石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

「ドラゴンクエストX オフライン」に賛否両論? とにかく体験版を試してみよう

PCでもSteam版がプレイ可能。もちろん大型拡張DLC「眠れる勇者と導きの盟友」も

 PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。

「ドラゴンクエストX オフライン」はなぜ賛否両論?

「ドラゴンクエストX オフライン」の「Steam」のページ

 2012年8月に発売された「ドラゴンクエストX」は、「ドラゴンクエスト」シリーズ初のオンライン専用ゲームで、10年以上が経過した現在もサービスを続けている。

 オンラインゲームとしては立派に結果を出している反面、「ドラゴンクエスト」シリーズのファンの中には「オンライン専用なので手を出せない」という方も多いはず。他のオンラインゲームと掛け持ちが難しかったり、そもそもオンラインプレイが環境的に難しかったりと、考えられる理由はいくつもある。

 筆者も十分なプレイ時間や環境がどうしても作れず、こればっかりは仕方ないと諦めていたところ、昨年、「ドラゴンクエストX」の世界をオフラインの1人プレイで遊べるようアレンジされた「ドラゴンクエストX オフライン」が発売された。オンラインゲームだからと敬遠していた方も、これで晴れて“唯一触れなかったシリーズ作品”を楽しめるようになった。

 ところが「Steam」で本作が発売されるも、レビュー評価は「賛否両論」となっている。「ドラゴンクエスト」シリーズのナンバリングタイトルでそんなことがあるのかと思い、レビュー内容をざっと見てみた。

 最も多かったのはオンライン版をプレイしている方からの低評価。オンライン版をシュリンクしたゲームにならざるを得ないので、ここは仕方ないかなと思う。それ以外には「映像が貧弱」、「お使いばかり」、「UIやシステムが不満」という評価も。これも10年前にWiiで発売されたオンラインゲームをベースに作るとそうなるだろうと想像できる。

 そしてそれらの不満点を踏まえての「高い」という声が大きい。本作は定価で買えば8,580円で、単体のゲームとしてはかなり高価な部類だ。また拡張ダウンロードコンテンツ「ドラゴンクエストX 眠れる勇者と導きの盟友 オフライン」を同梱したデラックス版は12,980円にもなる。高額を払ってのゲーム体験が期待外れ、という不満なのだろう。

 とはいえ賛否両論の評価も、執筆時点では好評が62%で、不評をつけた人が多数派というわけではない。好評のレビューでは、「オフラインで遊べる」ことを評価する声は当然として、「ちゃんとドラクエになっている」、「やはりコマンドバトルは良い」という声も多く、シリーズの伝統的なプレイ感覚が得られることは評価されている。

 結局のところは個人個人の合う合わないの話になってきそうだ。本作には無料の体験版があるので、とりあえずそちらを試してみよう。

体験版でも結構遊べるので試してみよう

無料で遊べる体験版がある

 体験版で遊べるのは本作の序盤にあたる部分ではあるが、プレイ時間としては筆者の場合で約2時間程度とそこそこな分量がある。またオンライン版をプレイしたことがない人が、本作のビジュアルを見て気になるであろう、「結局プレイヤーは人間なのか、それ以外の5つの種族なのか?」ということの答えも体験版の中で明かされる。

キャラクターメイキングで好みの外見にできる
5種族から選んでのキャラクターメイキングもちゃんとある。こちらは最も小柄な種族「プクリポ」

 フィールドは3Dの俯瞰視点で、フィールド上にはモンスターが見える。プレイヤーは主人公を操作して、モンスターに接触すると戦闘になる。フィールドは走って移動でき、敵をうまく避けて進むことも可能だ。

フィールドにいる敵が見える。戦うも避けるも自由

 戦闘はシリーズの伝統であるターン制のコマンドバトルで進行し、通常攻撃や呪文、特技などを駆使して戦う。筆者が体験した範囲では最大3人でパーティを編成でき、自分以外の2人はAIの指示で戦闘に加わっていた。

伝統のコマンドバトル。体験版でも3人パーティを組める
呪文のエフェクトもちゃんとあるし、キャラクターボイスもある

 この辺りは「ドラゴンクエストIX 星空の守り人」以降をプレイしている人にとってはおなじみの仕組みだ。難易度も低めでレベルが上がるのも早く、プレイ感はかなり緩めだが、自分のペースで遊べて快適だ。

 筆者が今回プレイした際には、映像は解像度を4K(3,840×2,160ドット)にし、画質も最高に設定している。元々のグラフィックスがそこまで描き込んだものではないので、前時代的な印象はぬぐえないが、ほんわかした世界観を滑らかなグラフィックスで堪能できるのはプレイ感として良質だ。

高解像度のゲーム映像はそれなりに美しい
イベントシーンではムービーが挿入されることも

 ストーリー的にはちょっと強引で子供っぽいところもあるが、それがシリーズ伝統のノリであるのも確か。システム面、ストーリー面、そしてグラフィックスの点でも、「なるほど確かにドラクエだ」と評価したいし、体験版の続きをやりたくなる内容だ。

 なお体験版のデータは製品版に引き継ぎが可能。だったらちょっと強い敵と戦ってレベルをどんどん上げてみるか……と先へ進もうとすると、体験版では進入不可と言われ止められる。レベルも15までで頭打ち。終盤で錬金窯を受け取れるも、使わせてもらえない。いよいよ製品版が欲しくなる。

体験版ではある程度進むと進入禁止エリアが出てくる

今までどおりの「ドラクエ」を遊びたいならアリでは?

 改めてフラットな目線で本作を評価すると、システムはやはり前時代的。特に次作にあたる「ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて」をプレイした後だと、映像やバトルシステムは劣化していると感じるだろう。前作に当たるのだから当然とも言えるが、発売順では本作の方が後なのだから仕方ない。

 それでも、これまでオンライン版で遊びにくかった作品を、これまでどおりのテイストで遊ばせてくれるというのは大きな価値がある。確かに製品版の価格を見るとちょっと悩ましいのは事実なのだが、まずは体験版を遊んでみて判断すればいい。

体験版でも本作の展開や面白さは十分に味わえる

 また本作には拡張ダウンロードコンテンツがあるのもポイント。オンライン版ではストーリーを含むゲーム内容が現在までにバージョン6まで拡張されており、本作もそれに沿って拡張されるわけだ。

 本作の最初の拡張版となる「ドラゴンクエストX 眠れる勇者と導きの盟友 オフライン」は5月26日に発売されたばかり。ただその後の拡張版は、本稿執筆時点ではまだ発表されていない。本作のプレイヤーは当然、いずれオンライン版に追いつくだろうと期待しているはずなので、新たな拡張版の発表が待たれる。

 レビューではUIやシステム周りの不満点を挙げる声も多く見られるが、拡張版の提供と同時にそれらを改善してくれるのではないか、という期待もあるのだろう。本作はオフライン版とはいえ、アップデートでゲーム内容を拡張・修正はできるので、オンラインとのいいとこ取りが進むことも期待したい。

 筆者としては本稿が大いに読まれて、編集部から「製品版の記事もやってくださいよ!」と言われる未来に期待したい。なにとぞよろしくお願いいたします。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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