石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』
「ドラクエの日」に発売のスライムだらけのゲームパッド、実は機能もすごかった
2025年5月29日 16:41
スライムもりもりPCゲームパッド
ゲームの周辺機器メーカーである株式会社ホリ(HORI)から、「ドラゴンクエスト ホリパッド for Windows PC スティックストレートタイプ」が5月27日に発売された。価格は5,980円。
ゲームパッドのあちこちに、「ドラゴンクエスト」シリーズに登場するモンスター、スライムの絵柄があしらわれた製品。合わせて発売されるシリーズタイトルはなく、なぜこの日に発売なのかと思ったら、5月27日は「ドラゴンクエストの日」なのだそう。今から39年前の1986年5月27日に初代「ドラゴンクエスト」が発売された日である。
キャラクターとコラボした商品は数あれど、PC用ゲームパッドでは滅多に見かけない。それがスライムとなればやはり気になるし、長年ゲームパッドを作り続けてきたHORIの製品ならば下手なものは出さないだろうという安心感もある。
こちらを早速購入してみた。どんな製品か見てみよう。
こんなところにもスライムが
まずは製品写真から。ブルーをベースにしたボディには、前面にスライムのイラストがあちこちに描かれている。よく見ると他の種類のスライムの絵柄もうっすらと描かれていて、とても賑やかなデザインだ。
特に面白いのが左のアナログスティック。左右で色が違うのもユニークなのだが、左スティックを左上に動かすと、中からスライムの顔が出てくる。アナログスティックの形状をスライムに見立てたデザインで、隠れている感じがとてもかわいい。
このデザインが気に入ったら本機をお買い上げいただきたい。今回は以上だ……というのは冗談だが、実際のところ、本機の最重要ポイントはこのデザインである。HORIでは「ホリパッド for Windows PC スティックストレートタイプ」という製品を以前から展開しており、本機はそのデザインバリエーションモデルとなっている。機能的には全く同じものと考えていい。
ただし、スライムのデザインをあしらうことで、本体価格は1,000円上がっている。なおスライムのほかにもう1つ用意された、はぐれメタルデザインの製品だと、2,000円高くなる。メタリックプリントにより金属の質感を出しているそうで、スライムモデルとは塗装の質が違うようだ(残念ながらこちらは未購入)。身も蓋もない言い方をすれば『1,000円足してでも欲しいならどうぞ』という製品である。
見た目だけではない充実した機能と設計
こういうコントローラーはデザイン重視で質が悪そう、というイメージを持っているゲーマーは多いだろう。その点、本機は既に同社が発売済みの製品をベースにしているので安心感はある。改めて、ゲームパッドとしての評価をしていこう。
まずデザインは、アナログスティック2本が平行に並ぶ形状。いわゆるPSタイプだ。PCゲームの標準デザインであるXbox用ゲームパッドは、左アナログスティックが左上にある。
同社は「ホリパッド for Windows PC スティッククロスタイプ」も展開しており、同じボディでスティックと十字ボタンの配置を入れ替えた製品を選べる。ただしクロスタイプに今回のスライムデザイン製品はなく、普段はXbox用ゲームパッドを使用している筆者としては少々残念。
ボディは前面がサラッとした手触りで、裏面はザラザラ感のある表面加工。グリップ部分は深めの溝が掘られており、グリップ感と手触りの両面で配慮が見られる。約3mのケーブル込みで重量は約250gとかなり軽い。その代わりにバイブレーション機能は非搭載。
持った感じはスペック通りにとても軽いが、横幅は長め。アナログスティックが親指からやや遠めになるので、手が小さめの人は少し慣れが要りそうだ。本体が軽いので、人それぞれの持ち方にも対応しやすい。
ボタンは見た目に高さがあり、ストロークがかなり深そうなのだが、押してみると一般的な製品と変わらない程度。素直なストロークでブレが小さく、カチャカチャという音も抑えられている。高耐久性のボタンを採用しているそうで、全体的に質は良い。
L/Rのトリガーは、軽いクリック感があり、ストロークも短め。デジタル入力かと思うような感触だが、ちゃんとアナログ入力になっている。アナログ操作で繊細な強弱を使うゲームもプレイできるが、デジタル操作でメリハリのある操作を求めるゲームでの快適度が高そうだ。なお本機の設定でON/OFFのみのデジタル入力にも変えられる。
背面ボタンも左右1つずつ搭載。グリップの内側、中指で押しやすい位置に配置されている。ボタンの機能も変更できるが、別途ソフトウェアを必要とせず、LEDインジケーターの点滅をガイドに本体だけで設定できる。不要なら何も設定しなくて構わないし、うっかり押しても何か誤作動することはない。
同じく本体からの操作で、各ボタンの連射の設定も可能だ。これらの機能はプロファイルとして5つまで保存でき、切り替えて使える。
アナログスティックは、最近流行のホールエフェクトセンサーは採用していないようだが、高耐久性のものを採用しているという。手ごたえは滑らかで、しっかりした反発力があり、素早い操作を求められる作品でも快適に使える。
ホームボタン(いわゆるXboxボタン)は、アナログスティックの手前側に3つ並んで配置されているボタンの中央にある。Xboxの標準デザインからは外れているが、シェアボタンが存在しない以外は、機能面で困ることはない。
ほかに便利な機能として、オーディオ機能も搭載している。本機をPCに接続すると、Windowsから「HORI PAD P PC XIP」というサウンドデバイスが認識される。この状態で本体手前側にあるオーディオ端子にヘッドフォンやヘッドセットを接続すれば、ゲームの音声を聞いたり、マイクで話したりできる。マイクミュートボタンも搭載している。
ゲームパッド側にヘッドセット端子があるのは結構便利だ。PCとプレイヤーの距離が離れると、有線ヘッドセットも長いケーブルを使うか、無線の製品を選ぶことになる。本機であれば好きな有線ヘッドセットやヘッドフォンを簡単に接続できる。しかもゲームパッドが有線接続なので、遅延を気にすることもなく、ゲーマーも安心して使える。
このほか、1,000Hzの高速なポーリングレートや、DirectInputとXInputの切り替えスイッチも搭載。ゲームパッドとしてかなり多機能な製品となっている。
サードパーティ製の有線接続ゲームパッドで5,980円というと少々割高な感じもあるが、多機能さと高耐久性を考えると決して高くはない。背面ボタンや高速ポーリングレートなどのトレンド機能も備えている。コラボモデルではない元の製品であれば4,980円なのでさらに安いし、アナログスティックの配置も2パターンから選べる。
Xboxの純正ゲームパッドが先日値上げしてしまったことを思うと、とりあえず1つゲームパッドが欲しいと思った時に、なかなか良い選択肢になる。もちろんスライムが好きかどうかが最も重要な判断基準になるが、スライムコラボのコレクション品に留まらず、実用性を期待していい製品だ。
1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。
・著者Webサイト:https://ougi.net/
PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。