柳谷智宣のAI ウォッチ!

全部でも一部でもOK! センスのいいプレゼン資料を自動で作ってくれる「Gamma」のつかいかた

脱パワポ? プレゼン資料作成AIは使えるのか[前編]

 本連載「柳谷智宣のAI ウォッチ!」では、いま話題のAI(生成AI)を活用したサービスを中心に取り上げていく。基本的に、前編ではまねるだけですぐに試せる「つかいかた」を解説、後編では同種のサービスも例にビジネスシーンでの活用方法や「AIトレンド」に迫っていく予定。今回は、プレゼン資料作成サービス「Gamma(ガンマ)」を取り上げる。
プレゼン資料をAIが作ってくれるサービス「Gamma」を使ってみた

 日々、さまざまなイベントの取材を行なっていると、登壇のスライドが見やすくデザインされており、PowerPointスキルの高さに驚くことが多い。

 かくいう筆者はプレゼン資料を作るのがとても苦手だ。講演などを行なう際はどうしても作成することになるものの、なにせセンスがない。PowerPointのテンプレートなどを使っても、画像を配置したりするとカッコ悪くなる。見た目をもう少し自動的によくしてもらえないものか、と思っていたところ「Gamma(ガンマ)」を発見。プレゼン資料をAIが作ってくれるサービスだ。

Introducing Gamma: Presentations, Websites, and More, powered by AI

1分もかからずにプレゼン資料を生成

 早速チャレンジしてみよう。作成パターンは3種類。自分の頭で考えたり、ChatGPTなどの他のAIで構成や内容を作成するなら[テキストを貼り付ける]を選ぶ。既存のドキュメントやWebページを入れて作るなら[ファイルまたはURLのインポート]を選べばよい。

 ここではまず「1行のプロンプトから数秒で作成する」と謳っている[生成]をクリックする。その実力のほどを見せてもらおう。

[生成]を選択する

 プレゼンのテーマを入力して[概要を作成]をクリックする。プレゼン資料を作るなら、出力タイプは[プレゼンテーション]、言語は日本語にしておけばよい。

 必要なスライド数もここで設定できる。すぐにスライドタイトルが表示されるので確認する。下にスクロールすると細かく調整できるのだが、まずはこのまま[続ける]をクリック。テーマ一覧が表示されるので、好みのテーマを選んで[生成]をクリックすれば、1ページ目から一気に生成が始まる。テキストが埋まっていき、画像が生成されて挿入されていく。

[プレゼンテーション]を選択してテーマを入力する
スライドの構成が表示されるので[続ける]をクリック
テーマを選択して[生成]をクリックする

 8ページくらいであれば、あっという間に完成する。にゅるにゅるとページが生成されていく様は圧巻だ。たしかに、1分もかからずにプレゼン資料が生成できた。

 内容もアウトラインで確認した通りの内容になっており、本文に加え、箇条書きや表といったコンテンツまで生成されている。ほぼ全ページにイメージ画像が入っており、見やすくなっている。

一気にスライドが生成された。

 とはいえ、よく見ていくと「ページの内容を差し替えたい」「絵柄が好みではない」「PowerPointのスライドサイズになっていない」といった気になる部分もあるだろう。これらはすべて修正可能だが、生成時にある程度調整しておくと手間が省ける。

 そこで、概要が生成されたら下にスクロールして[アドバンスドモード]をクリックしてみよう。

 プロンプトエディターが開くので、生成して欲しいテキストの量やコンテンツの対象者、語調などを設定する。選択肢が表示されるので選ぶだけでもOK。ほかには生成する画像のスタイル、スライドのアスペクト比なども設定する。最終的にPowerPointスライドにするなら、「フォーマット」で「カードの高さ」を16:9にしておく。画像のスタイルは好みでOK。ここでは「Japanese Manga style」と書いておいた。

「アドバンスドモード」で生成するテキストのパラメーターを設定する
狙ったテイストのスライドが生成される

生成したコンテンツをAIと会話をしながら修正・ブラッシュアップ

 次に、生成されたスライドをたたき台としてブラッシュアップさせていこう。

 テキストは普通に修正したり追加したりできる。テキストを選択すると、文字装飾のメニューが現われ、フォントサイズを変更したり、太字にしたり、箇条書きにしたりできる。

テキストを選択すると、メニューがポップアップする

 画像も差し替えられる。生成された画像が気に入らないなら、自分でプロンプトを指定して作ってみよう。

 例えば、ブランド戦略というタイトルに表示する画像なので、「モダンなオフィス、ビジネスマン、ホワイトボードに図を書いている」と思いついたことを列挙する。そのままだとまともな画像にならないので、[プロンプトの強化]をクリックすると、クオリティの高い画像を生成できる英語のプロンプトが生成される。[生成]をクリックすれば、3枚の画像が生成されるので、お気に入りを選べばよい。

