊んでいないタイトルはプレイできる
他のメンバーが遊んでいるものは[購入]ボタンになっており遊べない

 例えば、オンラインプレイが可能なタイトルを2人で遊びたければ、ソフトは2つ購入する必要がある。もし3人家族でソフトを購入した人が2本いるなら、2人まではどの組み合わせでもプレイ可能になる。3人同時にプレイしたければ、もちろん3人分必要だ。

 ファミリーシェアリング機能を実際の家に例えると、共有可能なタイトルは家族全員が触れる棚に並べてある状態。遊びたい人が遊びたい時に棚からソフトを持ち出し、遊び終わったら棚に返す。複数本購入したタイトルは、その数だけ棚に並べられている。プレイデータは各々のPCに記録されている。……といった具合。

 また共有するタイトルは選べない。各々のライブラリにあり、ファミリーシェアリングに対応したタイトルは、全て共有される。『このタイトルを持っていることを家族に知られたくない』と思っても、基本的には止められない。唯一ある方法はペアレンタルコントロールで、これは次週詳しく解説していく。

[12月3日追記]

 ライブラリの共有について読者様からご指摘いただいたので追記・修正させていただく。

 ライブラリで共有するタイトルは選べず、全て共有されると説明していたが、一部のタイトルを除外する方法があった。今年3月に追加された「Steam非公開ゲーム」を使用する。

 「Steam非公開ゲーム」は、Steamのフレンドなど他のユーザーから、自分がそのゲームを所有していることを隠せる機能。プロフィールのゲームリストや、最近プレイしたゲームの一覧、フレンドへの実績の通知や[このゲームを所有しているフレンド]への表示が消える。ただしSteamマッチメイキングを使用するマルチプレイヤーゲームには参加でき、その間は招待したフレンドにゲームのステータスが表示される。

 この設定を設定したタイトルは、「Steamファミリー」のライブラリ共有からも除外される、という仕組みだ。ライブラリの共有を除外するための機能ではなく、そのタイトルを持っているという情報を他のユーザーから遮断するという、より影響が大きい手段となる。使用の際には「Steam非公開ゲーム」のヘルプを参照した上で判断していただきたい。

 具体的な使用方法は、各タイトルの設定から[管理]-[非公開に設定]と選択する。確認表示が出るので、内容を確認した上で[非公開に設定]を選べば設定完了。設定アイコンの上に、赤い目に射線が入ったアイコンが出れば、非公開中になっている。

 なお筆者の環境で実際に試してみたところ、一度ライブラリで共有されたタイトルは、家族のアカウントのライブラリ一覧に残り続けていた。ただし共有自体は止まっているため、[プレイ]のボタンが[購入]に変わっていた。

 絶対に家族に見せたくないタイトルがある場合は、「Steamファミリー」に家族を招待する前に、非公開設定を済ませておく方がいいだろう。また「Steamファミリー」を設定後、家族に知られたくないタイトルを購入する際には、購入時に非公開設定するオプションがあるので、設定を忘れないように。

各タイトルの設定項目の中に非公開設定が用意されている
確認表示で[非公開に設定]を選べば設定完了
赤い目のアイコンが出れば非公開設定状態
ライブラリ共有後に家族に知られたくないタイトルを購入する場合、購入時に非公開設定にしておく

Steamファミリーの登録手順

 実際のSteamファミリーの利用手順を見ていこう。まずは参加する人全員がSteamアカウントを取得しておく。アカウントの取得も無料だ。

 次にファミリーを作成する。Steamを起動し、右上にあるアカウント名の場所をクリックし、出てきたメニューから[アカウント詳細]をクリック。アカウント情報が開くので、左にある[ファミリー機能の管理]を選択する。

右上のアカウント名から[アカウント詳細]をクリック

 Steamファミリーが作られていない、あるいは自分が参加していない場合は、セットアップの画面が出る。まずは[ファミリーを作成]をクリックする。

[ファミリー機能の管理]で[ファミリーを作成]

 ファミリー名を尋ねられるので、好きな名前を付けて作成。

ファミリー名を付ける

 これでファミリーは完成。自分1人のファミリーグループが作成される。

1人だけのファミリーグループの完成

 次は別のアカウントをファミリーへ招待する。画面下の「メンバーを招待」をクリック。すると誰を招待するか聞かれるのだが、探せるのはフレンドリストに登録したアカウントに限られている。まずは招待したい相手とフレンド登録する必要がある。

招待できるのはフレンドだけ

 フレンド登録は、ウインドウ上部の[コミュニティ]の右隣にあるアカウント名の場所にマウスカーソルを乗せ、出てきたメニューの中から[フレンド]を選択。

[フレンド]を選択する

 次に[フレンドの追加]を選択。登録方法は、相手にフレンドコードを教える、招待用のURLを送る、フレンドのプロフィール名を検索する、といった方法がある。どれを使ってもいいので、まずは家族とフレンド登録をする。

フレンド登録はどの方法でも構わない

 フレンドに登録できたら、再び[ファミリー機能の管理]に戻り、[メンバーを招待]をクリック。フレンドリストの中から家族のアカウントを選んで招待する。大人か子供かを聞かれるので、今回は大人を選択。

大人か子供かを選ぶ
招待の確認が求められる
招待保留中と書かれたメンバーがリストアップされる

 招待できたら、今度は招待された側のSteamアカウントを確認。同じように[ファミリー機能の管理]を開くと、ファミリーへの招待を承諾するかどうかの画面が表示される。問題なければ[承諾]を選ぶ。

招待が来ていたら承諾する

 これでファミリーには2人が登録された状態になる。ライブラリを確認すれば、ソフトが共有された状態になっているのが確認できるはずだ。さらにファミリーのメンバーを増やしたいなら、同じように繰り返していけばいい。

ファミリーに参加できた

 注意点としては、ファミリー登録は一度してしまうと、その後1年間は他のファミリーに参加できなくなる。ゲームを多数保有しているフレンドをファミリーに招待し、ゲームを共有させるという悪用も可能ではあるので、気軽に承諾しないようにしたい。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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