働く人のための「DaVinci Resolve」

第11回

初心者が仕事でビデオマニュアルを撮影する際の注意点と機材選び

 本連載では、無料で使える高機能な動画編集ツール「DaVinci Resolve」の使い方をお伝えしています。

ビデオマニュアルを撮影する際の機材選びとは

 ビデオマニュアルの制作では、企画→台本→撮影→編集と進めていきます。撮影は1人ではできず、複数人のチームで協力しながら行なうため、一番大がかりで、なおかつやり直しが難しい部分です。

 今回は撮影に関して、機材選びで失敗しないポイントや、編集が楽になるガジェットなどをご紹介していきます。

撮影機材に関して

 ビデオマニュアルの素材を撮影するものとして、動画が撮影できるカメラが必要になります。専用のカメラでなくても、昨今はスマートフォンのカメラも十分に性能が上がってきており、動画撮影にも支障なく使えるものがほとんどです。

スマートフォンでも動画撮影には十分

 ただ、ほとんどのスマートフォンのカメラにはズームレンズがなく、広角と望遠が切り替えられる程度です。ですから構図を綺麗に作ったり、画角を調整するためには、カメラを近づけたり離したりして、距離を調整する必要があります。一方で撮影する際には、大きなディスプレイで写っている状況を確認できますので、その点では普通のカメラよりも便利なところもあります。

 スマートフォン撮影の注意点としては、レンズに指が写り込んでいるのに気がつかないとか、常に水平を保つのが難しいというところがあります。水平を維持するための道具としては、スマートフォン用のジンバルを利用するのもいいでしょう。手持ち撮影でも機材が自動で水平を維持してくれるだけでなく、専用アプリを使う事で、撮影者を自動的に追いかけて撮影してくれる機能もあります。上手く使えば、1人でもかなりの撮影ができるはずです。

スマートフォン用ジンバルを使えば、自動で水平を維持してくれる

 現在多くの撮影では、デジタルカメラの動画撮影機能を使うのが一般的になっています。これはレンズ交換が簡単で、多彩な用途に対応できるというメリットがあります。ただ元々は静止画を撮影する機器なので、長時間の動画撮影を想定していないものもあります。実際に撮影する前に、連続30分以上の長時間録画に対応しているかどうかを確認してください。

動画撮影に強いデジタルカメラの例。ソニー「ZV-E1」(左)、「ZV-E10」

 家庭用ビデオカメラも、動画撮影には適しています。ズーム倍率も高く、長時間記録も可能で、バッテリーも長時間用の大型に取り替えることができるなど、今でも多くのメリットがあります。ただ、継続して開発しているメーカーも少なくなってきており、長期間のサポートは期待できないかもしれません。

今年発売のビデオカメラ、パナソニック「HC-V495M」

 写真と違って、動画では手持ちでブレなく撮影するのが難しいため、動画の撮影にはビデオ用の三脚が必要になります。写真用の三脚との違いは、縦撮りには対応しないこと、カメラを滑らかに動かす事が前提の機構があることです。価格は様々ですが、あまり小さく細いものは載せるカメラの荷重に耐えられなかったり、倒れたりします。最初の1本は、ある程度の大きさと重さのあるモデルがいいでしょう。また昨今はスマートフォンも取り付けられるアダプタも販売されています。

動画撮影に三脚は必須

 安定した映像を撮影できれば、編集で使えるカットが多くなるため、編集が楽になります。

集音機材に関して

 ビデオマニュアルの制作では、動画の中心は人のしゃべりになります。したがって人の話す声をどのように集音するかが、重要なポイントになります。一般に人の声の集音は、口元から30cm以内の場所にマイクを置く必要があります。

 一方カメラは、人の上半身を写すためには、80cmから1mぐらい離れる必要があります。つまりよほど静かな環境でない限り、カメラ内蔵マイクでは話者から離れすぎていてダメだということになります。

 したがってマイクは別に用意し、マイク音声をカメラに入力して映像と一緒に収録してしまうか、別途レコーダやスマートフォンで録音して、編集時に絵と音を合わせていく作業が必要になります。

 以前コーヒーメーカーの使い方マニュアルを作成した際には、話者の胸元に「ラベリアマイク」という小型マイクを取り付け、スマートフォンで録音しています。使用したマイクは、ゼンハイザーの「XS LAV USB-C」というモデルです。これは端子がUSB-Cになっており、スマートフォンに直接接続して、標準の録音アプリで録音できます。

スマホで録音できるラベリアマイク、ゼンハイザー「XS LAV USB-C」

 ラベリアマイクは、胸元に付ける際にはケーブルをクルッと1回転して、クリップで挟み込みます。こうすることで、うっかりケーブルが引っぱられても、マイクの根元が断線してしまうのを防ぐことができます。

ケーブルを一巻きして止めるのがコツ

 最近はこうしたしゃべりの集音用途に、ワイヤレスのマイクも数多く登場しています。トランスミッタ側のマイクを話者に取り付け、レシーバーで受信した音声をカメラのマイク端子から取り込みます。

ワイヤレスマイクの例。RODE「Wireless GO II」

 ワイヤレスのメリットは、ケーブルがないため、引っぱられて断線してしまうことがないことや、話者が自由に動き回れることが上げられます。一方デメリットとしては、マイクを付けているのを忘れてトイレに行ったりすると、その音が全部聞こえてしまうということがあります。

 インタビュー形式で話を聴く場合は、レポーター役の人がインタビューマイクを持って、1つのマイクで複数人の声を集音するという方法もあります。この場合は、レポーターマイクからカメラまでをケーブルで繋ぐことになりますが、ケーブルが引っぱられてカメラを倒したり、端子を壊したりしないよう、誰か1人ケーブルを捌く人を付けた方がいいでしょう。

インタビュー用マイクの例。RODE「Reporter」

 またマイクの根元に取り付ける小型のレコーダもあります。これを使えば事実上ワイヤレスマイクと同じ扱いになりますので、現場でケーブルを気にする必要はなくなります。

マイクの根元に直結できるレコーダ、TASCAM「DR-10X」

 いずれの方法にしても、カメラマイク以外の外部マイクを使って集音する際には、事前に本番同様のテストを行なって、問題ないかどうか確認しておく必要があります。

照明機材に関して

 多くの人が気にしていないのが、照明ではないでしょうか。撮影場所が明るければ問題ないのですが、背後に外光が入る窓があり、逆光で顔が暗くなってしまうという事が起こります。また展示会などではあえて照明を暗くしているブースもあり、そのまま撮影すると商品や顔色が悪く見えるという結果になります。

 昨今は白色LEDの普及で、LED方式の撮影用ライトが安く買えるようになっています。照明選びのポイントとしては、できるだけLEDの球数が多く、明るいものがお勧めです。また別途ライト用のスタンドや、予備バッテリー、ACアダプタも必要になるので、それも予算に入れておきましょう。

LEDライトは2灯セットで廉価に買える

 撮影用ライトは、被写体に直接強く当てると、顔がテカテカしたり、商品が光りすぎてよく見えなかったりします。壁や天井、あるいはレフ板と呼ばれる反射板に当てて、その反射光(拡散光)を使って撮影すると、綺麗に撮影できます。反射光は直接光よりもだいぶ光量が下がるので、それを考慮してなるべく明るいライトを購入しておきましょう。