柳谷智宣のAI ウォッチ!
最新情報が扱えてハルシネーションも回避できる検索特化生成AI「Perplexity」のつかいかた
Google先生を超える!? 検索特化型AIの実力[前編]
2024年10月23日 09:00
“生成AIは最新情報を扱うのが苦手”というのはもう昔(2年前)の話。いまは検索した結果を元に出力してくれるサービスが登場してきている。
今回紹介するのは新しい検索エンジンとも呼べる「Perplexity」。ChatGPTのようにチャットUIで指示すると、複数の検索結果から情報を収集し、プロンプトに従って自然な文章で回答してくれるのが特徴だ。
利用するには、まず「Perplexity」のWebサイトにアクセスしてアカウントを作成する。メールアドレスを登録するほかにも、GoogleやAppleのアカウントでソーシャルログインすることもできる。
次に画面中央のフォームにプロンプトを入力しよう。
まずは、シンプルに「『Impress Watch』とは?」と入力してみた。すると、インプレスやウィキペディア、辞書サイト、新聞などを検索し、その情報を元に概要、主要コンテンツ、人気サイト、実績などを箇条書きでまとめてくれた。それぞれの出力には出典へのリンクが付いているので、ファクトチェックも簡単に行える。検索した情報を元にしているのでハルシネーションを抑制できるのが大きなメリットと言える。
これまでは筆者も「Google検索」を基本に情報を収集していたが、近ごろはGoogle検索の検索順位をハックするテクニックが広がり、欲しい情報が上位に表示されないことが多くなってきた。やっと見つけたWebサイトが広告だらけで、読みにくいこともある。アフィリエイトサイトだと内容が偏っている可能性もあるので、ファクトチェックにも手間がかかるものだ。
しかし、「Perplexity」なら複数のWebサイトから情報を抽出し、まとめ、ユーザーの望む形で出力してくれるので手間がかからない。この検索体験は驚異的だ。
「Perplexity」では通常のネット検索だけでなく、論文を検索したり、方程式を解いたり、ビデオを探したりする機能も備えている。入力フォームの[フォーカス]をクリックするとメニューが開く。例えば[学術]を選択して「コーヒーと健康についての論文を複数分析し、総論を教えてください」と入力してみる。このときに[Pro]ボタンをONにしておくと、詳細な分析を行い、出力のクオリティが向上する。
5つの論文を分析し、ポジティブだけでなくネガティブな視点も入れてまとめてくれた。外国の論文もチェックした上で、コーヒーの健康に与える影響も整理してくれる。
例を挙げると「コーヒーが健康に良い」というブログ記事では通常、ポジティブな内容のみになっていることが多いが、「Perplexity」ではきちんとネガティブな視点の情報も含んでいるので信頼性が高い。もちろん、この情報を元にレポートなどを作成する際は、リンク先も見てファクトチェックする必要はある。
有料プランなら利用するAIモデルを切り替えられる
有料プランを契約している場合、最新のAIモデルを利用できる。
デフォルトのままでもクオリティが低いということは特にないのだが、どうせ上位モデルを使い放題できるなら活用させてもらおう。最新のGPT-4oやClaude 3.5 Sonnetといったモデルも利用できるので、好みに合わせて切り替えればよい。また、同じ画面から画像生成AIのモデルも切り替えられる。
最新AIモデルに対応するものの、画像生成機能はいまいち
「Perplexity」には、検索したコンテンツに関連する画像を生成する機能が用意されている。
しかし、日本語ではまともに動作せず、英語でプロンプトを入力する必要がある。「Stable Diffusion XL」や「FLUX.1」といった最新モデルを利用できるものの、設定を細かく指定できないので、いまのところ、画像生成のクオリティはあまり高くない。
読み物として楽しめる「発見」メディア
画面左側にある[発見]を開くと、「Perplexity」でキュレーションされたページが表示される。[テック&サイエンス]や[金融][スポーツ]などのカテゴリーごとに多数の記事が並んでいる。なかなか興味深い内容で、普通に読み込んでしまう。さらに、そのまま「Perplexity」で関連する質問を行えるのも面白い。
オリジナルのWebページを秒で作成・公開できる「Perplexity Pages」
「Perplexity Pages」は「Perplexity」の出力をベースに、テキストや画像を自分で編集したWebページを作成・公開する機能だ。単に出力を共有するだけでなく、自分の手を入れてブログ記事のように仕立てられる。
この機能を使う際、まずは「Perplexity」で検索し、右上の[ページに変換]をクリックする。コンテンツの編集画面が開くので、セクションごとに生成して欲しいプロンプトを入力する。
[メディアを追加]をクリックすれば、画像を挿入することもできる。手持ちの画像をアップロードできるだけでなく、ネット上の画像を使うことも可能。ただし、どこから画像を引っ張ってきているのかわからないので、公開するページであれば著作権には注意したほうがよいだろう。
複数の話題をまとめて管理するなら「コレクション」に追加する
「Perplexity」で生成したスレッドの履歴は[ライブラリ]で一覧でき、クリックすれば再表示できる。とはいえ、「Perplexity」で調べ物をしたり分析をする際、似たようなプロンプトを試行錯誤することが多い。分散する多数のスレッドを開き直すのには手間がかかってしまうだろう。
そんなときは「コレクション」機能を作って分類しておけば、特定の調べ物をしたスレッドだけをまとめて再閲覧できるようになる。ブックマークをフォルダ分けするようなイメージだ。
「Perplexity」の出力画面上部から[コレクション]をクリックし、登録したいコレクションを選択する。[新しいコレクション]をクリックすれば、新しい分類を追加できる。作成したコレクションは[ライブラリ]の画面からアクセスできるようになる。
フル機能を使うなら有料版の契約が必要、価格は月額20米ドル
「Perplexity」は基本無料で利用できるが、無料版の場合、利用できるAIモデルは「GPT-3.5」しか選べない。高度な検索を行うPro Search機能も1日5回まで。ファイルのアップロードにも回数制限がある。画像生成機能についても基本機能のみとなる。
有料版の料金体系は月払い(月額20米ドル)もしくは年払い(年額200米ドル)となっている。AIモデルはGPT-4oやClaude 3.5 Sonnetといった最新モデルを利用可能で、Pro Search機能は1日300回以上利用できる。さらに、ファイルのアップロードは無制限。画像生成も「DALL-E 3」をはじめとした高度なモデルを利用できる。また、有料版では月額5米ドルのAPIクレジットを付与されたり、専用Discordチャンネルと優先サポートが受けられるというメリットもある。
まずは無料版を利用してみて「使える」と感じたなら、早々に有料版を契約することをお勧めする。検索時間が圧倒的に短縮できるので、コストは簡単にペイすることだろう。
以上が、最新情報が扱えてハルシネーションも回避できる検索特化生成AIサービス「Perplexity」の使い方となる。後編では今回紹介した「Perplexity」をはじめ、その他の検索特化AIサービスの活用法を掘り下げて紹介する予定だ。
著者プロフィール:柳谷 智宣
IT・ビジネス関連のライター。キャリアは26年目で、デジタルガジェットからWebサービス、コンシューマー製品からエンタープライズ製品まで幅広く手掛ける。近年はAI、SaaS、DX領域に注力している。日々、大量の原稿を執筆しており、生成AIがないと仕事をさばけない状態になっている。
・著者Webサイト:https://prof.yanagiya.biz/