石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』
「FF11」種族変更が有料サービスで提供 ~追加課金の意義はどこにある?
2025年5月23日 16:17
23年経った今、新たな有料サービスを提供
スクウェア・エニックスのMMORPG「ファイナルファンタジーXI(FF11)」が、5月16日で23周年を迎えたそうだ。国産MMORPGの代表格として誕生し、今もサービスを続けていることに敬意を表したい。
本作では先日、「キャラクター種族変更サービス」という面白い施策がスタートした。作成済みのキャラクターの種族および外見、性別を変更できるというもので、1回1,650円の有料のサービスとなっている。
筆者は本作のβテスト時から数年間プレイしたのだが、MMORPGで一度作成したキャラクターの種族を変えるというのは結構インパクトがある内容だ。それと同時に、『そこまで有料にするの?』と思った方もいらっしゃるかもしれない。
やり直しがきかないキャラメイクをやり直せる
「FF11」では、5つの種族と性別を選択でき(一部種族は性別が選べない)、さらに顔や髪の色、身長の違いが選べる。初プレイ時にキャラクターを作成したら、以後は変えられないものだった。これを後から自由に変更できるサービスが、今回、有料で提供されるわけだ。
本作の種族は外見が極端に異なる。最も小さい「タルタル」と、最も大きい「ガルカ」では、大人と子供以上に違いがある。しかし、種族によって選べるジョブが異なるということはない。
ただし、種族を変えると見た目だけでなく能力も変わる。「タルタル」は力が弱く魔法が得意。「ガルカ」はその反対だ。「タルタル」の格闘ジョブも、「ガルカ」の魔法使いも存在はできるが、種族とジョブのミスマッチは起こる。本作のことが何もわからない時に選んだ種族が、メインのジョブとステータス的にマッチしないから変えたいという希望は当然あるだろう。
また、実際にゲームを始めてから他の種族の外見がいいなと思うようになったという方も多そう。特に23年もサービスが続いている作品だけに、プレイヤーの趣味嗜好が変化することも十分考えられる。
そういう意味でも、今求められているサービスであったことは確かだろう。ちなみに、同社の後発作品となるMMORPG「ファイナルファンタジーXIV」では、同様のサービスとなる「幻想薬」が既に実装済みで、こちらも有料サービスとして提供されている(無料でも少量は入手可能)。なかなか人気が高いサービスなのだそうだ。
有料サービスの追加はお客様のため?
このような有料サービスが発表されると、『何でもかんでも有料サービスで提供するな』という批判的な声が上がることもある。最近は多くのオンラインゲームが基本プレイ無料で提供されている中、本作は月額課金型のサービスを続けている。その枠外で費用を請求されるのは、いわば二重課金のように思えて、抵抗感があることは理解できる。
筆者はこういう話を聞くと、カプコンが以前サービスを提供していた「モンスターハンター フロンティア オンライン」というゲームで、運営担当の方にインタビューした際におっしゃっていた言葉を思い出す。
『有料サービスを追加することは、お客様の反感を買うかもしれない。しかし、ゲームの収益を上げ、サービスを長く続けることは、お客様に対して我々が負う責任だと思う』
かなり前のことなので細部の記憶はおぼろげなのだが、プレイヤーの負担を減らすことが、結果としてオンラインゲームの寿命を縮めるのならば、それはむしろプレイヤーに対する不義理であるという考え方だ。オンラインゲームはサービスが止まれば、全てのデータが電子の藻屑となる。サービスが続くことこそが最も重要だと言われたら、なるほどその通りと言わざるを得ない。
そういう意味では、「FF11」は23年間にわたってサービスが続いていることは本当に素晴らしいことだ。今回の施策も、新たな有料サービスを開発するだけの体力がまだある証拠とも言えるし、まだまだ現役として続いていくサービスなのだと信じられる。
今回のサービスは、あくまで補助的なものであり、全員が必要なものではない。別に変えなくてもいいし、欲しくなった時の選択肢が用意されたに過ぎない。ミクロな視点だと、『好きなあの子が種族どころか性別まで変わっちゃった!』ということもあるだろうが……そういえば本作には結婚システムもあったが、今の時代ならきっと許容してくれるだろう。
『思い入れのあるキャラクターを変えちゃうなんて!』というのは、個人の勝手なので他人がとやかく言うことではない。と基本的には思うのだが、MMORPGは他のプレイヤーとの関係性が密接なので、個人のことと割り切るのは難しいかもしれない。そんなところも含めて、23年経った今でも新たな話題を提供できるというだけでも、このサービスには価値があると思う。
なお本作では5月26日17時まで、「ウェルカムバックキャンペーン」が開催中。プレイオンラインIDをスクウェア・エニックスアカウントへ移行済みであることが条件ではあるが、今週末はフリープレイ状態なので、ぜひお試しいただきたい。
1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。
・著者Webサイト:https://ougi.net/
PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。