働く人のための「DaVinci Resolve」

第1回

これからはビジネスにも動画が必須に! 自分で作る羽目になった人に捧ぐ「DaVinci Resolve」解説

無料でもプロ仕様の動画編集ツールを基本から使いこなす

 本連載では、無料で使える高機能な動画編集ツール「DaVinci Resolve」の使い方をお伝えしています。

「DaVinci Resolve」

 小学生の「将来の夢」の中にYouTuberがランクインし始めたのは、2016年ごろの事だったようです。同年にはメディア系専門学校に「YouTuberコース」が誕生するなど、ネットに動画を出す、ネットで動画を見るという行為は、Z世代に限らず広い世代で当たり前になっています。2020年から始まった「新しい生活様式」への転換において、一気にテレワークやリモート会議が普及したのも、元々ネット経由で動画を扱うリテラシーがあったからでしょう。

 一方で、これまで対面で業務を行ってきたさまざまな仕事が、変革を迫られました。新人教育においても、全員出社が前提ではない会社の場合、ベテランに新人をくっつけてOJTで覚えてもらうような指導も難しくなっています。かといってテキスト化されたマニュアルがあるわけでもなく、今さら苦労してテキストを作っても、読み手側に読解力がない、結果うまく伝わらないということになりかねません。

ビジネスでの動画活用が当たり前になり始めている

 業務の細かい部分は、言葉で説明するより、実際に見た方が早いというケースは沢山ありそうです。こうした「人に教える」という業務の多くに、動画が活用され始めています。多くの人が動画を作って人に説明する必要が出てきたのが、アフターコロナ下のスタンダードというわけです。これまで専門家かYouTuberに限られてきた動画の制作を、一般のビジネスマンがやらなければならなくなってきています。

 業務で動画を作って効率を上げようという取り組みの1つが、「ビデオマニュアル」ではないでしょうか。実際に経験者がやっているところを撮影するだけでマニュアル化できるわけですから、効率がいいはずです。

 ただ実際に誰かに見せる動画を作るとなると、単に撮影しただけでは済まず、編集して見やすく、わかりやすく、短くする必要があります。世の中には、動画を編集するためのソフトウェアはたくさんありますが、どうせ使い方を覚えるなら、一度わかってしまえば長く使えるソフトのほうがいいでしょう。

無償でもプロ仕様の機能を使える「DaVinci Resolve」

 この連載で取り扱う「DaVinci Resolve」というソフトには無償版と有償版があり、無償版でもかなり高度なことができるため、これで動画編集を始めてみようと思う人が多くいます。「窓の杜」からダウンロードされる数も、かなりの量に上ります。

 ただこのソフトは、元々映像製作のプロのためにつくられたものですから、機能が幅広く、初心者の方には何がどうなってるのかさっぱりわからないソフトの筆頭かと思います。「DaVinci Resolve」の解説書も数多く出版されていますが、どれも動画のプロフェッショナルを目指す人のためのもので、簡単に使いたい、自分が使う最小限のことだけで十分という人には、あまり向いていないように思います。

 そこで本連載では、業務でビデオマニュアルを作るというレベルにフォーカスし、無料で使える「DaVinci Resolve」を題材にして、映像編集の方法論や考え方、ワークフローを解説していきます。かなりゆっくりしたペースで進みますので、忙しい方でも話に置いて行かれるようなことはないと思います。早く覚えないと業務に間に合わないという方は、「仕事ですぐに使える!DaVinci Resolveによる動画編集」という書籍がオーム社から発売されていますので、そちらをご覧になるのもいいでしょう。

「DaVinci Resolve」は、こうなっている

 オーストラリアのBlackMagic Designが開発する「DaVinci Resolve」は、無償版の「DaVinci Resolve」と、有償版の「DaVinci Resolve Studio」に分かれています。どちらもWindows/macOS/Linux版があり、使用OSに合わせて選択することが可能です。執筆時点での最新バージョンは18で、おおよそ年に1回のペースでメジャーアップデートされています。

ハリウッドでも使われている「DaVinci Resolve」

無償版と有償版の違い

 有償版は「DaVinci Resolve Studio」という名前で、フル機能が使えるのに対し、無償版の「DaVinci Resolve」は一部の機能が制限されています。ただ、一部のプロしか使わないハイエンド機能が使えないというだけで、基本機能はほとんど変わりません。ここでは無料版の「DaVinci Resolve」を使用していきますので、各自インストールしておいてください。

 動画制作を正式に業務で行なう事になったら、効率を上げるため、編集用の専用コントローラーを入手されることをお勧めします。「DaVinci Resolve Speed Editor」は公式サイトで56,980円で購入できます。

編集作業を効率化させる「DaVinci Resolve Speed Editor」

「DaVinci Resolve」を構成するページ

 「DaVinci Resolve」では、編集作業にかかわるいくつかの専門的な工程を、ページ(画面)を切り替えて作業するようになっています。編集のプロセスは大まかな流れとして、複数の映像を1本につないでいく「編集」、特殊効果をつくる「合成」、映像の色を調整する「カラー処理」、音楽や効果音を付ける「音声処理」、つくった映像を特定のフォーマットに収まるように書き出す「出力」といった工程に分けられます。

 ですが、実際の作業でどのページを使うかは、ユーザーの選択に任せられています。「DaVinci Resolve」には、以下のようなページがあります。

【メディア】:素材の管理を行うページ
【カット】:カット編集を中心としたページ
【エディット】:映像編集や簡易合成、音声処理ができるページ
【Fusion】:映像合成を行うページ
【カラー】:映像の色調整を行うページ
【Fairlight】:高度な音声処理を行うページ
【デリバー】:映像の編集・合成結果をファイルに書き出すためのページ

 しかし、必ずすべてのページを使わなければならないわけではありません。簡単な合成処理なら[エディット]ページでできてしまいますし、カラー処理が不要なら[カラー]ページは使いません。それほど難易度が高くない作業なら、[エディット]ページよりも易しい[カット]ページを中心に作業を進めていくほうがいいでしょう。

 この連載では、まず[カット]ページで動画編集の基本を学習し、[カット]ページでできないところだけ[エディット]ページを使うといった方針で進めていきます。