画像の編集画面にプロンプトを入力する
プロンプトが強化されたら、下にスクロールして[生成]をクリックする
候補から採用する画像を選択する

 AIと会話しながらブラッシュアップしていくこともできる。

 例えば、16:9のアスペクト比で作成を指示しているのに、コンテンツが入りきっていないことがある。画面をよく見ると、アスペクト比からはみ出る境界のところに薄くラインが引かれているので確認できる。PowerPointファイルにエクスポートすると、はみ出た部分は表示されなくなるので、ここで修正しておく方が楽だ。

16:9のところに薄いラインが引かれているのがわかる

 右側の[AI編集]アイコンをクリックしてみよう。チャットUIが開き、AIにいろいろと指示ができる。「16:9に収めて」というと、デザインを変更したりしてくれる。

 とはいえ、ボリュームオーバーの場合はあまり変わらないこともある。そんなときは画像を削除してもらおう。もちろんメニューから操作できるが、AIに頼んでもよい。

 画像を削除してもらったところ、4つの箇条書きのレイアウトが変になってしまった。そこで、見た目をよくしてもらい、ついでに重要な1項目だけ目立たせてもらう。こんなことが会話をしながらできてしまうのが凄い。

画像の削除を頼んでみる
箇条書きの見た目をよくしてもらう
1項目目のみを目立たせてもらった

好みのフォントや自社のロゴを使ったオリジナルテーマを作成

 「Gamma」で毎回テイストの異なるプレゼン資料を作るのは面白いし、手間もかからない。しかし、ビジネスで使うならある程度は統一感を出す必要がある。そんなときは、テーマをカスタマイズして、オリジナル設定を適用することができる。

 「Gamma」は、Googleフォントを利用できるが、LINEが公開している「LINE Seed JP」などをアップロードして使うこともできる。企業ロゴも登録しておくと、毎回設定する手間が省ける。

フォントやロゴ画像を登録してオリジナルテーマを作成する

 「Gamma」での作業が完成し、先方に納品するPowerPointやPDFファイルにするなら[共有]メニューからエクスポートする。その際に、使われているフォントが表示されるので、インストールしていないならリンクから入手しておこう。

[共有]-[エクスポート]をクリックして出力するファイル形式を選ぶ
PowerPointファイルを入手できた。もちろん編集可能だ

「Gamma」のプランと価格

 「Gamma」のプランは「Free」、「Plus」(月額1,200円)、「Pro」(月額2,250円)の3種類。無料で使えるフリープランがあるのは嬉しいところだ。

 フリープランでは最大10枚のスライドを生成でき、AIを利用するための400クレジットが付与される。AIに概要を考えてもらったり、会話してブラッシュアップするごとに、数十クレジットが消費されていく。ただし、フリープランだと「Made with Gamma」の透かしが入ってしまう。これだとビジネスで使いにくいので、無制限にAIを利用できる有料プランを契約する必要はある。

 そのほか「Plus」プランでは最大15枚までのスライドを作成できる。「Pro」プランになると最大30枚まで作成できるようになるが、枚数だけであれば2回作業することで何とか対応できるかもしれない。

 しかし、「Pro」プランでは最大25,000トークンの長文をAIに入力することができ、よりオリジナリティあふれるコンテンツを作成できる。画像生成AIも高品質な出力が得られるモデルを利用できるのもポイント。フォントをアップロードして利用する「カスタムフォント」機能もある。ビジネスで利用するなら「Pro」プラン一択だろう。

「Gamma」の各種プラン

 以上が「Gamma」のAI機能で手軽にプレゼン資料を作る操作方法となる。

 「Gamma」は膨大な機能を搭載しており、これでもごくごく一部のみ。スライドの内容を一から細かく作成する機能も充実しているし、Webページや文書を生成することもできる。後編では「Gamma」をはじめとしたプレゼン資料作成AIの活用法を掘り下げて紹介する予定だ。

著者プロフィール:柳谷 智宣

IT・ビジネス関連のライター。キャリアは26年目で、デジタルガジェットからWebサービス、コンシューマー製品からエンタープライズ製品まで幅広く手掛ける。近年はAI、SaaS、DX領域に注力している。日々、大量の原稿を執筆しており、生成AIがないと仕事をさばけない状態になっている。

・著者Webサイト:https://prof.yanagiya.biz/