石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

夏はCPUが熱い! うるさい! 「ThrottleStop」で消費電力を抑えて快適&節電

「ThrottleStop」のメインウィンドウ

暑い夏を快適に乗り切るためのCPUチューニング

 ゲーミングPCは消費電力が大きく、発せられる熱も多い。冬は暖房器具などと笑っていられるが、夏はより電気代がかさむ。また室温が上がった分、PCの冷却力を上げる必要があるため、冷却ファンの回転数が上がってうるさくなるという問題もある。

 最近のゲーミングPCは静かになったとは思うが、ビデオを楽しみたい時や、寝ている間もPCを動かしておきたい場合など、なるべく騒音を小さくしておきたい場面もある。

 対処方法はシンプルで、PCの発熱を減らせばよく、そのためには消費電力を減らせばいい。方法はいくつかあるが、今回は「ThrottleStop」というソフトを使用し、CPUの消費電力を下げる方法を紹介する。

 なお、ゲーミングPCではCPUよりもGPUの方が消費電力が多いこともある。こちらは「MSI Afterburner」というソフトで消費電力を調整できる。以前執筆した記事があるので参考にしていただきたい。

「ThrottleStop」でCPUの最大消費電力を設定

 「ThrottleStop」は、CPUのさまざまな設定を変更できるソフトで、無料で利用できる。英語版で項目が多く、専門用語だらけだが、今回触る場所はごく一部なので安心して欲しい。

 今回のテスト環境は、筆者所有のデスクトップPC。CPUはCore i5-13600Kを使用しており、CPUクーラーはDeepcool製「AK400」。ファンコントロールはGIGABYTE製マザーボード「Z690 UD」で静音プロファイルに設定している。ビデオカードはGeForce RTX 4080搭載のZOTAC製ビデオカード「ZOTAC GAMING GeForce RTX 4080 16GB AMP Extreme AIRO」で、Power Limitを65%に制限している(既に夏仕様)。

 ソフトを起動したら、ウィンドウの右下の方にあるボタンの中から[TPL]をクリック。すると[Turbo Power Limits]というウィンドウが表示される。

[Turbo Power Limits]ウィンドウ

 その中段辺りにある[Power Limit Controls]の項目が今回の設定場所。[Disable Controls]のチェックを外し、[Long Power PL1]と[Long Power PL2]、およびその横の[Clamp]にチェックが付いた状態を確認する。

 次はその横にある数字(筆者環境であれば4095)を書き換える。これは簡単に言うと、CPUが使用できる最大消費電力を指定するもので、筆者の環境では4,095Wということになる。これは実質的に無制限とした設定だ。

「Long Power PL1」と「Long Power PL2」の値を小さくするほど、CPUの消費電力は下がる。これは最大45Wに設定した状態

 今回はこの数字をどんどん下げていきつつ、ベンチマークツール「3DMark」のプログラム「Time Spy」を実行し、消費電力とパフォーマンスの変化を見てみた。結果は以下のとおり。()内の数字は、4,095Wの設定を100%とした場合の比較。

【消費電力設定と「Time Spy」スコア】
消費電力設定ScoreCPU scoreGraphics score
4,095W23,382(100%)16,069(100%)25,425(100%)
125W23,183(98.5%)15,324(95.6%)25,490(100.3%)
95W22,859(97.8%)14,568(90.7%)25,412(99.9%)
65W22,499(96.2%)13,560(84.4%)25,462(100.1%)
45W21,794(93.1%)12,119(75.5%)25,368(99.8%)
25W19,676(84.1%)9,254(57.6%)24,558(96.6%)
15W16,187(69.1%)6,871(42.8%)21,280(83.7%)

 4,095Wとした初期設定で、PCの各種データを取得できるフリーソフト「HWMonitor」で消費電力を確認したところ、最大で約153Wとなった。それ以外は概ね設定値が実際の最大消費電力となっていた。

 「Time Spy」のスコアの中でまず見たいのは「CPU score」。95Wで性能低下は約10%、45Wでも約25%に留まっている。15Wに設定すると60%近く落ち込むが、PCの動作に問題はなく、ベンチマークテストも正常に動作する。

 「Graphics score」は主にGPUの処理能力を見るものなので、CPUの消費電力を下げてもあまり影響しない。15Wまで下げると影響が見えるが、これはプログラム実行のための基本的な処理能力が不足したためだろう。

 そしてそれらをトータルした「Score」は、45Wでも90%以上となっている。この割合は実行するプログラムによって変化するが、CPU負荷がそれほど大きくなく、3Dグラフィックスの描画処理が重要なゲームにおいては、それほどパフォーマンスに影響しないことがわかる。

「HWMonitor」でCPUのデータを確認した。4,095Wの設定では最大約153Wを消費。CPU温度も最高90度に達している
設定を95Wに下げると、CPUの最高温度は77度になった。発熱量も減っているのがわかる

夏のPCの消費電力を下げれば、エアコンの消費電力も減らせる

 今回のテストでわかることは、CPUの消費電力を下げても、処理能力はそれに比例するほどは下がらない。少ない消費電力で効率よく処理できる、つまり電力効率が良くなるということだ。

 CPUの消費電力を減らしても、それほど処理能力は落ちず、発熱を下げて騒音を減らせる……というのが今回の狙いである。

 また消費電力を減らせること自体も魅力的だ。今夏は梅雨明け前に気温が40度を記録する地域もあり、既に猛暑が始まっている。電力需給のひっ迫も予想されるし、燃料費の高騰も依然として続いている。CPUの消費電力を減らせば、発熱も減り、部屋を冷やすためのエアコンの消費電力もそのぶん減らせて一石二鳥だ。今夏はゲーミングPCの省電力化を意識しておくべき時だと言える。

 具体的に何Wに設定すればいいかについては、使用するCPUや利用環境にもよるので一概には言えない。Intel製CPUのメインストリームとなる製品では、伝統的に65Wが設定されてきたこともあり、これを基準値とするのは1つの考え方ではある。

 さらに気になる情報もある。筆者が使用しているCore i5-13600Kを含む第13/14世代CoreプロセッサのK/KSシリーズに、動作が不安定になる不具合が見つかり、Intelは対応に追われている。消費電力設定が大きすぎるのが一因と見られているが、まだはっきりしたことはわかっていない。

 Intelのサポートフォーラムに掲載された情報によると、7月19日までにBIOSアップデートの一部としてパッチを提供するという。筆者が使用しているマザーボードのBIOSはまだ更新されていないので、フォーラムに掲載されているBaselineプロファイルに準じてPL1/PL2を設定しておくのが次善の策となる。本ソフトを使用すれば簡単に調整できる。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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