石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

「ドラゴンクエストIII」のSteam版の発売理由をスクウェア・エニックスに聞いてみた

言語情報の「フル音声」の意味や海外展開の考え方なども

「ドラゴンクエストIII そして伝説へ…」のバトルシーン

「ドラゴンクエストIII」について気になる点を質問

 先日、本連載において、「ドラゴンクエストIII そして伝説へ…」がSteamでも発売されるという記事を掲載した。

 本作の発売日について、Steamの商品ページでは11月14日になっていることが多いが、時間を変えて見ると11月15日と表示される時もある。また公式通販サイト「スクウェア・エニックス e-STORE」では、Steam版の発売日が11月15日となっている。これはSteamでは世界同時発売となり、時差が影響するためだと思われる。

 Steam版が日本時間のいつ発売されるかが現時点では不明だが、極東地域の日本では、Steamを含むオンライン販売のゲームは、発売が深夜や翌日になることもある。そのため「スクウェア・エニックス e-STORE」では、Steamキー(ゲームを利用するためのシリアルコード)の送信タイミングも含めて、余裕をもって翌15日としていると思われる。

 パッケージ版がある家庭用ゲーム機とは違う、ダウンロード版のみのPCゲームならではの事情だ。せいぜい1日の違いなので、ちょっとした誤差として受け入れよう。

 余談が長くなったが、ここからが本題。今回、上の記事を掲載後に、本作についての質問をスクウェア・エニックスにお送りした。その回答が届いたのでQ&Aの形で掲載する。質問から回答、掲載まで少し時間がかかったため、その間に追加発表済みの情報もあるのだが、そのままの形で掲載させていただく。

スクウェア・エニックスとのQ&A

――これまで「ドラゴンクエスト」シリーズのリメイク作品は、家庭用ゲーム機では出ていたものの、PC向けには出ていません。今回、Steamで展開することを決めた理由を教えていただけますか?

回答:直近のタイトルですと「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オフライン」(ドラゴンクエストX オンラインの「オフライン版」ではありますが、リメイクに近い作品性かと思います)でもSteam版が発売されていますので、PC向けに出ていなかったわけではございません。

 また、より多くの方に「ドラゴンクエストIII」をプレイしていただきたい、というシンプルな理由からSteamを含むマルチプラットフォームでの発売を決定しました。

――Steamで出すということは海外展開を強化するという意味もあると思います。Steamの言語情報によると10言語対応とありますが、海外からのニーズが高まっているとお考えでしょうか?

回答:対応言語数は海外からのニーズの高まりと直接的な関係はなく、「ドラゴンクエストIII」における対応言語数は、近年の「ドラゴンクエスト」シリーズタイトルの対応言語数と大きな差はありません。

 また、日本ほどではありませんが、「ドラゴンクエスト」シリーズには海外にも熱心なファンが多く、多くの成功を収めています。特に「ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて」は、欧米でも非常に高い評価をいただき、ファン層の拡大に繋がっています。

――Steamの言語情報で、日本語フル音声にチェックが入っています。何かしらのボイスが入るのか、違う意味なのか、教えていただけますか?

回答:Steamのストアページの表記によるもので、「フル音声」とは「音声が入っているかどうか」の意味であると認識しています。(実際、フルボイスではないゲームでもこの欄にチェックが入っているタイトルが多数あるかと思います)

 7月16日時点では、一部のイベントシーンにボイスが入っていること、および主人公のバトルボイスが公開されています。

――日本国内でも、「ドラゴンクエスト」シリーズをPCで遊びたい、遊べるとありがたいと思っているPCゲームユーザーは少なくないと思います。特にファミコン版を当時遊んだ年齢層は、ゲーム機はもう持っていないが、PCならあるという方もいらっしゃいます。彼らに向けて何かコメントをいただけないでしょうか。

回答:世界中のたくさんの方々にHD-2Dで生まれ変わった「ドラゴンクエストIII」を体験していただきたく、マルチプラットフォームで発売することといたしました。原作ファンの方はもちろん、初心者の方にもお楽しみいただけるようさまざまなところに手を加えております。PC版の発売を楽しみにお待ちください。

ドット絵と3DCGの映像効果を組み合わせたビジュアルになっている

「I&II」にも続くPC版に期待

 以上、Q&Aの形でお伝えした。Steamへの提供理由については『より多くの方にをプレイしていただきたい』ということなので、これまでPCでは遊べなかった過去のシリーズ作品にも今後は期待が持てそうだ(まだ「III」も発売していない段階で気が早いのは承知の上で)。

 ちなみにナンバリングタイトル以外では、ここ1年の間に「ドラゴンクエストビルダーズ」や「ドラゴンクエスト トレジャーズ」が、家庭用ゲーム機に遅れてSteamでも発売されている。この辺りからも本シリーズのSteamへの展開強化が始まったように感じ、今回の質問につながっている。

 「フル音声」の情報については、残念ながら全ての会話に音声が入るという意味ではなさそうだが、今後も発売までに追加情報がありそうなので期待しておきたい。バトル時のボイスが入るだけでも、雰囲気はかなり違うものになりそうだ。

 筆者が今回のコメントで面白いなと思ったのは「初心者の方にもお楽しみいただけるよう」という部分。今回のリメイクは「III」が最初で、続いて2025年に「I&II」が発売予定となっている。3作をプレイ済みの方ならこの意味はわかると思うが、とはいえ素直にこの順番で遊ぶとシステム的な逆行があり、「初心者の方にも」遊びやすいとは言いがたい。

 この発売順については堀井雄二氏もX(旧称:Twitter)で触れており、ここにも何かしらの仕掛けがあるのでは……と深読みしてしまう。何が起こるのかは続く3部作が出揃うまでわからないが、まずは11月15日の「III」をSteamのウィッシュリストに入れて発売を待とう。PCでも他のプラットフォームと一緒に待てるということ自体が幸せなことだ。

【動画のナレーションは主人公のバトルボイスを担当する檜山修之さん】
HD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』発売日発表トレーラー
著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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 PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。