石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』
「ドラクエIII」を36年ぶりに遊ぶ筆者がHD-2Dリメイク版で驚いたこと
4文字のキャラ名を考えているアナタ。それ、もう古い常識ですよ
2024年11月21日 10:24
ファミコン版以来のプレイで何を感じるのか?
スクウェア・エニックスのRPG「ドラゴンクエストIII そして伝説へ…」が、Steamで11月15日に発売された。家庭用ゲーム機では1日早い14日に発売されており、SNSでの反応を歯がゆく眺めていたPCゲーマーも多いと思う。
本作は筆者にとって思い入れの強い作品だ。1作目の「ドラゴンクエスト」の発売時は小学3年生で、レベル上げに飽きて挫折。2作目の「ドラゴンクエストII 悪霊の神々」は、終盤のロンダルキアの洞窟で落とし穴に3回はまった時点で投了。3作目となる本作で、生まれて初めてRPGのエンディングにたどり着き、ゲームで感動するということを知った。
その後、シリーズ作品をプレイすることはあっても、本作のリメイク作品はプレイしていない。リメイク作品の発売時にファミリーコンピュータ版で十分遊んだという気持ちもあるし、筆者のライフイベントとタイミングが合わなかったのもある。
そんな筆者が約36年ぶりに本作をプレイすると、いろいろな驚きがあった。筆者と同じようにファミコン版以来遊んでいないという方が、改めて本作に興味を持っていただければと願いつつ書いていきたい。
ファミコン版の記憶が確かかどうかも怪しいが
オープニングがある
ファミコン版は容量不足からオープニングを入れなかったという話は有名だ。よってリメイク版にオープニングが追加されることは当然のことだが、驚くべきは音楽。楽曲は東京都交響楽団が演奏するオーケストラで、指揮は本作の作曲者である故すぎやまこういち氏が務めている。
ついに発表となりました❗️#すぎやまこういち先生の指揮による東京都交響楽団の演奏とともにお楽しみください。https://t.co/VcOj5Y2hAt#都響#DQhttps://t.co/g6vE3rn17z
— 東京都交響楽団 Tokyo Metropolitan Symphony Orchestra (@TMSOnews)June 21, 2024
すぎやまこういち氏指揮、東京都交響楽団演奏による本作の楽曲は、CDでも発売されている。本作ではほかに、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団とNHK交響楽団が演奏するものもある。指揮はいずれもすぎやまこういち氏だ。
名前は8文字まで入れられる
「4文字じゃないの?」とはさすがに思わなかったが、「8文字も使っていいの?」という気持ちになる。小学生がプレイしたら、フルネームの勇者が誕生するのだろうか。なお筆者はしっかり4文字以内に収めてしまった。
また勇者のキャラクター作成において性格診断があるのだが(これもファミコン版にはなかった)、まことの名(本名)を入力するよう言われる。ゲーム内では使用されないので本名を入れてもいいのだが、「この情報が漏洩しないだろうか?」と考えてしまうのもまた時世のこと。
商人にMPがある
ファミコン版では勇者・戦士・僧侶・魔法使いという定番編成だったので、今回は違う遊び方をしたかった。本作の新職業であるまもの使いに加え、筆者は未体験の盗賊。そしてファミコン版では使っていなかった商人を入れる。まもの使いは回復もできると聞いたので、とりあえずやってみる。
ステータスを見ると、なんと全員MPを持っている。知らない新職業はともかく、商人までMPがあるとは思わなかった。商人は呪文ではなく特技を覚えて、特技を使うのにMPを使う。
最初は何も特技がないのでMPの使い道はないが、レベル5になると「石つぶて」を覚えた。敵全体に20近いダメージを与えるという、序盤ではかなり強力な攻撃だ。「商人めっちゃ強いじゃん」と声が出てしまった。
王様がセーブしてくれない
これはむしろ忘れている方が多いかもしれない。ファミコン版ではゲームをセーブしてくれるのは各国の王様だった。本作ではその後のシリーズ作品と同様、教会に変わっている。おかげでセーブできる場所が増えた。
壷やタルなどの中身がないものは調べられない
シリーズの伝統となっている、壷やタルなどの中身探し。調べても『しかしなにもみつからなかった』と言われるものだったが、本作では中に何もない壷やタルは調べること自体ができなくなった。一度中身を取った場所は、もう調べられなくなる。
逆に言うと、何かがある場所は調べられる。近くに寄っただけでAボタンを押すガイドが出るので存在がわかるという親切さ。ただし宝箱だけは開けた後でも何度でも調べられる。
外に出たらアイテムが落ちている
フィールドに出ると、地面にキラキラしたものが落ちていることがある。近づいてみると、いくつかのアイテムが手に入る。あちこちにあるので、フィールドをすみずみまで歩いて確認しておきたい。
またダンジョンなどでも、行き止まりになる場所に壷やタルが置いてあり、アイテムが入っていることが多い。重要なアイテムが入っていることはほとんどないようだが、無駄足にならない分だけストレスが減る。むしろ全ての場所をチェックしたくなるので、手間が増えるとも言える……。
ちなみに本作では、とあるNPCが『街の外で見つけた武器や防具は、事故や魔物に襲われたせいで帰れなかった人のものかもしれないから、感謝して拾え』と語る。なぜそこに武器が落ちているのか、というゲームの都合につじつまを合わせた設定ではあるが、何とも重みのあるセリフだ。
いざないの洞窟で壊せる壁が北向き
HD-2Dになっても、マップのデザインはそう大きくは変わっていない。フィールドも、街の店などの配置も、ファミコン版の知識がそのまま使える。
しかし物語序盤に出てくるいざないの洞窟では、まほうのたまで壊す壁の向きが変わっている。ファミコン版では南向きだったのに、本作では北向きだ。これはおそらく、HD-2D版では壁を爆破する演出を見やすくするため、北向きに変えたのだと思われる。ただ映像を綺麗にするだけでなく、必要とあらばマップも変える、その判断が嬉しい。
……ということで、筆者はようやく2つ目の国であるロマリアに到達したところで、まだまだ物語の序盤だ。それでもこれだけ発見があるので、先に進めばもっといろいろな驚きがあるのだろう。筆者のようにファミコン版でしか遊んでいないという方は、ぜひ36年ぶりの本作を驚きとともにお楽しみいただければと思う。全体として、とても親切で遊びやすくなっている。
それにしても、36年とは。心をどこに置いていいのやら。
1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。
・著者Webサイト:https://ougi.net/
PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。